🔴 喃語は「予測する材料」になりえます
まず、いちばん大事な報告からお伝えします。
ASHAが紹介している研究
2歳より前の喃語の遅れや違いは、のちの①表出語彙の遅れ ②限られた音のレパートリー ③より単純な音節の形の使用を予測しうる——という研究が報告されています(Fasolo et al., 2008/Oller et al., 1999/Stoel-Gammon, 1989)。
つまり喃語は、ことばが出るまでの「待ち時間の音」ではありません。すでにその時期から、見ておく意味のあるものです。
「ことばが出てから考えよう」ではなく、声の出方から見ていける——これが、この報告の実際的な意味です。
何を見ればいいのか——「音の種類」が増えているか
ASHAは、ことばの出はじめが遅かった子どもについて、初語を出したときに見られる音の面での違いを次のように挙げています(Mirak & Rescorla, 1998/Paul & Jennings, 1992/Rescorla & Ratner, 1996)。
| 見るところ | 報告されている違い | 家庭での見方 |
| 音節の形 | より単純で、成熟していない音節の構造 | 「あー」だけか、「ばば」「まま」のように子音+母音が出ているか |
| 子音の正確さ | 正しく出せている子音の割合が低い | 同じ音をいつも同じように出しているか |
| 音のレパートリー | 子音と母音の種類が少ない | 出てくる音が増えているか。「ばばば」だけか、「だだ」「まま」「ぐぐ」も出るか |
数ではなく「増えているか」
いま何種類出ているかより、
先月と比べて種類が増えているかを見ます。
紙に日付と、聞こえた音を書いておくだけで十分です。「6月:あー、うー」「8月:ばば、まま、だだ」——これだけで、増え方が見えます。
月齢ごとの表を載せない理由
「◯か月でクーイング、◯か月で喃語」という表は、よく見かけます。
しかしこの記事では載せません。ASHAが挙げているのは「2歳より前」という枠であり、段階ごとの月齢は資料によって幅があるためです。
なぜ気をつけるか
月齢の表は
安心の材料にも、不安の材料にも、どちらにも使えてしまいます。
「まだ◯か月だから大丈夫」で見送られることもあれば、「◯か月なのに出ていない」で必要以上に不安になることもあります。
それよりも
その子自身の記録が、先月から増えているかを見るほうが確かです。
気になるときに、月齢を待つ必要はありません。記録を持って相談するほうが、早くはっきりします。
この時期の評価は、声だけを見ません
ASHAは、まだことばが出ていない子どもの評価について、前言語期のふるまいに焦点を当てると説明しています。
- 遊び——とくに象徴的な遊び(積み木を電車に見立てる、ぬいぐるみに食べさせるなど)
- 身ぶり——指さす、渡す、見せる、手を引く
- そのほかの非言語のコミュニケーションとやりとり
また、身ぶりや声、ことばなどさまざまな形が出ている子については、それらをうまく使えているかどうかが評価されるとしています。
ASHAは、ことばの出はじめが遅かった子について象徴的な身ぶりの理解と使用の遅れ(Thal et al., 2013)も挙げています。
だから「声が少ない」だけで判断しません
声は少なくても、
指さしが出ている・見立て遊びをする・手を引いて連れていく——それらは
伝えようとする力が働いていることを示します。
逆に、声は出ていても
相手に向けて使われていないことがあります。見るのは、量ではなく
誰に向かって出ているかです。
身ぶりと共同注意については共同注意とは?にまとめています。
家庭でできること
- 返す——その子が出した音を、大人がそのまま返します。「ばばば」→「ばばば!」。やりとりの形をつくります。
- 少し足して返す——「ばばば」→「ばばば、ばなな?」。今出ている音に近い語を選ぶと届きやすくなります。
- 間をつくる——返したら、待ちます。次の声が出るまでの間が、やりとりの練習になります。
- 顔が見える距離で——口の形が見えると、音の手がかりが増えます。
- 書き留める——日付と、聞こえた音。増え方が見えます。相談のときにそのまま使えます。
「言わせる」必要はありません。ASHAが紹介している方法では、大人が出す回数を増やし、子どもには返答を求めないやり方が確立しています(言語聴覚士の支援では、実際に何をするのかを参照)。
先に確かめておきたいこと——聞こえ
声は、自分の声と人の声を聞きながら育ちます。ASHAも、ことばのスクリーニングに聴力の低下を除外するための聞こえの確認を含めています。
- 後ろから呼んでも気づかないことがある
- 大きな音に反応しない/逆に極端に嫌がる
- 中耳炎をくり返している
こうした様子があれば、耳鼻咽喉科にご相談ください。聞こえの確認は、ことばの相談の順番として先に来ます。
どこに相談すればいいか
言語聴覚士(ST)が、検査・評価と助言を行います。言語聴覚士法第2条は、対象を「音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者」と定めており、声の面も含まれます。
区市町村の発達相談窓口には、診断の有無にかかわらず相談できます。母子保健法第12条により1歳6か月児健診は市町村の義務ですが、健診を待つ必要はありません(→ことばが出ない・遅い気がするとき)。
※本記事は一般的な情報提供です。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。
出典
※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
喃語が少ないのですが、心配ですか?
ASHAは、2歳より前の喃語の遅れや違いが、のちの表出語彙の遅れ、限られた音のレパートリー、より単純な音節の形の使用を予測しうるという研究を紹介しています。見ておく意味はあります。ただし声の量だけで決まるものではなく、指さしや見立て遊びなどことば以外の伝える動きも合わせて評価されます。
月齢ごとの目安はありますか?
この記事では月齢の表を載せていません。ASHAが挙げているのは「2歳より前」という枠で、段階ごとの月齢は資料によって幅があるためです。その子自身の記録が、先月から増えているかを見るほうが確かです。
何を記録すればいいですか?
日付と、聞こえた音です。「6月:あー、うー」「8月:ばば、まま、だだ」——これだけで増え方が見えます。ASHAが挙げる見どころは①音節の形(子音+母音が出ているか)②子音の正確さ ③子音と母音の種類の数です。
声は出ているのに、ことばになりません
ASHAは、さまざまな形(身ぶり・声・ことば)が出ている子についてはそれらをうまく使えているかどうかを評価するとしています。量よりも誰に向かって出ているかが手がかりになります。相手に向けて出ているなら、伝えようとする力は働いています。
大人はどう返せばいいですか?
出した音をそのまま返し、少し足して返す(「ばばば」→「ばばば、ばなな?」)のが始めやすい形です。返したら待つこと。ASHAが紹介する方法では、大人が出す回数を増やし、子どもには返答を求めないやり方が確立しています。
聞こえの検査は必要ですか?
声は、自分の声と人の声を聞きながら育ちます。ASHAも、ことばのスクリーニングに聴力の低下を除外するための聞こえの確認を含めています。後ろから呼んで気づかない、中耳炎をくり返している——こうした様子があれば耳鼻咽喉科にご相談ください。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
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のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。