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住んでいる市区町村と事業所の市区町村が違うとき——受給者証は使えるか

最終更新:2026年9月8日
受給者証は、住んでいる市区町村から交付されます。では、通いたい事業所が、隣の市や職場の近くなど、別の市区町村にあるときはどうなるのでしょうか。

結論を先に言うと、児童福祉法は通所給付決定を保護者の居住地の市町村が行うと定めているだけで、事業所がどこにあるかを利用の条件にはしていません。ただし、実際に使えるかどうかは、事業所の受け入れや窓口の案内によって市区町村ごとに運用が分かれる場面もあります。

この記事では、法律・省令・国の事務処理要領を確かめたうえで、法律で言えることと、自治体・事業所の判断に委ねられていることを分けて整理します。

結論から——法律は「事業所の場所」を利用の条件にしていません

「隣の市に良さそうな事業所がある」「職場の近くに通わせたい」——住んでいる市区町村と、通いたい事業所がある市区町村が違う場面は、めずらしくありません。まず、児童発達支援や放課後等デイサービスの給付を定めた条文そのものを確かめます。

児童福祉法 第21条の5の3
市町村は、通所給付決定保護者が、通所給付決定の有効期間内において、都道府県知事が指定する障害児通所支援事業を行う者(指定障害児通所支援事業者)から指定通所支援を受けたときは、当該通所給付決定保護者に対し、当該指定通所支援に要した費用について、障害児通所給付費を支給する。

条文が給付の条件にしているのは、「都道府県知事の指定を受けた事業者かどうか」です。「保護者と同じ市区町村にある事業所かどうか」は、条文のどこにも出てきません。

※ここで確かめられたのは、条文の書き方です。実際に利用できるかどうかは、このあと見る事業所の受け入れや、住んでいる市区町村の窓口の案内によります。「使えます」と言い切れる話ではなく、「使えないとする規定が見当たらない」というのが、正確な言い方です。

受給者証を出すのは「住んでいる市区町村」——事業所の所在地ではありません

児童福祉法 第21条の5の5
通所給付決定は、障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする。ただし、障害児の保護者が居住地を有しないとき、又は明らかでないときは、その障害児の保護者の現在地の市町村が行うものとする。
行う主体
保護者への通所給付決定・受給者証の交付市町村(保護者の居住地)
事業所の指定都道府県知事(事業所の所在地。指定都市・中核市の場合あり)

受給者証を出す・出さないを決める主体と、事業所を指定する主体は、もともと別の行政単位です。見ている場所も、保護者の居住地事業所の所在地で違います。この2つが一致しなくても、制度としては特に不思議なことではありません。

こども家庭庁「障害児通所給付費に係る通所給付決定事務等について」(事務処理要領)
障害児通所給付(障害児通所給付費等、肢体不自由児通所医療費、障害児相談支援給付費等)の給付決定は、申請者である障害児の保護者の居住地の市町村(居住地を有しないまたは不明の場合は現在地の市町村)が行う。この支給決定を行う市町村が障害児通所給付の実施主体となり、費用の支弁を行うこととなる。

通所給付決定が決めているのは「使ってよいか」——「どの事業所か」ではありません

もう一つ、誤解しやすいところがあります。「通所給付決定」という言葉の響きから、「この事業所を使いなさい」と市区町村が決めているように思われがちですが、そうではありません。

こども家庭庁 事務処理要領
通所給付決定は、障害児の保護者から申請された種類の障害児通所支援の利用について公費(障害児通所給付費等)で助成することの要否を判断するものであり、特定の事業者からサービス提供を受けるべき旨を決定するものではない

市区町村が決めているのは、「児童発達支援」「放課後等デイサービス」といった種類ごとに、月にどれだけ公費で助成するか(支給量)」です。どの事業所を使うかは、保護者が事業所を探し、契約するという別の場面の話になります。(事業所の選び方は児童発達支援の事業所を、どう選ぶかにまとめています。)

※「都道府県をまたいでも使えるか」を正面から書いた国の通知は見当たりませんでした。ただし、条文上も都道府県境を理由に給付を制限する規定は見当たりません。

事業所の側にも「同じ市区町村の子だけ」という決まりはありません

受け入れる側の事業所には、指定を受ける際の基準(人員・設備・運営に関する基準)があります。この基準に、利用する子どもの居住地についての条件があるかどうかを確かめました。

児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第14条(提供拒否の禁止)
指定児童発達支援事業者は、正当な理由がなく、指定児童発達支援の提供を拒んではならない
同基準 第17条(受給資格の確認)
指定児童発達支援事業者は、指定児童発達支援の提供を求められた場合は、通所給付決定保護者の提示する通所受給者証によって、通所給付決定の有無、通所給付決定をされた指定通所支援の種類、通所給付決定の有効期間、支給量等を確かめるものとする。

事業所が確かめるのは、受給者証に書かれた「決定の有無」「種類」「有効期間」「支給量」です。保護者の居住地が事業所と同じ市区町村かどうかを確かめる、という条文は見当たりませんでした。

※「正当な理由」の中身は、この基準そのものには列挙されていません。定員に空きがないなど、事業所ごとの事情で利用を断られることはあり得ます。ただし、居住地の違いだけを理由に一律で断ることを認めた条文は見当たりませんでした。

「住所地特例」は、ここには出てきません——住まいが変わる支援のための仕組みだからです

似た制度に「住所地特例」があります。これが今回の場面にも関係するのかを確かめます。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第19条
支給決定は、障害者又は障害児の保護者の居住地の市町村が行うものとする。(略)特定施設入所等障害者については、その者が…特定施設への入所又は入居の前に有した居住地…の市町村が、支給決定を行うものとする。

この「住所地特例」が対象にしているのは、障害者支援施設などに入所・入居することで、住民票上の住所そのものが移ってしまう場合です。施設に住むと、住所が施設の所在地に変わってしまうため、「入所する前の住所地の市町村が、そのまま支給決定を続ける」という特例が必要になります。

一方、児童発達支援や放課後等デイサービスは、自宅から事業所に通う(通所する)だけです。事業所を利用しても、保護者や子どもの住民票上の住所は変わりません。住所が動かない以上、住所地特例のような特例を用意する必要が、そももそ生じないと考えられます。

※児童福祉法の条文(第21条の5の3〜第21条の5の9)を確かめましたが、通所給付決定について住所地特例にあたる規定は見当たりませんでした。「無いから書かない」のではなく、探したうえで「見当たらなかった」とここに書きます。

それでも、市区町村ごとに運用が分かれるところがあります

ここまでは、条文の上で言えることです。ただし、こども家庭庁の事務処理要領にも、「広域利用」や「他の市区町村の事業所を利用する場合」を正面から扱った章は見当たりませんでした。つまり、国が細かいルールを示していない部分が残っている、ということです。

千葉県白井市「障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス等)」
市内の障害児相談支援事業所は次の3か所です。市外の障害児相談支援事業所に依頼することもできます。

これは、利用計画を作る相談支援事業所について、市外の事業所でもよいと明記している例です。少なくとも1つの自治体が、公式ページで市外の利用を認めています。ただし、これは相談支援事業所についての記載であり、児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所そのものについて、同じように明記している自治体ばかりとは限りません。

※「他区市町村の事業所を使ってよいか」を、児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所について正面から書いた自治体のページは、今回見つけられませんでした。使いたい事業所が決まったら、まずその事業所と、住んでいる市区町村の窓口の両方に、直接確認することをお勧めします。

場面別に考える——隣の市、職場の近く、引っ越し予定、里帰り中

場面考え方
隣の市や、職場の近くに、良さそうな事業所がある条文上、事業所の所在地を理由に給付を制限する規定は見当たりません。まずは見学・体験を申し込み、事業所と、住んでいる市区町村の窓口の両方に確認を
引っ越しをする予定で、今の事業所を続けて使いたいこれは保護者の居住地そのものが変わるケースで、この記事とは別の手続きです。引っ越しをするとき、支援はどうなるのかをご覧ください
里帰り中など、一時的に実家近くの事業所を使いたいこれを正面から扱った国の通知は確認できませんでした。事業所の体制や、その時々の判断によるところが大きいと考えられます。事業所へ直接、受け入れ可能かをお問い合わせください

今夜〜今週、動けること

  1. 使いたい事業所に、直接電話で聞く——「住んでいるのは別の市区町村だが、利用できるか」を、まず事業所自身に確認します。
  2. 住んでいる市区町村の窓口(障害福祉の担当課)に相談する——通いたい事業所の名前を伝え、手続き上ふつうに進められるかを聞いておきます。
  3. 契約している(またはこれから契約する)相談支援事業所に伝える——障害児支援利用計画に、事業所名を反映してもらう必要があります。
  4. 手元の受給者証で、支給量と有効期間を確認しておく——「月に何回まで」「いつまで」は、すでに受給者証に書かれています。
園に伝えるかどうか
この話は、通っている園や学校に必ず伝えなければならないものではありません。ただし、送迎の時間帯などで園との調整が必要な場合は、事業所から園への連絡を頼めることが多いです。気になる点は、見学のときに事業所へ相談してよいことです。

この記事で書かないこと

この記事は「住所地と事業所の所在地が違う場合」に絞っています。次のことは、別の記事で扱っています。

※確かめられなかったこと——都道府県をまたぐ利用について明記した国の通知、里帰り中など一時的な利用の扱いについての全国共通の運用は、確認できませんでした。推測で埋めず、ここに「確認できなかった」と書きます。

出典

※上記の出典は2026年9月8日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

住んでいる市と、事業所がある市が違うと、受給者証は使えませんか?
児童福祉法は、通所給付決定を保護者の居住地の市町村が行うと定めているだけで、事業所の所在地を利用の条件にはしていません(第21条の5の3・第21条の5の5)。ただし、実際に使えるかどうかは事業所の受け入れ状況や窓口の案内によります。まずは住んでいる市区町村の窓口と、使いたい事業所の両方にご確認ください。
受給者証は、どこの市区町村が発行しますか?
保護者の居住地(原則として住民票上の住所地)の市町村です。児童福祉法第21条の5の5、こども家庭庁の事務処理要領も同じ整理をしています。事業所がどこにあるかは関係ありません。
事業所を指定しているのはどこですか?
事業所が所在する都道府県知事です(指定都市・中核市の場合あり)。保護者への通所給付決定を行う市町村とは、別の行政単位です。
通所給付決定は「どの事業所を使うか」を決めるものですか?
違います。こども家庭庁の事務処理要領は、通所給付決定を「公費で助成することの要否を判断するもの」であり、「特定の事業者からサービス提供を受けるべき旨を決定するものではない」と説明しています。
「住所地特例」という言葉を聞きました。この場面にも関係しますか?
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第19条にある住所地特例は、施設に入所・入居することで住民票上の住所が変わってしまう場合のための仕組みです。自宅から事業所に通う通所支援では住所自体が変わらないため、この特例は関係しません。児童福祉法の通所給付決定についても、同様の特例規定は見当たりませんでした。
引っ越しをして、今通っている事業所をそのまま続けたい場合も、同じ話ですか?
いいえ、別の手続きです。引っ越しは保護者の居住地(住民票上の住所)そのものが変わるため、通所給付決定を出す市町村自体が切り替わります。詳しくは引っ越しをするとき、支援はどうなるのかをご覧ください。
里帰り中に、実家の近くの事業所を一時的に使うことはできますか?
これを正面から扱った国の通知は確認できませんでした。事業所には正当な理由がなければ利用を拒めないという規定はありますが(運営基準第14条)、実際に受け入れられるかは事業所の体制やその時々の判断によります。住んでいる市区町村の窓口と、使いたい事業所の両方に、事前に直接ご確認ください。
事業所を2か所以上、別々の市区町村で使うことはできますか?
支給量の範囲内であれば、複数の事業所を利用すること自体は可能です。事業所ごとの選び方や、2か所目を使うときの届出については児童発達支援の事業所を、どう選ぶか受給者証の支給量を増やしたいときで扱っています。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

制度のこと、見学のときに一緒に確認できます

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