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電車・買い物・外食——外出が不安なときに決めておけること

最終更新:2026年9月7日
外出がうまくいかない日が続くと、行き先がひとつ、またひとつと減っていきます。電車をやめ、スーパーは夜に一人で行くことにし、外食はあきらめる。そうやって家族の世界が静かに狭くなっていく——それがいちばん困ることです。
けれど、道は二つではありません。我慢して慣れさせるのでも、あきらめるのでもない、三つ目の道があります。行き先と時間帯を選び、逃げ道を用意して出る。これだけです。
この記事では、外出の何がしんどいのかを分解したうえで、電車・買い物・外食それぞれの手当て、手帳による運賃の割引、ヘルプマークの入手方法、まわりの目が気になるときの考え方、そして東京23区が用意している移動支援・日中一時支援を、法令と自治体の公式ページを開きながら並べます。
先に書いておきます。出ない日があって、かまいません。この記事は「がんばって外に出ましょう」という話ではありません。

外出の何がしんどいのか——ひとまとまりにせず、分けてみる

「外出が苦手」とひとまとめにすると、手の打ちようがなくなります。けれど実際には、外出という一つのことがしんどいのではなく、外出に含まれるいくつかの要素のうち、どれか一つか二つが飛び抜けてしんどいことがほとんどです。そして、その一つか二つは、たいてい決まっています。

分けてみると、手当てできるものが残ります。下の表の左は「外出のどこに負荷がかかるか」、右は「出かける前に決められること」です。右側は、その場でがんばることではなく、家を出る前に決めておけることだけを書きました。

外出のどこに負荷がかかるか出かける前に決められること
——アナウンス、発車ベル、店内放送、赤ちゃんの泣き声、食器の音。どれも「いつ鳴るか分からない」という点が共通しています音の少ない時間帯を選ぶ。イヤーマフやフードなど、耳をふさぐ手段を持って出る。
音が苦手な背景については、関連記事「感覚過敏」もあわせてご覧ください
人の多さと距離——混雑した車両や店内では、自分の意思で人との距離を取れなくなります平日の午前、開店直後、食事どきを外した時間。端の車両、壁側の席、出入口に近い席を先に決めておく
待つこと——レジの列、電車を待つ時間、料理が出てくるまでの時間。あと何分かが分からないことが、待てなさの正体であることが多いです待ち時間を数えられるものに変える(残り時間の見えるタイマー、「3つ数えたら進む」など)。列に並ぶ前に、待つ長さを先に伝える
見通しが立たない——今日はどこへ行き、何をして、いつ帰るのか。大人の頭の中にはあっても、子どもには渡っていないことがあります行き先・することの数・帰る時刻を、出る前に絵か短い言葉で渡す。
予定は「多く」ではなく「少なく」書くほうが守れます
におい・光——飲食店のにおい、ドラッグストアの香り、駅やコンビニの照明のちらつきにおい・光が強いと分かっている場所は、滞在時間を短く見積もる。帽子やサングラスなど、光をやわらげるものを許可しておく
座る場所がない——立ち続けることそのものが負荷になります座れる可能性の高い時間・乗る駅を選ぶ。ホームや店内のベンチの位置を、着いたら最初に確かめる
トイレ——場所が分からない、混んでいる、音や自動洗浄が苦手、という三つが別々に効いてきます到着したら真っ先に場所を確かめる。行きたくなる前に一度寄る。多機能トイレなら、音や人の気配が減ることがあります

「疲れやすさ」は、国のガイドラインにも書かれています

外出で早く疲れてしまうことを、家庭の問題として抱え込む必要はありません。国土交通省の「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」は、鉄軌道駅のプラットホームにベンチ等を設ける理由として、次のように書いています。

国のガイドラインが書いていること
「高齢者、障害者等の長距離移動、長時間立位が困難であること、知的障害者、精神障害者及び発達障害者等の知覚面又は心理面の働きが原因で発現する疲れやすさや服薬の影響等による疲れやすさ等に配慮し、旅客の乗降・移動を妨げないよう配慮しつつプラットホーム上にベンチ等を設ける」

つまり、ホームのベンチは、そういう疲れやすさがあることを前提にして置かれているということです。座ってよい場所です。遠慮する理由はありません。

三つ目の道——出る前に決めておく五つのこと

外出について語られるとき、道はよく二つに分けられます。慣れさせるために我慢して連れて行くか、いまはあきらめるか。けれど、この二つのあいだに、もう一本あります。

三つ目の道
行き先と時間帯を選び、逃げ道を用意して出る。
そして、逃げ道を使った日を失敗と数えない。
十五分で帰ってきた日も、外出できた日です。

「逃げ道を用意する」とは、途中でやめられるようにしておく、ということです。途中でやめられると分かっていると、出る前のハードルが下がります。そして——これは繰り返し起きることですが——途中でやめられる状態で出た日のほうが、結果として長くいられることがよくあります。

出る前に決めておく五つのこと

  1. 行き先を一つにする。「買い物のあとに公園、そのあと外食」は、大人でも疲れます。一つ済んだら帰る、を既定にしておくと、余力があるときだけ足せます。
  2. 滞在時間を先に決める。「行けるところまで」ではなく「三十分」と決めます。決めた時間より早く帰ることはあっても、延ばさないほうが次につながります。
  3. 帰る合図を決める。言葉でも、手のサインでも、カードでもかまいません。大事なのは、子どもの側からも出せる合図にしておくことです。「もう帰りたい」を伝える手段があるだけで、その場でのつらさは変わります。
  4. 休む場所を先に見つける。着いたらまず、ベンチ・階段の踊り場・空いている通路・外の空気の吸える場所を確かめます。「つらくなったらあそこへ行く」が一つ決まっていれば、それが逃げ道になります。
  5. 代わりの案を一つ持つ。電車が混んでいたら一本見送る、店が満席だったら別の日にする、外食が難しそうならテイクアウトにして家で食べる。代わりの案は、あきらめではなく設計の一部です。

五つとも、外出先でがんばることではありません。玄関を出る前に、大人の側で決めておけることです。決めるのに五分もかかりません。

「今日は出ない」も、決めてよいことのひとつです

体調、睡眠、前日の出来事、天気。外出がうまくいくかどうかは、その日の子どもの努力よりも、その日のコンディションに左右されます。朝の様子を見て「今日はやめておく」と決めるのは、後退ではなく判断です。出なかった日を数えるのではなく、「出た日に、何がうまくいったか」だけを覚えておくほうが、次の一手が見つかります。

電車とバス——時間帯・車両・乗る駅、そして途中で降りてよいこと

電車とバスは、逃げ道がいちばん作りにくい場所です。動き出したら次の駅まで降りられませんし、混んでいれば距離も取れません。だからこそ、乗る前に決められることの割合が大きい場所でもあります。

時間帯——空いている時間は、たいてい決まっています

車両と乗る駅——選べるものは選ぶ

途中で降りてよい、ということ

これがいちばん伝えたいところです。途中で降りることは、外出の中止ではありません。ホームに降りて、ベンチに座って、次の一本を待つ。それだけで戻れることがあります。

途中で降りた場合、区間によっては運賃を改めて払うことになります。そこは駅の窓口で確かめてください。ただ、金額の話よりも先に、「降りるという選択肢が最初からある」と親子で共有しておくことのほうが効きます。乗る前に「つらくなったら次の駅で降りよう」と一言決めておく。それが逃げ道になります。

駅の人に頼んでよいこと

国土交通省は、旅客施設や車両の整備だけでなく、「役務の提供に関する移動等円滑化整備ガイドライン」——つまり接遇・案内そのものについてのガイドラインも公表しています。駅員に声をかけて手伝いを求めることは、利用者側の遠慮でどうにかするべきことではなく、もともと想定されていることです。

バスは、乗ってしまうと次の停留所まで降りられない点は電車と同じですが、降車ボタンを子どもが押せるという利点があります。「押したら止まる」という因果がはっきりしているので、見通しの立ちにくいお子さんにとって分かりやすい場面になることがあります。

運賃の割引——手帳の「第○種」の欄を見るところから

公共交通の運賃には、障害者手帳にもとづく割引があります。ただし、割引の中身は国が一律に定めているのではなく、鉄道会社・バス会社ごとに定められています。そのため「何割引きか」は路線によって違います。

調べ方の起点は、はっきりしています。新宿区が発行している障害者福祉の案内は、こう書いています——お持ちの手帳の「旅客鉄道株式会社 旅客運賃減額 第○種」の欄をご覧ください。この欄に書かれた第1種/第2種の別で、割引の適用範囲が変わります。

新宿区の案内に書かれている割引

割引の種類新宿区の案内に書かれている内容
鉄道旅客運賃の割引対象=身体障害者手帳・愛の手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方。
第1種・第2種の方が単独で利用する場合=普通乗車券が50%割引。ただし営業キロ100kmを超える区間(他鉄道会社線にまたがる場合を含む)。
第1種の方が介護人付き添いで利用する場合=普通乗車券・定期乗車券・回数券乗車券・急行券が50%割引、全線(距離の制限なし)介護人も同じ割引率
12歳未満の第2種の方が介護人付き添いで利用する場合=介護人1人の定期乗車券が50%割引。
特別急行券・グリーン料金の割引はありません。12歳未満の心身障害児は小児運賃の50%引き(小児定期券には割引なし)。上記以外の民営鉄道は各鉄道会社にお問い合わせください、と書かれています
タクシー運賃の割引割引率=メーター表示額の10%(10円未満の端数は切り捨て)。
対象=身体障害者手帳・愛の手帳の所持者(全国的に実施)。精神障害者保健福祉手帳は全国的には実施されておらず、都内でも一部未実施の事業者があるため、乗車の際に尋ねてくださいと書かれています。
利用方法=乗車の際に、手帳に貼付された写真を提示
都営バスの割引対象=身体障害者手帳・愛の手帳(療育手帳)などの手帳所持者とその介護者
普通運賃50%割引/定期券30%割引
利用方法=乗車時(多摩地域では降車時)に手帳等を提示。定期券は購入時に提示
都営交通無料乗車券新宿区に住所を有する発行対象者のうち希望する方に、都電荒川線・都営バス・都営地下鉄・日暮里舎人ライナーが無料で乗車できる乗車券を発行。
手続に必要なもの=身体障害者手帳/愛の手帳(療育手帳)/戦傷病者手帳/被爆者健康手帳等のいずれか。区の障害者福祉課で事前に申請。
これは新宿区の案内です。他区にお住まいの場合は、お住まいの区の同じ名前の窓口でご確認ください
障がい者用のICカード本人と介護者が同時かつ同一行程で鉄道・バスに乗車する場合に、自動改札機やバス料金機で割引運賃を自動精算できる仕組み。
対象=身体障害者手帳・愛の手帳(療育手帳)・精神障害者保健福祉手帳のいずれも第1種に限る大人の方と、その介護者1名。介護者用は小児の方も利用可能(その場合は大人運賃の半額)。
本人用と介護者用を2枚1組で同時に購入し、どちらか一方のみの購入はできません
先に確かめること
上の割引はすべて手帳が前提です。発達に関する相談をしている段階で、まだ手帳をお持ちでない場合、これらの割引の対象にはなりません。
東京都の療育手帳である愛の手帳の対象・申請の流れは、関連記事にまとめてあります。手帳を取るかどうかは、割引だけで決める話ではありませんが、判断材料の一つとして、割引の中身を知っておくことには意味があります。

ここに挙げたのは、新宿区が案内として公表している内容です。割引の実際の適用や必要な手続きは鉄道・バスの事業者ごとに違いますので、使う路線が決まったら、その事業者の窓口で確かめてください。

買い物と外食——時間帯、席の選び方、事前に伝えること

買い物

買い物でしんどくなるのは、多くの場合レジ前の待ち時間いつ終わるのか分からないことです。売り場を回っている時間そのものより、この二つのほうが効いています。

外食

外食は、予約の電話一本で、当日の負荷がかなり変わる場面です。伝えることは多くありません。

伝える内容は、診断名でなくてかまいません
店に伝えるとき、必要なのは「困っていること」と「してほしいこと」です。
「大きな音が苦手なので、出入口に近い席をお願いできますか」
「途中で外に出るかもしれません。荷物を置いたままでも大丈夫でしょうか」
——この二文で足ります。診断名も、手帳も、経緯の説明も要りません。

うまくいかなかったときのために、先に決めておくこと

外食の途中で難しくなったとき、その場で考えると判断が遅れます。出る前に、次の順番を決めておくと迷いません。

  1. まず、大人の一人が子どもと外に出る(残った一人が席にいる)
  2. 外の空気を吸って、落ち着いたら戻るか、戻らないかを決める
  3. 戻らない場合は、残りを持ち帰りにできるか尋ねる
  4. 会計して出る。この日を失敗と数えない——「三十分いられた」「持ち帰りにできた」が、その日の結果です

落ち着ける場所の目印——ヘルプマークと「カームダウン・クールダウン」

ヘルプマーク——東京都が作り、いまは全国に広がっています

ヘルプマークは、東京都が作成したマークです。東京都福祉局の公式ページには、次のように書かれています。

東京都福祉局のページに書かれている定義
「義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークです」

ここは正確に書いておきます。東京都のページの「対象者」の欄に、「発達障害」という語は書かれていません。書かれているのは「義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方」という書き方です。つまり、対象は列挙で閉じられておらず、「外見からは分からないが配慮が要る」という状態そのものが軸になっています。使えるかどうか迷ったときは、配布窓口で相談してください。

ヘルプマークの入手方法

令和7年度に、7月20日が「ヘルプマークの日」と定められました。JIS規格に登録され全国共通のマークとなった日にちなむ、と都のページは説明しています。なお、都のページには「ヘルプマーク本体をフリマサイト等で売買することは御遠慮ください」「ヘルプマークに関する寄付活動等には一切関与しておりません」という注意書きもあります。

カームダウン・クールダウン——落ち着ける場所を示す図記号があります

駅や空港などで、「カームダウン・クールダウン(Calm down, cool down)」という案内用の図記号(ピクトグラム)を見かけることがあります。これは思いつきの表示ではなく、JIS Z8210「案内用図記号」に定められた図記号で、国土交通省のバリアフリー整備ガイドライン(誘導案内設備編)にも、案内用図記号の一覧(別表2-2-2)として掲載されています。

この図記号が掲げられている場所には、人の少ない、落ち着くための小さなスペースが用意されているということです。出かける前に、行き先の公式ページや構内図でこの記号を探しておくと、その日の逃げ道が一つ増えます。

「センサリールーム」について、確認できたこと・できなかったこと
感覚に配慮した部屋を「センサリールーム」と呼ぶ言い方が広がっていますが、この語について、国の基準やガイドラインに置かれた定義を見つけることはできませんでした。
施設ごとの取り組みとして設けられているものですので、行き先にあるかどうかは、その施設の公式ページで名称と場所を確かめてください。一方、上のカームダウン・クールダウンの図記号はJISに定められたもので、国のガイドラインにも載っています。探すなら、まずこの記号です。

まわりの目が気になるとき——説明する義務はありません

泣いたら。走ったら。大きな声が出たら。外出をためらう理由として、いちばん重いのはここかもしれません。そして、この不安には、慰めではなく事実で答えたいと思います。

第一に——説明する義務は、ありません

まわりの人に、お子さんの状態を説明しなければならないという決まりは、どこにもありません。診断名を言う必要も、手帳を見せる必要も、「すみません、この子は……」と前置きする必要もありません。黙って、その場を離れてよい。それが第一です。

第二に——伝えたいときは、法律が味方をします

それでも伝えたいときのために、仕組みがあります。障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)です。

ここが要点です
法律が事業者に求めているのは、「社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明」があったときの対応です。
求められているのは診断名でも手帳の提示でもありません。「いま何に困っていて、何をしてほしいか」が伝われば足ります。
そして基本方針は、そのやりとりを「建設的対話」と呼んでいます。こちらが一方的に許しを乞う場面ではない、ということです。

伝えたいときの、短い言い方

長く話す必要はありません。次の型で足ります。「困っていること」+「してほしいこと」の二つだけです。

それでも、視線が刺さった日は

実際に冷たい目を向けられる日はあります。そのときに覚えておいていただきたいのは、その視線は、あなたの育て方への評価ではないということです。法律の言葉を借りれば、それは「観念」という社会の側の障壁で、取り除かれるべきものとして名指しされている側です。その場では、説明も反論もせず、離れてかまいません。

外出を支えるしくみ——移動支援と日中一時支援(東京23区)

外出を家族だけで抱えなくてよい仕組みが、法律に置かれています。移動支援事業です。

根拠は障害者総合支援法にあります

だから、区ごとに違います
移動支援は市町村(東京23区では区)が行う地域生活支援事業です。介護給付のように全国一律の基準があるのではなく、対象者・支給量・自己負担・使える用途が、区ごとに定められています
同じ東京都内でも、隣の区と中身が違います。お住まいの区の案内を、必ずご自身で開いてください。

4つの区を開いてみると、こう違います

その区の公式ページ・案内に書かれている内容
新宿区対象=重度視覚障害者(児)・知的障害者(児)・全身性障害者(児)・精神障害者。
利用できないもの=通院の介助/保育園、幼稚園、こども園及び児童対象の習い事までの送迎(「障害の有無にかかわらず、保護者の養育、育児の範囲と判断されるため認めていません」)/学校教育の介助 ほか。
条件つきで認められるもの=通勤・通学・通所(児童発達支援、放課後等デイサービス等の送迎を含む)の送迎。「慣れるまでの一定期間、介護者(保護者)の疾病や就労及び本人の状況を含む家庭状況等の事由に応じて」。
費用=生活保護世帯・区民税非課税世帯は自己負担なし。課税世帯は10%だが、区が令和9年3月31日まで3%に軽減
申請から支給決定まで約2週間〜1か月。利用予定があるなら早めに申請を、と案内されています
世田谷区対象=全身性障害者(児)・視覚障害者(児)・知的障害者(児)・精神障害者(児)・高次脳機能障害者(児)
支給量基準=児童は40時間(全身性障害者93時間、視覚・知的・精神50時間)。
未就学の場合=通学・療育の場への通所以外の目的では、「障害を理由に自宅で過ごすことができないため、やむを得ず必要となる外出であり、介護者が病気等(就労は除く)により付き添えない場合に限る」「余暇活動的な社会参加のためには利用できません」。
小学生の場合=通学・通所以外の目的では、介護者が病気等の理由で付き添えない場合であって、5支所保健福祉課での協議にて承認された場合に限る
豊島区対象=屋外での移動に著しい制限のある、視覚障害者、身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者等、障害児。通学に関する利用は小学生・中学生・高等学校・特別支援学校の生徒。
月50時間を上限とする個別支援型(マンツーマン)。通勤等の経済的活動にかかる外出、通年かつ長期にわたる外出(通所先の送迎を含む)は対象外。
費用=生活保護世帯は無料。その他は月20時間まで無料、20時間超50時間までは3%。
令和8年度から対象者の要件を見直し=障害児について「未就学児のうち、保護者同伴であっても移動に困難が伴う医療的ケア児を新たに対象に追加」
江戸川区対象=屋外での活動に著しい制限のある全身性障害者(障害児)、精神障害者及び知的障害者(障害児)。重度訪問介護及び行動援護の対象者は除く。視覚障害者(障害児)は障害福祉サービスの同行援護の対象。
内容=「円滑な外出ができるよう、支援します。サービスの利用にあたっては、支給申請が必要です」。
申請では番号確認と本人確認が行われる、と案内されています

四つ並べると、違いがはっきりします。対象に挙がる障害の種類が違い、支給量の上限が違い、自己負担の考え方が違い、未就学児が使えるかどうかも違います。「移動支援があると聞いた」だけで動くと行き違いが起きるのは、このためです。

先にお伝えしておきたいこと
四つの区とも、対象は「知的障害者(児)」「精神障害者」といった書き方です。発達に関する相談をしている段階で、まだ手帳がない場合、移動支援の対象にならないことがあります。
また、未就学のお子さんについては、余暇の外出には使えないと明示している区(世田谷区)もあります。
それでも窓口に相談する価値はあります。区の判断で認められる用途(通所の送迎など)が受給者証に書き込まれる仕組みがあり、家庭の状況によって扱いが変わるためです。

申請から利用までの流れ(新宿区の案内より)

  1. 利用申請——サービスが必要な場合は、区に申請します
  2. 聴き取り調査——区の職員により、生活や障害の状況についての聴き取りが行われます(勘案事項調査及びサービス利用意向の聴取)
  3. 支給決定——聴き取りの内容をもとに、サービスの支給量などが決まります
  4. 地域生活支援サービス受給者証の交付
  5. 利用契約——事業所を選び、契約を結びます。受給者証を事業所に提示します
  6. サービス利用

新宿区の案内には「申請から支給決定まで、約2週間から1か月かかります」と書かれています。夏休みや年末年始など、使いたい時期が決まっているなら、その分だけ前に動いておく必要があります。

日中一時支援——「今日は外に出ない」を選べるようにする仕組み

移動支援が「外に出るための支援」だとすれば、日中一時支援は「外に出ずに済ませるための支援」です。豊島区の公式ページは、次のように説明しています。

注目していただきたいのは、理由として「休養」が並んでいることです。病気や出産だけでなく、休むために使ってよいと、区の公式ページに書かれています。外出を減らして家に閉じこもるのではなく、大人が休める日を作って、出られる日の体力を残す——そのための仕組みです。

日中一時支援も移動支援と同じく地域生活支援事業ですので、利用時間の上限も自己負担も区ごとに違います。ここに挙げたのは豊島区の内容です。

うまくいかなかった日——受け止め方と、次に活きる記録

途中で帰った日、玄関から出られなかった日、店の前で引き返した日。そういう日は必ずあります。そして、その日の受け止め方が、次の外出を決めます。

「失敗した日」ではなく「情報が取れた日」として置き直す

うまくいかなかった日には、必ず何がきっかけだったかという情報が含まれています。その情報は、うまくいった日からは取れません。だから、記録するのはうまくいかなかった日のほうが役に立ちます。

記録するのは、四つだけ

記録する項目書き方の例
いつ・どこで日付と時刻、場所。
時刻が入っていると、「午前は大丈夫だが午後は難しい」といった傾向が見えてきます
その直前に何があったか何かを待っていた/急に大きな音がした/予定が変わった/人が近づいてきた/前の予定が長引いた/朝あまり食べていない など
どんな様子だったか耳をふさいだ/走り出した/座り込んだ/声が大きくなった/黙り込んだ。
評価の言葉ではなく、見えたことをそのまま書きます
どうしたら戻れたか外に出たら落ち着いた/抱っこで戻れた/飲み物を飲んだら戻れた/その日は戻れず帰った。ここがいちばん大事な欄です

四つ書くのに一分もかかりません。紙でも、携帯のメモでもかまいません。三回か四回たまると、共通しているものが浮かび上がってきます。音なのか、待ち時間なのか、予定の変更なのか、空腹なのか。そこが分かれば、次の外出で先に手を打てます。

この記録は、相談の場でそのまま使えます
発達相談、児童発達支援や放課後等デイサービスの面談、就学相談。どの場面でも、「いつ・どこで・何の前後に・どうしたら戻れたか」が書かれた記録は、言葉で説明するよりずっと早く伝わります。
「外出が苦手です」と言うより、「土曜の午後のスーパーで、レジの列に並んで五分ほどで難しくなります。外に出ると三分ほどで戻れます」と言えるほうが、相手も具体的に動けます。

国のガイドラインも、家族が休むことを支援の内容に挙げています

こども家庭庁の「児童発達支援ガイドライン」(令和6年7月)は、事業所が行う「家族支援」の支援内容として、「家族のレスパイトの時間の確保や就労等による預かりニーズに対応するための延長支援」「保護者同士の交流の機会の提供」などを挙げています。家族が休むことは、支援の外側ではなく内側に置かれているということです。

同じガイドラインは「移行支援」についても、「こどもが地域で暮らす他のこどもと繋がりながら日常生活を送ることができるように支援を提供する」こと、支援内容の例として「地域の保育所等や子育て支援サークル、地域住民との交流」を挙げています。外に出ることは、家庭が個人的にがんばる話ではなく、支援の一部として位置づけられている——そう読める書き方です。

きょうだいがいる家庭での動き方

きょうだいがいると、外出の設計はもう一段むずかしくなります。「上の子が行きたがっている場所に、下の子が入れない」「途中で帰ることになって、上の子の予定がなくなる」。こうしたことが重なると、きょうだいの側にも、静かに我慢がたまっていきます

国のガイドラインは、きょうだいを支援の対象として名指ししています

こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、「家族支援」について「家族(きょうだいを含む。)と日頃から信頼関係を構築し」と書き、支援内容に「きょうだい同士の交流の機会の提供やきょうだいに対する相談援助」を挙げています。さらに、こうも書かれています。

ガイドラインの言葉
「『家族支援』は、対象を保護者に限った支援ではなく、きょうだいや祖父母等への支援も含まれる。特にきょうだいは、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくないため、例えば、きょうだい向けのイベントを開催する等の対応を行っていくことも必要である」

きょうだいのしんどさは、家庭の内輪の話ではありません。支援機関に相談してよいこととして、国の文書に書かれています。

外出の設計を、少し変えてみる

きょうだいへの支援については、関連記事「きょうだい児支援」で国のガイドラインが挙げる支援内容をより詳しく整理しています。

最後に

外出は、行けたか行けなかったかの二択ではありません。どこへ、いつ、どのくらい、どう帰るかを選べる幅があります。その幅を作るのが、時間帯の選び方であり、逃げ道の用意であり、手帳による割引であり、ヘルプマークであり、移動支援や日中一時支援です。

そして、繰り返しになりますが——出ない日があって、かまいません。出ない日を選べることも、幅のうちです。狭くなっていくのを止めたいのであって、毎日出かけることが目的ではありません。

出典

※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

外出のとき、まわりの人に子どものことを説明しなければいけませんか?
いいえ、説明する義務はありません。診断名を言う必要も、手帳を見せる必要もありません。黙ってその場を離れてかまいません。
一方で、伝えたいときのためには仕組みがあります。障害者差別解消法は、事業者に対し「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは……必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めています(第8条第2項)。求められているのは診断名ではなく、「何に困っていて、何をしてほしいか」です。
手帳がなくても、合理的配慮を求めることはできますか?
はい。内閣府の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」は、「法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られない」と明記しています。
ただし、運賃の割引や移動支援などの制度は、手帳を前提としているものが多い点は別の話です。「配慮を求めること」と「制度を使うこと」は、条件が違います。
ヘルプマークは、発達に特性のある子でも受け取れますか?
東京都福祉局のページの対象者の欄には「義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としている方」と書かれており、「発達障害」という語は書かれていません。列挙で閉じた書き方ではなく、「外見からは分からなくても援助や配慮を必要としている」という状態が軸になっています。使えるかどうか迷われる場合は、配布窓口でご相談ください。
受け取りは口頭による申し出で足り、代理人(家族や支援者など)でも受け取れます。お一人につき一つまで、都内在住の方が対象です。
移動支援は、未就学の子どもでも使えますか?
区によって違います。世田谷区は、未就学の方が通学・療育の場への通所以外の目的で利用する場合について「障害を理由に自宅で過ごすことができないため、やむを得ず必要となる外出であり、介護者が病気等(就労は除く)により付き添えない場合に限ります(余暇活動的な社会参加のためには利用できません)」と書いています。豊島区は令和8年度から「未就学児のうち、保護者同伴であっても移動に困難が伴う医療的ケア児」を新たに対象に加えています。
お住まいの区の案内を開いてご確認ください。
移動支援は、申し込んでからどのくらいで使えるようになりますか?
新宿区の案内には「申請から支給決定まで、約2週間から1か月かかります。サービスを利用する予定がある方は、支給決定までの期間を見込んだうえで、早めに申請してください」と書かれています。
その後、事業所を選んで契約する手順が続きますので、使いたい時期が決まっているなら、さらに前もって動いておく必要があります。
電車で途中で降りると、運賃はどうなりますか?
降りる区間や乗車券の種類によって扱いが違いますので、駅の窓口でお確かめください。
そのうえで申し上げると、金額より先に決めておきたいのは「つらくなったら次の駅で降りる」を、乗る前に親子で共有しておくことです。降りられると分かっていると、乗っている時間そのものが楽になります。
外出を減らしていくのは、よくないことでしょうか?
「出ない日」を選ぶことと、「出られる場所が減っていく」ことは別のことです。その日の体調や前日の出来事を見て今日は出ないと決めるのは、判断であって後退ではありません。
豊島区の日中一時支援は、利用の理由として「疾病・出産・休養等」を挙げています。休むことは、公式に想定されている使い方です。大人が休める日を作って、出られる日の体力を残す——それも外出の設計のうちです。
うまくいかなかった日の記録は、どこで役に立ちますか?
発達相談、児童発達支援や放課後等デイサービスの面談、就学相談など、どの場面でも使えます。「いつ・どこで/その直前に何があったか/どんな様子だったか/どうしたら戻れたか」の四つが書いてあると、言葉で説明するより早く、具体的に伝わります。
とくに「どうしたら戻れたか」の欄は、次の外出でも、支援の場でもそのまま使える情報になります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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