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🧭 年齢・場面別

スプーン・フォーク・箸がまだのとき——道具と姿勢を家と園で進める順番

最終更新:2026年9月7日
園の連絡帳に「そろそろお箸を」と書かれていた。給食で最後まで残っていると聞いた。家では手づかみがまだ多くて、スプーンを渡すと投げてしまう——そんな夜にこのページを開かれたのだと思います。
この記事では、何を食べるか(偏食)の話はしません。それは別記事「偏食」で扱っています。ここで扱うのは、どうやって食べるか——手づかみ・スプーン・フォーク・箸という道具の順番椅子と机の高さと姿勢食べる時間の長さ、そして園の給食で頼めること家庭で今週できる準備です。国の資料——厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」、保育所保育指針とその解説、幼稚園教育要領、こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン——を開いて、道具の順番について書かれていること書かれていないことを分けました。あわせて、1歳6か月児・3歳児健診の問診票が食事について何を聞いているかを、こども家庭庁が示す様式そのものから確かめます。飲み込みや口の動きの医学的な評価、訓練法の効果には踏み込みません。食べ方そのものに心配があるときの相談先は、園・保健センター・かかりつけ医で止めています。

食事の困りごとを、ひとまとまりにしない

食事の場面で困っていることは、たいていいくつかの別の困りごとが同時に起きている状態です。「箸が持てない」と「こぼす」と「座っていられない」は、原因も、手を打つ順番も違います。まず、どれが起きているのかを分けてみます。

起きていること見えているのは、どこか
手づかみが続く道具を渡しても手で食べる。道具は持つが、途中で手に戻る。
道具そのものの問題か、道具だと間に合わない(早く食べたい)のかで分かれます
道具が口まで届かないすくえない、すくっても落ちる、口の手前でこぼれる。
手首の返し方、皿が動く、座面が高くてひじが上がる——手以外の理由も混ざります
こぼす口に入ってから出る、皿の外に落ちる、コップが倒れる。
一口の量が多いのか、顔を皿に近づけているのか、見るところが違います
口に詰め込む次々に入れる、飲み込む前に次を入れる、ほおにためる。
一口の量を決める段階(後述)に関係します。むせる・吐くが続くときは医療の相談先へ
時間内に終わらない園から「最後まで残っていた」と言われる。家でも一食に長くかかる。
量・道具・姿勢・気が散る環境のどれが効いているかで、頼むことが変わります
座り続けられない途中で立つ、椅子の上で動く、足をぶらぶらさせる。
足の裏が床や足台についているかを、いちばん最初に見ます
今夜できること=「どれが起きているか」に丸をつける

上の表のうち、いま家で起きているものに丸をつけてください。ふたつ以上に丸がつくのがふつうです。それがそのまま、園に伝えるときの言葉になります。「食べるのが下手で」ではなく、「道具は持てるけれど、口の手前でこぼれます」「足がぶらぶらして途中で立ちます」——ここまで分けて伝えると、園の側も同じところを見られます。

※ 「何を食べるか」——決まったものしか食べない、新しい食材を口に入れない——は、この記事では扱いません。別記事「偏食」をご覧ください。

国の資料は「手づかみ→食具」の順番を書いています

「手づかみが続く」と聞くと、道具に進めていない、と感じる方が多いと思います。けれど国の資料をそのまま読むと、手づかみ食べは、飛ばす段階ではなく、通る段階として書かれています。

授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)に書かれていること

手づかみ食べは「積極的にさせたい行動」

厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」(2019年改定版)は、離乳後期の説明のなかで、「手づかみ食べは、生後9か月頃から始まり、1歳過ぎの子どもの発育及び発達にとって、積極的にさせたい行動である」と書いています。

そして続けて、「子どもが手づかみ食べをすると、周りが汚れて片付けが大変、食事に時間がかかる等の理由から、手づかみ食べをさせたくないと考える親もいる」と、保護者の側の事情にも触れたうえで、その場合には手づかみ食べが必要である理由を情報提供することが大切だ、と書いています。

つまり、「汚れる」「時間がかかる」という困りごとは、国の資料の側で最初から想定されています。手づかみが続いていることそのものは、資料の書き方に沿えば、順番どおりです。

「やがて食具を使うようになって」——道具に進む順番

同じガイドは「離乳の完了」を、「形のある食物をかみつぶすことができるようになり、エネルギーや栄養素の大部分が母乳又は育児用ミルク以外の食物から摂取できるようになった状態」と定め、その時期を「生後12か月から18か月頃」としています。そのうえで、食べ方について次のように書いています。

授乳・離乳の支援ガイド「(3)離乳の完了」

「食べ方は、手づかみ食べで前歯で噛み取る練習をして、一口量を覚え、やがて食具を使うようになって、自分で食べる準備をしていく。」

ここには順番が書かれています。①手づかみで前歯で噛み取る → ②一口の量を覚える → ③食具(道具)を使うようになる。道具は最初ではなく、一口の量を覚えたあとに置かれています。「口に詰め込む」「こぼす」が続いているとき、道具の練習より先に見るところがある、という読み方ができます。

スプーンは、まず「大人が使う道具」として登場します

ガイドの離乳中期・後期の説明では、スプーンは食べさせる側の道具として出てきます。中期は「平らな離乳食用のスプーンを下唇にのせ、上唇が閉じるのを待つ」、後期は「丸み(くぼみ)のある離乳食用のスプーンを下唇にのせ、上唇が閉じるのを待つ」と、スプーンの形と、「待つ」という動作が書かれています。子どもが自分でスプーンを持つ段階の説明は、このガイドの本文には見当たりませんでした。

※ 「授乳・離乳の支援ガイド」は厚生労働省が2019年に改定したもので、現在はこども家庭庁のページに掲載されています。月齢はすべて「目安」で、ガイド自身が「子どもの発育及び発達には個人差がある」と繰り返し書いています。

箸に進む年齢は、国の資料には書かれていません

園から「そろそろ箸に」と言われると、箸に進むべき年齢が決まっているように聞こえます。今回、次の資料を開いて「箸」という語を探しました。

確かめられたこと

「何歳までに箸」という基準は、今回確かめた国の資料のどこにも書かれていませんでした。園が「そろそろ」と言うのは、園の年齢クラスの進み方や、まわりの子の様子から来ている場合がほとんどだと思います。それは園の側の見立てとして受け取ってよいものですが、国の側に期限があるわけではない、というところまでは言えます。

保育所保育指針が、年齢ごとに書いていること

保育所保育指針は、年齢の区分ごとに「健康」の領域でねらいと内容を書いています。食事について書かれているのは次の部分です。

区分指針の書き方(原文)
乳児内容③「個人差に応じて授乳を行い、離乳を進めていく中で、様々な食品に少しずつ慣れ、食べることを楽しむ」
内容の取扱い②「離乳食が完了期へと徐々に移行する中で、様々な食品に慣れるようにする」
1歳以上3歳未満基本的事項ア「つまむ、めくるなどの指先の機能も発達し、食事、衣類の着脱なども、保育士等の援助の下で自分で行うようになる
内容④「様々な食品や調理形態に慣れ、ゆったりとした雰囲気の中で食事や間食を楽しむ」
内容の取扱い④「食事、排泄、睡眠、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなど、生活に必要な基本的な習慣については、一人一人の状態に応じ、落ち着いた雰囲気の中で行うようにし、子どもが自分でしようとする気持ちを尊重すること」
3歳以上内容⑤「保育士等や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ」
内容⑦「身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする
内容の取扱い⑤「基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し、子どもの自立心を育て……」

見てのとおり、「スプーン」「フォーク」「箸」という道具の名前は、指針の本文には出てきません。1歳以上3歳未満で書かれているのは「保育士等の援助の下で自分で行うようになる」、3歳以上は「自分でする」——誰がどれだけ手伝うかの書き方です。道具の種類ではなく、援助の量が年齢で変わる、という組み立てになっています。

幼稚園教育要領(平成29年告示)の領域「健康」も同じ形で、内容(5)「先生や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ」、内容(7)「身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする」、内容の取扱い(5)「基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し……」と書かれています。保育所も幼稚園も、「家庭での生活経験に配慮する」が国の側の書き方です。園に家の様子を伝える根拠は、ここにあります。

健診の問診票は、食事について「はい・いいえ」で聞いています

こども家庭庁の通知「乳幼児に対する健康診査について」(改正後全文・令和7年9月1日 第7次改正)には、1歳6か月児と3歳児の健康診査票と問診票の様式が載っています。そこに、食事についての設問がいくつかあります。

健診問診票の設問(様式のとおり)
1歳6か月児問10「スプーンを使って食事ができますか。」(はい・いいえ)
問20「偏食や小食など食事について心配なことがありますか。」(いいえ・はい)
問10は「運動発達」の欄に置かれています。問診票は全43問です
3歳児問6「ほぼこぼさないで一人で食べますか。」(はい・いいえ)
問9「何でも自分でしたがりますか。」(はい・いいえ)
問14「よく噛んで食べる習慣はありますか。」(はい・いいえ)
問15「偏食や小食など食事について心配なことがありますか。」(いいえ・はい)
問6は「運動発達」の欄に置かれています。問診票は全40問です
聞かれているのは「スプーン」と「こぼさない」までです

1歳半で聞かれる道具はスプーンだけです。フォークも箸も、問診票には出てきません。3歳児で聞かれるのは「ほぼこぼさないで一人で」で、ここにも道具の名前はありません。「ほぼ」とついているのも見落とせないところで、まったくこぼさないことは求められていません

「いいえ」に丸をつけてよい設問です

この設問は「はい・いいえ」の二択です。「いいえ」が並ぶと不安になりますが、問診票は保護者が家での様子をそのまま書く紙で、そこから当日の話が始まります。「スプーンは持つけれど途中で手づかみになる」なら、当日そのまま伝えるのがいちばん正確です。

医師が書く健康診査票の側にも、食事の欄があります

医師が記入する健康診査票のほうには、診察所見の中に「13 生活習慣上の問題 ア 小食 イ 偏食 ウ その他」という欄が、1歳6か月児・3歳児の両方に置かれています。また判定欄の近くに「栄養 良・要指導」という欄があります。道具や姿勢そのものの欄は、健康診査票にはありません。食べ方の困りごとは、問診票と当日の聞き取りで拾われる形です。

健診本体の判定は「1 異常なし/2 既医療/3 要経過観察/4 要紹介(要精密・要治療)」の4区分、それとは別に「子育て支援の必要性の判定」(1 特に問題なし/2 保健師による支援が必要/3 その他の支援が必要)の欄があります。食事の困りごとが「子育て支援の必要性」のほうで拾われて、保健師との継続の話につながることがあります。

なお、健診の項目そのものは母子保健法施行規則 第2条で決まっていて、1歳6か月児は「二 栄養状態」「六 四肢運動障害の有無」「七 精神発達の状況」「十 育児上問題となる事項」、3歳児は「二 栄養状態」「八 四肢運動障害の有無」「九 精神発達の状況」「十二 育児上問題となる事項」が列挙されています。食事の道具に関わる設問が「運動発達」の欄に置かれているのは、この項目立てに沿ったものと読めます。

道具ごとに、いまの持ち方を記録するところから

道具を進めるとき、いちばん先にやることは練習ではなく記録です。「うまく使えない」を、どの道具で・どこまでできて・どこで止まるかに分けます。園に伝えるときにも、事業所に相談するときにも、この記録が土台になります。

道具見るところ(3日ぶん、食事の途中でメモ)
手づかみつまむ大きさはどれくらいか(ひと口大か、大きいままか)/前歯で噛み取っているか、丸ごと入れているか/片手か両手か
「前歯で噛み取って一口量を覚える」が、ガイドの書く道具の前の段階です
スプーン柄をどう握っているか(手のひら全体か、指か)/すくうとき手首が返るか、腕ごと動くか/口へ運ぶとき、顔が皿のほうへ下がるか/すくったあと、どこでこぼれるか
フォーク刺すのか、すくうのか/刺したあと口まで届くか/スプーンより使いやすそうか、使いにくそうか
フォークがスプーンより先に安定する子もいます。順番は固定しなくてかまいません
持たせたときの反応(持つ・置く・投げる)/2本を一緒に握って刺しているか/はさもうとしているか
園が「箸」と言っている理由(クラスの決まりか、その子を見てか)も聞いておきます
コップ両手か片手か/傾けすぎてこぼれるか/飲むとき机に肘がつくか
持ち方の段階の名前は、今回確かめた国の資料にはありません

「握り持ち」「鉛筆持ち」といった段階の名前や、何歳でどの持ち方になるかは、授乳・離乳の支援ガイド・保育所保育指針・幼稚園教育要領・児童発達支援ガイドラインのいずれにも書かれていませんでした。ですから、この記事では段階の名前を使わず、見たままを記録する形にしています。記録したものを園や事業所に見せれば、そこから先は、その子を見ている人が判断できます。

「道具に応じた支援」は、児童発達支援ガイドラインに書かれています

こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)は、本人支援の5領域のひとつ「健康・生活」の支援内容として、次のように書いています。

児童発達支援ガイドライン「(ア)健康・生活」<生活習慣や生活リズムの形成>

「睡眠、食事、排泄等の基本的な生活習慣を形成し、健康状態の維持・改善に必要な生活リズムを身につけられるよう支援する。また、健康な生活の基本となる食を営む力の育成に努めるとともに、楽しく食事ができるよう、口腔内機能・感覚等に配慮しながら、……姿勢保持、手指の運動機能等の状態に応じた自助具等に関する支援を行う。」

「自助具」とは、その子の手や姿勢に合わせて使いやすくした道具のことです。ガイドラインの側で、「姿勢保持」と「手指の運動機能」を見て、道具を合わせる支援が児童発達支援の中身として明記されています。つまり、通っている事業所があるなら、「食事の道具のことを相談したい」は、支援の範囲として頼んでよいことです。同じ領域の<基本的生活スキルの獲得>には「こどもが食事、排泄、睡眠、衣類の着脱、身の回りを清潔にすること等の生活に必要な基本的技能を獲得できるよう、生活の場面における環境の工夫を行いながら」とも書かれています。

※ 市販のどの道具がよいかは、この記事では書きません。手の大きさと握り方で変わることで、記録を見た人が選ぶのが確実です。

椅子と机——足の裏・ひじ・皿の三か所を見る

道具の前に、姿勢を見ます。理由は単純で、座面が高くて足が浮いていると、体を支えるほうに力を使ってしまい、手は空きません。児童発達支援ガイドラインが「姿勢保持」を道具の前に並べているのも、同じ順番です。

国の資料の側でも、座ることと食べることは最初から結びついています。授乳・離乳の支援ガイドは、離乳を始める時期の目安として「首のすわりがしっかりして寝返りができ、5秒以上座れる、スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなる」を挙げています。保育所保育指針解説も、食事の環境として「テーブル、椅子、食器、スプーンや箸など食具等、環境の構成に配慮すること」と、椅子とテーブルを食具と並べて書いています。

家で見る三か所

  1. 足の裏——座ったとき、足の裏が床か足台についているか。ぶらぶらしているなら、踏み台・箱・雑誌の束など家にあるもので足の下に台を置いて、途中で立つ回数が変わるかを見ます。
  2. ひじ——机の高さが、座ったときのひじの高さに近いか。机が高いと肩が上がり、スプーンは口の手前で傾きます。椅子を高くしたら、①の足台も高くします。
  3. ——皿が動くか。すくうたびに皿が逃げると、手ではなく皿を押さえるほうに力が行きます。滑りにくい敷物、縁の立った皿、皿を机の手前に置く——どれが効くかは、やってみて記録します。
順番は、足→ひじ→皿→道具

道具を変える前に、この三か所を先に整えると、道具を変えずに変わることがあります。逆に、三か所を整えても変わらなければ、それは「姿勢ではなく道具や手の段階の話」だと切り分けられます。どちらの結果でも、園や事業所に伝える情報が一つ増えます。

※ 姿勢そのものに医学的な心配があるとき——体が片側に傾く、座位が保てない、体幹の弱さを指摘されている——は、家で整える前に、かかりつけ医や保健センターに相談してください。

食べる時間の長さ——「時間内に」と言われたとき

園から「給食の時間内に食べ終わらない」と言われたとき、家でできることは速く食べる練習ではありません。先に見るのは、何に時間がかかっているかです。

時間がかかっている理由頼むこと・変えること
量が多い量を減らすことを先に頼みます。完食できる量から始めて、時間内に「終わった」経験を積むほうが先です。
保育所保育指針解説は「子どもの状態に応じて、摂取方法や摂取量などを考慮し」と書いています
道具で時間がかかる道具で食べる一品と、手づかみでよい一品を分けてもらいます。全部を道具でやろうとすると、時間と道具の両方で追い込まれます
姿勢で時間がかかる足台と椅子の高さを園にも合わせてもらいます(前の節の三か所を伝える)
まわりで時間がかかる席の位置(壁側・端・先生の近く)を変えられるかを聞きます。音や動きに気が向く子は、席だけで変わることがあります
終わりが分からない「ここまで食べたら終わり」を、皿を分ける・量を先に取り分けるなどで見て分かる形にしてもらいます

「時間がかかる」は、国の資料が想定している困りごとです

前に引いたとおり、授乳・離乳の支援ガイドは「食事に時間がかかる等の理由から、手づかみ食べをさせたくないと考える親もいる」と書き、保育所保育指針解説は「情緒の安定のためにも、ゆとりある食事の時間を確保し」と書いています。園の給食に時間の枠があること自体は園の運営の話ですが、ゆとりのある時間が国の側の書き方である、というところは押さえておけます。

確かめられなかったこと

給食の時間を「何分」とする基準は、今回開いた保育所保育指針・同解説・幼稚園教育要領には書かれていませんでした。園ごとの時間割で決まっているものと考えられます。「うちの園の給食は何分ですか」と聞くところから始めるのが確実です。

園の給食で頼めること——「家ではこうです」から

園に頼むときの根拠は、保育所保育指針の「家庭での生活経験に配慮し、家庭との適切な連携の下で行うようにすること」(1歳以上3歳未満・内容の取扱い④)と、3歳以上の「基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し」(内容の取扱い⑤)です。幼稚園教育要領にも同じ文があります。家の様子を園が聞くことは、指針の側で前提になっています

頼み方の型

  1. 家の様子を、道具ごとに伝える——「スプーンは持てるが、口の手前でこぼれる」「手づかみだと一口が大きい」。前の節の記録をそのまま使います。
  2. 園の様子を、同じ分け方で聞く——園ではどの道具を出しているか、どこで止まっているか、席と椅子はどうか、給食は何分か。
  3. 頼むことを一つか二つに絞る——量を減らす/道具を一品だけにする/足台/席の位置。全部を一度に頼まず、2〜3週間で一つ試して、様子を聞く
  4. 「家でも同じにします」と伝える——家と園で道具や量の扱いを合わせると、子どもの側の混乱が減ります。指針の「家庭との適切な連携」は、この形です。

「箸にしてください」と言われたとき

「そろそろ箸に」と言われたら、断る必要も、急ぐ必要もありません。聞いてよいことは次の三つです。

国の資料に「何歳までに箸」という基準がないことは、前に書いたとおりです。園の方針を否定する必要はありませんが、「まだスプーンです」と伝えることは、指針の「家庭での生活経験に配慮」の範囲の、ふつうのやりとりです。

通っている事業所があるとき

児童発達支援に通っているなら、個別支援計画の「健康・生活」の欄に食事の道具や姿勢のことが入っているかを確かめられます。ガイドラインは、5領域について「各領域との関連性については必ず記載することとしている」と書いています。入っていなければ、次の面談で「食事の道具と姿勢を入れてほしい」と頼めます。園と事業所の間で見方を合わせたいときは、保育所等訪問支援という制度があります(ガイドラインが児童発達支援センターの役割として挙げているものの一つです)。使えるかどうかは、事業所と自治体に確かめてください。

家庭で今週できる準備

今夜から一週間で、家でできることを順に置きます。練習は最後です。

  1. 今夜——最初の表で「起きていること」に丸をつける。ふたつ以上でかまいません。
  2. 明日から3日——食事の途中で、道具ごとの「見るところ」をメモする(記録の節の表)。スマホのメモで十分です。全部の食事でなくてよく、1日1回でかまいません。
  3. 同じ3日——足の裏・ひじ・皿の三か所を見て、変えられるところを一つ変える(足台から)。
  4. 週の半ば——園に、記録をもとに家の様子を伝え、園の様子と給食の時間を聞く。頼むことは一つか二つ。
  5. 週末——道具の練習を、一食のうち一品だけにする。残りは手づかみでもスプーンでもよいことにする。時間は延ばさない。
  6. 次の健診・面談の前——問診票の設問(1歳半 問10・3歳児 問6・問14)を先に読んでおき、「いいえ」ならそのまま書いて、当日に記録を見せる。
練習を一品に絞る理由

授乳・離乳の支援ガイドは、道具の前に「一口量を覚える」段階を置いています。全品を道具にすると、一口の量も、時間も、道具も、同時に難しくなります。一品だけ道具、残りはこれまでどおりにすれば、食事全体の時間はほとんど変わらず、道具の場面だけを増やせます。うまくいかない日は、その一品も手づかみに戻してかまいません。食事が嫌な時間にならないことを、道具より先に置きます。

※ 記録は3日で十分です。長く続けるものではなく、園や事業所に見せて手放すためのものです。

この記事で書かないこと

どこに相談すればいいか

相談先頼めること・聞けること
園(保育所・幼稚園・こども園)園での道具・席・椅子・給食の時間/量を減らす・道具を一品だけにする・足台/「箸」の理由。根拠は保育所保育指針・幼稚園教育要領の「家庭での生活経験に配慮」
保健センター(自治体の母子保健)健診の問診票の「いいえ」からの相談/栄養相談(健康診査票に「栄養 良・要指導」の欄があります)/保健師の継続支援。健診の日でなくても電話で相談できます
かかりつけ医むせる・吐く・ためる・体重が増えない、など食べ方に医学的な心配があるとき。3歳児健診の問診票には「かかりつけの医師はいますか」(問36)の設問があります
通っている事業所(児童発達支援)姿勢保持・手指の運動機能に応じた自助具の相談/個別支援計画の「健康・生活」に食事の道具と姿勢を入れる/園との見方合わせ(保育所等訪問支援)。根拠は児童発達支援ガイドライン

どこに行くにも、持っていくものは同じです。最初の表の丸と、3日ぶんの記録。「食べるのが下手で」ではなく、「スプーンは持てるが口の手前でこぼれる。足が浮いている」——ここまで分けて持っていけば、相手は同じところを見られます。

出典

※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

園から「そろそろ箸に」と言われました。何歳までに箸にしないといけませんか。
今回開いた国の資料——授乳・離乳の支援ガイド、保育所保育指針とその解説、幼稚園教育要領、児童発達支援ガイドライン——のどれにも、「何歳までに箸」という基準は書かれていませんでした。保育所保育指針が年齢で分けているのは道具の種類ではなく、「保育士等の援助の下で自分で行う」(1歳以上3歳未満)か「自分でする」(3歳以上)かという援助の量です。園には「クラスの決まりですか、この子を見てのことですか」と聞き、スプーンと箸を両方置いてもらう形を頼めます。
手づかみがまだ多いのですが、やめさせたほうがいいですか。
授乳・離乳の支援ガイドは、手づかみ食べを「生後9か月頃から始まり、1歳過ぎの子どもの発育及び発達にとって、積極的にさせたい行動」と書き、道具に進む順番を「手づかみ食べで前歯で噛み取る練習をして、一口量を覚え、やがて食具を使うようになって」としています。手づかみは飛ばす段階ではなく通る段階、という書き方です。汚れる・時間がかかるという困りごとも、同じガイドの中で先に想定されています。ただし、年齢が上がっても手づかみだけが続くときは、道具と姿勢の記録を持って、園や事業所に見てもらうのが確実です。
給食で時間内に食べ終わらないと言われました。家で速く食べる練習をしたほうがいいですか。
先に見るのは「何に時間がかかっているか」です。量・道具・姿勢・まわりの環境・終わりが見えない、のどれかで、頼むことが変わります。多くの場合、最初に頼めるのは量を減らすことです。保育所保育指針解説は「子どもの状態に応じて、摂取方法や摂取量などを考慮し」「ゆとりある食事の時間を確保し」と書いています。給食を何分とする基準は、指針・解説・幼稚園教育要領には書かれていませんでした。「うちの園の給食は何分ですか」と聞くところから始めてください。
健診の問診票の「スプーンを使って食事ができますか」に「いいえ」と書いても大丈夫ですか。
はい。問診票は「主にお子さんの世話をなさっている方が記入」する紙で、家の様子をそのまま書くものです。「いいえ」から当日の話が始まります。1歳6か月児の問10で聞かれている道具はスプーンだけで、フォークも箸も設問にありません。3歳児の問6は「ほぼこぼさないで一人で食べますか」で、まったくこぼさないことは求められていません。当日は「持てるけれど口の手前でこぼれる」など、分けて伝えると正確です。
椅子や机は、どこを見ればいいですか。
順番は足の裏→ひじ→皿です。足の裏が床か足台についているか、机の高さがひじに近いか、皿が動かないか。家にある踏み台や箱で足台を置くところから始められます。児童発達支援ガイドラインは「姿勢保持、手指の運動機能等の状態に応じた自助具等に関する支援」と、姿勢保持を道具と並べて書いています。姿勢そのものに医学的な心配(体が傾く・座位が保てない)があるときは、家で整える前にかかりつけ医や保健センターへ。
通っている児童発達支援の事業所に、食事の道具のことを頼んでいいのですか。
頼んでよいことです。こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)は、本人支援の領域「健康・生活」の支援内容として「楽しく食事ができるよう、口腔内機能・感覚等に配慮しながら、……姿勢保持、手指の運動機能等の状態に応じた自助具等に関する支援を行う」と書いています。個別支援計画の「健康・生活」の欄に食事の道具と姿勢が入っているかを確かめ、入っていなければ次の面談で頼めます。
むせる・吐く・口にためたまま飲み込めない、が続きます。この記事の方法でいいですか。
それはこの記事の範囲の外です。飲み込みや口の動きの評価は医療の話で、この記事では道具・姿勢・時間・園との連携に絞っています。むせる・吐く・ためる・体重が増えない、が続くときは、家で道具を変える前に、かかりつけ医か保健センターに相談してください。3歳児健診の問診票には「かかりつけの医師はいますか」(問36)の設問があり、健診の場でもそこから話ができます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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