🔴 ASHAが書いている三つのこと
① 多言語であること自体は、障害ではありません
「Being multilingual is not a communication disorder(多言語であることは、コミュニケーション障害ではない)」
② 🔴 障害の徴候は、使うすべての言語に現れます
「コミュニケーション障害の徴候は、その多言語話者が使うすべての言語に見られる。ただし、症状の現れ方は言語によって異なるのが通常である」——これが、判断のときにいちばん役に立つ一文です。
片方の言語だけでうまくいかないのなら、それは「障害の徴候」の形をしていません。逆に、
どちらの言語でも同じ困りごとがあるなら、「二つの言語があるから」では説明がつきません。
相談する理由になります。
③ 「その言語を使わないほうがいい」と言われた家族へ
ASHAは、専門職の役割の一つとして次のことを挙げています——
「特定の言語を子どもに使わないほうがよいと言われた、あるいはそう感じさせられた家族に対して、多言語であることの利点を擁護すること」——
ASHAは、一つに絞るべきだという助言に対して、はっきり反対の立場をとっています。
※ASHAは米国の職能団体であり、その記述は日本の制度や教育課程を対象としたものではありません。ここでは、ことばの発達に関する専門的な整理として紹介しています。
第二言語に触れるときに起こる、正常な現象
ASHAは、第二言語の習得の過程で起こる現象を挙げています。いずれも、障害の指標としては扱われていません。
| 現象 | ASHAの記述 |
沈黙期 (silent period) | 第二言語の習得の初期の段階で起こりうるもの |
コードスイッチング (言語を混ぜて使う) | 流暢な多言語話者の多くがコードスイッチングを行う。必ずしも言語障害を示すものではない |
言語の喪失 (language loss) | 受け継いだ言語が使われ続けないときに起こるもの |
また、ASHAは言語間の影響によって生じるパターンは、障害を示すものではないとしています。
「混ぜて話す」ことについて
二つの言語を混ぜて話すのを見ると、
どちらも身についていないのではと心配になります。
しかしASHAは、コードスイッチングを
流暢な多言語話者の多くが行うこととして記述しています。
心配なときに、何を見るか
- 両方の言語で見る——片方だけでなく。ASHAは障害の徴候はすべての言語に現れるとしています。
- それぞれの言語に、どれだけ触れているかを書き出す——誰が、どの言語で、1日にどれくらい話しかけているか。触れている量が違えば、育ち方も違います。
- いつからかを確かめる——第二言語に触れ始める前から気になっていたのか、あとからか。
- 理解の面を見る——話せていなくても、分かっているか(→ことばの理解がゆっくり)。
- 聞こえを確かめる——まず耳鼻咽喉科へ(→聞こえの検査)。
- ことばの相談として相談する——「二つの言語の相談」ではなく、ことばの発達の相談として。
専門職が使う見分け方
ASHAは
動的アセスメント(test–teach–retest)を挙げています。テストする → 教える → もう一度テストする、という方法で、
今の力と、学ぶ可能性の両方を見ます。
教えることで変わる場合は
言語の違い(difference)、変わりにくい場合は
障害(disorder)である可能性が高い、という考え方です。
また、ASHAは評価の結果の一つとして
「文化的・言語的な違いのみによるものであり、支援は不要」という判定がありうることも記述しています。
違いと障害を区別する枠組みが、評価の中に組み込まれています。
「園では話さない」場合
家では話すのに、園や学校では話さない——多言語の家庭では、これが沈黙期なのか、それとも場面緘黙なのかが分かりにくくなります。
ASHAが示している区別の手がかり
「真に場面緘黙のある多言語の子どもは、両方の言語において、複数の慣れない場面で、相当の期間にわたって、話さないという状態を示す」またASHAは、場面緘黙の有病率について
移民や言語的少数者の子どもではより高い可能性があることにも触れています。
見分けが難しい領域であるということでもあります(→
場面緘黙の理解と支え方)。
この記事で書かないこと
「二つの言語で育てるとよい/よくない」とは書きません。また、何歳からどちらの言語を、といった配分の目安も書きません。
確認できたのは、多言語であること自体はコミュニケーション障害ではないこと、障害の徴候はその人が使うすべての言語に現れること、沈黙期・コードスイッチング・言語の喪失は第二言語習得で起こりうる現象であること、ASHAが「特定の言語を使わないほうがよい」という助言に反対の立場をとっていること——ここまでです。
ご家庭の言語をどうするかは、ご家族が決めることです。
どこに相談すればいいか
| 相談先 | 何のため |
| 耳鼻咽喉科 | まず聞こえの確認 |
| 言語聴覚士(ST) | ことばの発達の相談。両方の言語での様子を伝えてください |
| 区市町村の発達相談窓口 | 無料。診断の有無にかかわらず |
| 児童発達支援 | 国のガイドラインは外国にルーツのあるこどもへの支援について「多文化共生」の視点を挙げています |
※本記事は一般的な情報提供です。診断や治療に関する判断は医師が行います。ASHAは米国の職能団体であり、記述は米国の状況にもとづくものです。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
二つの言語があるから、ことばが遅いのでしょうか?
ASHAは「多言語であることは、コミュニケーション障害ではない」と記述しています。そして障害の徴候はその人が使うすべての言語に現れるとしています。どちらの言語でも同じ困りごとがあるなら、「二つの言語があるから」では説明がつきません。
日本語だけにしたほうがいいですか?
ASHAは、専門職の役割として「特定の言語を子どもに使わないほうがよいと言われた、あるいはそう感じさせられた家族に対して、多言語であることの利点を擁護すること」を挙げています。一つに絞るべきだという助言に対して、反対の立場が示されています。
二つの言語を混ぜて話します
ASHAは「流暢な多言語話者の多くがコードスイッチングを行う」とし、必ずしも言語障害を示すものではないと記述しています。
急に話さなくなりました
ASHAは沈黙期(silent period)を、第二言語習得の初期に起こりうる現象として挙げています。ただし決めつけず、もう一方の言語でも同じことが起きていないかを見てください。
園では話しません。場面緘黙でしょうか?
ASHAは真に場面緘黙のある多言語の子どもは、両方の言語において、複数の慣れない場面で、相当の期間にわたって話さないとしています。これが沈黙期との区別の手がかりです。ご判断は専門職にご相談ください。
相談するとき、何を伝えればいいですか?
両方の言語での様子と、それぞれの言語にどれだけ触れているか(誰が、どの言語で、1日にどれくらい)です。触れている量が違えば育ち方も違うため、この情報が見立ての材料になります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。