連絡帳の一行を、子どもの評価として読んでしまう夜があります。けれど、園の側の文書は、連絡帳を「伝達と収集」の手段として置いています。
保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)の第4章「子育て支援」は、園を利用している保護者への支援の最初に「保護者との相互理解」を置き、こう書いています。
「日常の保育に関連した様々な機会を活用し子どもの日々の様子の伝達や収集、保育所保育の意図の説明などを通じて、保護者との相互理解を図るよう努めること」(第4章2(1)ア)。
伝えるだけでなく「収集」、つまり家庭からの情報を受け取ることも、園の側の仕事として書かれています。
その指針の解説(厚生労働省「保育所保育指針解説」平成30年)は、相互理解のための「手段や機会」を具体的に並べています。先頭にあるのが連絡帳で、続いて保護者へのお便り、送迎時の対話、保育参観や保育への参加、行事、個人面談、家庭訪問、保護者会と続きます。解説はさらに、この手段を使うときは「保護者の子育てに対する自信や意欲を支えられるように、内容や実施方法を工夫することが望まれる」と書いています。
事業所の側も同じ向きです。こども家庭庁「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)は「保護者との連携」の項で、職員は「日頃からこどもの状況を保護者と伝え合い」、気になること等について「連絡ノート等を通じて保護者と共有することが必要」と書いています。
つまり「落ち着かなかった」の一行は、園から家庭へ向かう矢印の途中です。家庭からの矢印が戻って、初めて往復になります。次の節から、その戻し方を書きます。
※ 「連絡帳」という語そのものは、保育所保育指針の本文にも児童発達支援ガイドラインにも出てきません(解説には5か所あります)。指針が定めているのは「日々の様子の伝達や収集」という機能で、道具の名前ではありません。
こちらから書くときに迷うのは、「何を書けば園が動けるのか」が分からないからです。園の先生が翌朝の保育で使えるのは、気持ちよりも事実、結論よりも前後です。四つに分けると、短い欄でも形になります。
| 型 | 書くこと(例) |
|---|---|
| ① 事実 | 起きたことを、そのまま。 「昨夜は21時に布団に入り、寝ついたのは23時ごろでした」 「寝てくれなくて大変でした」より、先生が翌日の見通しを立てやすい書き方です |
| ② 時間 | いつ起きたか、どのくらい続いたか。 「朝食はほとんど食べていません(7時半・パンを二口)」 午前中の様子と結びつけて見てもらえます |
| ③ 前後 | その前に何があり、その後どうなったか。 「日曜に祖父母が来て、夜まで人が多い一日でした。月曜の朝は着替えに時間がかかりました」 園で見えた姿の「理由」に当たる情報は、家庭にしかありません |
| ④ 家庭でやったこと | 試したことと、その結果。 「着替えは、上着だけ先に本人に選ばせると早く進みました」 うまくいった方法は、園がそのまま使えます。うまくいかなかったことも、園が同じ道を通らずに済みます |
不安を書いてはいけない、という意味ではありません。指針の解説は、保護者との対話で「子どもへの愛情や成長を喜ぶ気持ちを伝え合うこと」も必要だと書いています。ただ、欄が短いときは、事実を先に、気持ちは最後に一つにすると、先生が「何をすればよいか」を取り違えずに済みます。「園でも同じことが起きていないか、少し気になっています」で足ります。
毎日四つ書く必要はありません。いつもと違った日だけ、四つのうち書けるものだけで構いません。「変わりありません」の一行も、園にとっては「今日は普段どおりに見てよい」という情報です。
「落ち着かなかった」の一行に続きがほしいとき、頼み方で返ってくるものが変わります。「もっと詳しく書いてください」は、先生の側に「何を」が伝わりません。欄も時間も限られています。頼むのは一つ、しかも先生がその場で見ているものにします。
| 頼みたいこと | 書き方の例 |
|---|---|
| 前後を知りたい | 「落ち着かない場面の直前に何があったか(活動の切り替え・音・人の出入りなど)を、分かる範囲で一言いただけると、家でも同じ場面を見てみます」 |
| 時間帯を知りたい | 「午前と午後のどちらに多いか、だけ教えていただけますか。睡眠や朝食との関係を家で見てみたいです」 |
| 落ち着いていた場面も知りたい | 「逆に、落ち着いて取り組めていた活動があれば、それも一つ教えてください。家でも同じものを増やしたいです」 |
| 園の意図を知りたい | 「そのとき先生がどう声をかけてくださったかを教えていただけると、家でも同じ言い方にそろえます」 指針が「保育所保育の意図の説明」を園の側に求めている部分に、こちらから乗る頼み方です |
「教えてください」で終わると、先生の側には仕事が一つ増えるだけに見えます。「教えていただけたら、家でこうします」まで書くと、園の情報が家庭で使われることが分かり、往復が始まります。保育所保育指針が子育て支援の基本に置いているのは「保護者の自己決定を尊重すること」(第4章1(1)ア)で、家庭で何をするかを決めるのは保護者です。頼み方はその形にそろえます。
「落ち着かない」は、立ち歩くこと、声が大きくなること、友だちに手が出ること、部屋から出ることのどれも指せます。一度だけ、「園で『落ち着かない』と書いてくださるとき、多いのはどれでしょうか」と尋ねておくと、その後の一行が、家庭でも同じ姿として読めるようになります。この一問は連絡帳より、送迎時の30秒か面談のほうが向いています。
※ 面談で何を話すか、先生から気になることを言われたときにその場で何を確かめるかは、別記事「園と学校の面談」に書いています。
紙の連絡帳からアプリに変わった園では、入力欄が短く、定型の選択肢(機嫌・食事・排せつ・睡眠)だけの日もあります。欄の長さは園の仕組みで決まっていて、保護者の側からは変えられません。変えられるのは一行に何を入れるかと、どこで長い話をするかです。
40字前後に収まる型です。四つの型のうち事実と時間を先に、頼みごとは一つだけにします。
| 伝えたいこと | 向いている場所 |
|---|---|
| その日の事実 | 連絡帳・アプリの一行 |
| ここ数週間の変化 | 週に一度、「今週のまとめ」として一段落。アプリなら金曜の一行を少し長くする |
| 子どもの特性・助かる関わり方 | サポートブックのような一枚を、年度初めか担任が変わるときに渡す |
| 相談したいこと・園に頼みたい配慮 | 面談を申し込む。連絡帳には「一度お時間をいただけますか」とだけ書く |
連絡帳にすべてを載せようとすると、園の側も読む時間が要り、大事な一行が埋もれます。日々の事実は連絡帳、特性の説明は一枚もの、相談は面談と分けると、それぞれが短く済みます。
※ 一枚ものの作り方(七つの箱・1枚に収める削り方・渡す時期)は、別記事「サポートブックの書き方」に書いています。
園の連絡帳と事業所の連絡ノートが別々にあり、家庭が両方を読んで、両方に書いている。保護者が唯一の中継地点になっている状態です。ここで疲れるのは自然なことで、国の文書は、この状態を保護者ひとりの仕事にしないように書いています。
児童発達支援ガイドラインは、事業所が提供する支援を「本人支援」「家族支援」「移行支援」「地域支援・地域連携」の四つで整理し、「移行支援」のねらいに「保育所等と併行利用している場合における併行利用先との連携」を置いています。その支援内容として書かれているのは次の二つです。
「声掛けのタイミング」を園と事業所で合わせることは、ガイドラインの上では事業所の仕事に入っています。家庭が両方の連絡帳から拾って伝え直すより、「園と直接やりとりしていただけますか」と事業所に頼めることです。
同じガイドラインの第5章は、事業所が日頃から連携を図る相手として、市町村の担当部局や保健センター、病院、障害児相談支援事業所と並べて「保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、特別支援学校」を挙げ、「こどもの支援が保育所等や学校等に適切に移行され、支援が引き継がれていくことが必要である」と書いています。さらに、児童発達支援に携わる職員は保育所保育指針を理解することが重要だ、とも書かれています(第3章1)。事業所の側が園の言葉を知っている前提です。
保育所保育指針は、子どもに障害や発達上の課題が見られる場合には「市町村や関係機関と連携及び協力を図りつつ、保護者に対する個別の支援を行うよう努めること」(第4章2(2)イ)、障害のある子どもの保育については「家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図ること」(第1章3(2)キ)と書いています。園から事業所へつながる道も、指針の上で開いています。
事業所の担当者(児童発達支援管理責任者)に、「園の先生と、声かけの仕方をそろえたいです。園と直接やりとりしていただくことはできますか」。園の担任か主任に、「事業所から連絡があったら、受けていただけますか」。どちらも、国の文書に書かれている範囲の頼みごとです。ただし次の節のとおり、やりとりの前に保護者の同意が要ります。
連絡帳の往復だけでは足りないとき、事業所の職員が園に来て、園の中で子どもを見て、園の先生と直接話す制度があります。児童福祉法 第6条の2の2は、保育所等訪問支援を「保育所その他の児童が集団生活を営む施設……に通う障害児……につき、当該施設を訪問し、当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援その他の便宜を供与すること」と定めています。
連絡帳との関係で大事なのは、この制度が「訪問のあとに保護者へ報告すること」を事業所に求めている点です。こども家庭庁「保育所等訪問支援ガイドライン」(令和6年7月)は、報告の方法を保護者と相談して選ぶとしたうえで、五つを並べています。
| 報告の方法 | ガイドラインが書いている特徴 |
|---|---|
| 訪問支援への同席 | 支援の場面を保護者が直接見られるので理解と納得を得やすい。一方で子ども本人や周囲の子への影響に留意 |
| オンライン・対面の面談 | 保護者のペースで話せる時間を確保できる |
| 電話 | 声色を含むニュアンスが伝わり、反応をその場で確かめられる |
| メール・チャット | 就労等で時間が取りにくい保護者に向く。訪問直後に伝えられる |
| 記録(ノートのやりとり・報告書) | 口頭だけだと忘れたり聞き逃したりするが、記録として残ることで正確に届く |
連絡帳で「落ち着かなかった」とだけ返ってくる状態は、園の中で何が起きているかを家庭が見られないことから来ています。保育所等訪問支援は、その「見られない」を、園と家庭の両方の同意のもとで埋める制度です。ガイドラインは、訪問先の園との間で「保護者の同意を得た上で、こども本人の発達の状況や障害の特性、それぞれの支援内容等について情報を共有」すると書いています。
※ 対象になる施設、園の同意、費用、利用までの流れは別記事「保育所等訪問支援とは?」に書いています。この記事では、連絡帳の往復を補う仕組みとして名前だけ置きます。
「園と事業所で直接やりとりしてほしい」と頼んだとき、園や事業所から「同意書をお願いします」と言われることがあります。これは面倒な手続きではなく、三つの文書がそれぞれ求めていることです。
| 文書 | 書かれていること |
|---|---|
| 保育所保育指針 園の側 | 「子どもの利益に反しない限りにおいて、保護者や子どものプライバシーを保護し、知り得た事柄の秘密を保持すること」(第4章1(2)イ) |
| 指定通所支援の基準省令 事業所の側 | 事業所が「その他の福祉サービスを提供する者等に対して、障害児又はその家族に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該障害児又はその家族の同意を得ておかなければならない」(第47条第3項) |
| 個人情報保護法 共通 | 個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などを除き「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」(第27条第1項) |
同意は一括でも、範囲を決めてでも出せます。「連絡帳に書いた内容を園と事業所で共有してよい」「診断名は含めない」「今年度末まで」のように、範囲を先に言うと、園も事業所も動きやすくなります。範囲を決めるのは保護者です。事業所の側は、保育所等訪問支援ガイドラインでも「保護者の同意を得た上で」情報共有すると繰り返し書かれており、同意なしに園と話を進めることはできません。
園から事業所へ、事業所から園へ、事業所から相談支援事業所へ——渡す方向ごとに、持っている側が同意を取ります。「前に園に出したから事業所にはいらない」とはなりません。逆に、出した同意はいつでも範囲を狭められます。
※ 基準省令第47条第3項の「その他の福祉サービスを提供する者等」に保育所や幼稚園が個別に含まれるかは、条文に名前で書かれていません。実際には園・事業所の双方が同意書を求める運用が一般的ですが、その運用の根拠は園・事業所ごとに確かめてください。
連絡帳を書く手が止まる理由の一つは、「これは誰のためになるのか」が見えないことです。毎日の短い記録は、少なくとも次の四つの場面で、実物として使われます。
練馬区の「就学相談の流れ」は、就学面談の内容を「発達検査」「保護者面談」「お子様の日常の様子の確認」の三つで示し、三つ目には「保護者の了解のもと保育園や幼稚園等または在籍校に確認を取ります」と書いています。園がそのとき答える材料は、園の記録です。連絡帳で往復した内容は、園の記録に残りやすく、家庭の側にも同じものが残ります。
保育所保育指針は、子どもの就学に際し「市町村の支援の下に、子どもの育ちを支えるための資料が保育所から小学校へ送付されるようにすること」(第2章4(2)ウ)と定めています。その資料が「保育所児童保育要録」で、こども家庭庁が掲載している記載事項には、最終年度の育ちのほかに「特に配慮すべき事項」=「子どもの健康の状況等、就学後の指導における配慮が必要なこととして、特記すべき事項がある場合に記入すること」という欄があります。この欄に何を書くかは園が決めますが、園が何を知っているかは、それまでの往復で決まります。
児童福祉法 第21条の5の7第1項は、市町村が通所給付の要否を決めるとき、「障害児の心身の状態、当該障害児の介護を行う者の状況、当該障害児及びその保護者の障害児通所支援の利用に関する意向その他の事情を勘案」すると定めています。窓口で「家では」「園では」と聞かれたとき、連絡帳の往復があれば、記憶ではなく記録で答えられます。
指定通所支援の基準省令は、事業所が支援を提供した際は「提供日、内容その他必要な事項を……提供の都度記録しなければならない」とし、その記録について「通所給付決定保護者から……確認を受けなければならない」(第21条)、児童発達支援計画などとあわせて「提供した日から五年間保存しなければならない」(第54条第2項)と定めています。事業所の連絡ノートに家庭から書いた内容は、この記録と並んで、個別支援計画の見直しの材料になります。
紙の連絡帳は年度末に手元に戻ります。アプリは園を離れると見られなくなることがあるので、月に一度、いつもと違った日の分だけ写真かメモで残しておくと、就学相談や受給者証の申請のときに、月ごとの流れとして出せます。全部を写す必要はありません。四つの型で書いた日だけで十分です。
※ 個別支援計画のどこを見ればよいか、控えをどう頼むかは別記事「個別支援計画は、どこを見ればよいのか」に書いています。
五つとも、園や事業所に何かを新しく始めてもらう頼みごとではありません。すでに国の文書に書かれている「伝達と収集」「併行利用先との連携」に、家庭の側から乗るだけです。
書けなかったことは、書けなかったと書いておきます。この記事に載せた文書はすべて公開されているもので、出典の欄から原文に進めます。
※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
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