前庭覚を担うのは、内耳にある前庭器官です。耳の奥、聞こえをつかさどる蝸牛のとなりにあります。
| 受け取るもの | どんな場面か |
|---|---|
| 頭の傾き | うつむく、あお向く、横に傾く。重力に対して、いま頭がどこを向いているか |
| 頭の動き | 回る、加速する、止まる、上下に揺れる |
この情報が、姿勢を保つことや体のバランスと関わっています。乗り物で酔うのも、この感覚と目からの情報がずれることに関わるとされています。
聞こえと同じ内耳にある——これは覚えておくと役に立ちます。耳の状態が続いていた時期がある場合は、相談のときにお伝えください。
感覚をどう受け取るかは、人によって違います。
ASHA(米国言語聴覚学会)は、自閉スペクトラム症の特徴の説明の中で、感覚入力に対する過敏さ、あるいは鈍感さ(hyper- and/or hyposensitivity to sensory input)が、制限された反復的な行動・興味・活動のあらわれのひとつとして記載されると述べています。
※これは自閉スペクトラム症の特徴として記載されるものの説明で、感覚の受け取り方に幅があること自体は誰にでもあてはまります。診断を示すものではありません。
前庭覚は、直接ことばを作る感覚ではありません。ただし、間接的に関わることがあります。
声を出すには息が続くことが必要で、息が続くには体幹が安定していることが関わります。座っている姿勢が崩れやすい子では、声が小さくなったり、続かなかったりすることがあります。
また、姿勢を保つことに力を使っている状態では、話を聞くことに向けられる余力が減ります。
姿勢やバランス、体の動かし方は、理学療法士(PT)と作業療法士(OT)の領域です。理学療法士及び作業療法士法 第2条が、それぞれの範囲を定めています。
| 条文が定める範囲 | |
|---|---|
| 理学療法(第2条第1項) | 身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること |
| 作業療法(第2条第2項) | 身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせること |
寝返る・座る・立つ・歩くといった土台の動きは理学療法の「基本的動作能力」、それを組み合わせて生活の中で使うことは作業療法の「応用的動作能力」に対応します。
また、PT・OTはいずれも条文の定義に「医師の指示の下に」が入っています(第2条第3項・第4項)。この点は言語聴覚士と構造が違います(→ST・OT・PTの違い)。
前庭覚を検索すると、「感覚統合」という理論の説明や、それにもとづく遊び・訓練の紹介が多く出てきます。
「効果がない」という意味ではありません。ここでは判断しない、という意味です。
具体的な進め方や、その子に何が向いているかは、作業療法士に直接ご相談ください。それがこの領域の専門職です。
「高いところを怖がる」「回るのが好き」といった項目を並べたチェックリストも、よく見かけます。
この記事では載せません。確認できた一次情報の中に、前庭覚に対応する行動の一覧がなかったためです。
ASHAが記載しているのは「感覚入力への過敏さ、あるいは鈍感さ」という水準までで、どの行動がどの感覚に対応するかまでは、そこには書かれていません。
| 相談先 | 何のため |
|---|---|
| 作業療法士(OT) | 感覚の受け取り方、姿勢、手の使い方、生活の中での動き |
| 理学療法士(PT) | 座る・立つ・歩くといった基本的な動き |
| 耳鼻咽喉科 | 内耳・聞こえの状態。中耳炎をくり返している場合はとくに |
| 言語聴覚士(ST) | ことばと聞こえ。姿勢が声に影響していないかも含めて |
| 区市町村の発達相談窓口 | どこに行けばよいか分からないとき。診断の有無にかかわらず相談できます |
3職種の違いはST・OT・PTの違いにまとめています。
※本記事は一般的な情報提供です。診断は医師が行います。療育は医療ではありません。お子さまの発達に医学的な心配がある場合は、小児科などにご相談ください。
※上記の出典は2026年9月3日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士が在籍しています。ことばの専門評価と個別プログラムを、児童発達支援として提供しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。