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📖 用語・基礎知識

前庭覚(ぜんていかく)とは?——傾きと動きを受け取る感覚

最終更新:2026年9月3日
前庭覚(ぜんていかく)は、頭の傾きと動きを受け取る感覚です。目や耳のように意識にのぼりにくいので、ふだん気づくことはほとんどありません。

この記事は、用語の説明と、どの専門職に相談する領域なのかに絞ります。「感覚統合」という理論とそれにもとづく訓練については、この記事では効果を述べません——その理由も後半でご説明します。

前庭覚とは、何を受け取っているのか

前庭覚を担うのは、内耳にある前庭器官です。耳の奥、聞こえをつかさどる蝸牛のとなりにあります。

受け取るものどんな場面か
頭の傾きうつむく、あお向く、横に傾く。重力に対して、いま頭がどこを向いているか
頭の動き回る、加速する、止まる、上下に揺れる

この情報が、姿勢を保つこと体のバランスと関わっています。乗り物で酔うのも、この感覚と目からの情報がずれることに関わるとされています。

聞こえと同じ内耳にある——これは覚えておくと役に立ちます。耳の状態が続いていた時期がある場合は、相談のときにお伝えください。

感覚の受け取り方には、幅があります

感覚をどう受け取るかは、人によって違います。

ASHA(米国言語聴覚学会)は、自閉スペクトラム症の特徴の説明の中で、感覚入力に対する過敏さ、あるいは鈍感さ(hyper- and/or hyposensitivity to sensory input)が、制限された反復的な行動・興味・活動のあらわれのひとつとして記載されると述べています。

2方向あります
過敏——入ってくる感覚が、強すぎるように受け取られる
鈍感——入ってくる感覚が、届きにくい

同じ「気になる様子」が、正反対の理由から起きることがあります。どちらなのかは、外から見た行動だけでは決められません。

※これは自閉スペクトラム症の特徴として記載されるものの説明で、感覚の受け取り方に幅があること自体は誰にでもあてはまります。診断を示すものではありません。

ことばとの関わり

前庭覚は、直接ことばを作る感覚ではありません。ただし、間接的に関わることがあります。

声を出すには息が続くことが必要で、息が続くには体幹が安定していることが関わります。座っている姿勢が崩れやすい子では、声が小さくなったり、続かなかったりすることがあります。

また、姿勢を保つことに力を使っている状態では、話を聞くことに向けられる余力が減ります

だから連携が要ります
ST・OT・PTの違いで説明したように、この3つの職種には重なる部分があります。

言語聴覚士法第43条第3項は「福祉に関する業務を行う者その他の関係者との連携を保たなければならない」と定めており、ASHAも言語聴覚士の役割に作業療法士・理学療法士への紹介を挙げています。

どの専門職の領域か——法令で見ると

姿勢やバランス、体の動かし方は、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)の領域です。理学療法士及び作業療法士法 第2条が、それぞれの範囲を定めています。

条文が定める範囲
理学療法(第2条第1項)身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること
作業療法(第2条第2項)身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせること

寝返る・座る・立つ・歩くといった土台の動きは理学療法の「基本的動作能力」、それを組み合わせて生活の中で使うこと作業療法の「応用的動作能力」に対応します。

また、PT・OTはいずれも条文の定義に「医師の指示の下に」が入っています(第2条第3項・第4項)。この点は言語聴覚士と構造が違います(→ST・OT・PTの違い)。

🔴 この記事で書かないこと

前庭覚を検索すると、「感覚統合」という理論の説明や、それにもとづく遊び・訓練の紹介が多く出てきます。

この記事では、効果を述べません
特定の訓練法の効果について、この記事では述べません。

理由は単純です——学会・職能団体・国の機関が公開している一次情報として、この点を確認できなかったためです。

のびのび発達ラボの記事は、確認できた一次情報だけを書き、確認できなかったことは書かないことにしています。

「効果がない」という意味ではありません。ここでは判断しない、という意味です。

具体的な進め方や、その子に何が向いているかは、作業療法士に直接ご相談ください。それがこの領域の専門職です。

チェックリストを載せない理由

「高いところを怖がる」「回るのが好き」といった項目を並べたチェックリストも、よく見かけます。

この記事では載せません。確認できた一次情報の中に、前庭覚に対応する行動の一覧がなかったためです。

ASHAが記載しているのは「感覚入力への過敏さ、あるいは鈍感さ」という水準までで、どの行動がどの感覚に対応するかまでは、そこには書かれていません。

代わりに、これをしてください
気になる様子を、そのまま具体的に書き留める——それがいちばん役に立ちます。

「◯月◯日、公園のブランコを10分以上こぎ続けた」「エスカレーターに乗るとき必ず手をつなぎたがる」

解釈をつけずに、見たことをそのまま。解釈は専門職の仕事です。記録は、そのための材料になります。

どこに相談すればいいか

相談先何のため
作業療法士(OT)感覚の受け取り方、姿勢、手の使い方、生活の中での動き
理学療法士(PT)座る・立つ・歩くといった基本的な動き
耳鼻咽喉科内耳・聞こえの状態。中耳炎をくり返している場合はとくに
言語聴覚士(ST)ことばと聞こえ。姿勢が声に影響していないかも含めて
区市町村の発達相談窓口どこに行けばよいか分からないとき。診断の有無にかかわらず相談できます

3職種の違いはST・OT・PTの違いにまとめています。

※本記事は一般的な情報提供です。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、小児科などにご相談ください。

出典

※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

前庭覚は、どこにある感覚ですか?
内耳の前庭器官が担います。聞こえをつかさどる蝸牛のとなりにあります。頭の傾き頭の動きを受け取り、姿勢やバランスと関わります。
感覚統合の訓練は効果がありますか?
この記事では述べていません。学会・職能団体・国の機関が公開している一次情報として確認できなかったためです。「効果がない」という意味ではなく、ここでは判断しないという意味です。具体的な進め方は作業療法士に直接ご相談ください
チェックリストはありますか?
この記事には載せていません。確認できた一次情報の中に、前庭覚に対応する行動の一覧がなかったためです。ASHAが記載しているのは「感覚入力への過敏さ、あるいは鈍感さ」という水準までです。代わりに、気になる様子を解釈をつけずに日付つきで書き留めて、専門職にお見せください。
どの専門職に相談すればいいですか?
姿勢やバランス、感覚の受け取り方は作業療法士(OT)、座る・立つ・歩くといった基本的な動きは理学療法士(PT)の領域です。理学療法士及び作業療法士法第2条が、それぞれの範囲を定めています。
ことばと関係がありますか?
直接ことばを作る感覚ではありませんが、間接的に関わることがあります。声を出すには息が続くことが必要で、そこには体幹の安定が関わります。また、姿勢を保つことに力を使っている状態では、話を聞くことに向けられる余力が減ります。
中耳炎をくり返しています。関係しますか?
前庭器官は内耳にあり、聞こえをつかさどる蝸牛のとなりです。耳の状態が続いていた時期がある場合は、相談のときにお伝えください。まず耳鼻咽喉科で耳の状態を確かめることをお勧めします。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

ことばのこと、言語聴覚士に相談してみませんか

のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。