「事業所に通わせたいが、外出そのものが難しい」——そうした子どものために、支援者が家庭を訪ねる仕組みがあります。まず、条文そのものを確かめます。
条文を分解すると、要素は三つです。①誰が対象か(重度の障害の状態などにあり、外出が著しく困難な子)、②どこで行うか(事業所ではなく、その子の居宅)、③何をするか(基本的な動作・知識技能の習得と、生活能力の向上のための支援)。この記事では、この三つを順番に、条文にあたって確かめていきます。
※この記事で「条文」という場合、まず児童福祉法(法律)を指し、それでも書かれていない部分は「内閣府令で定める」という委任の先——児童福祉法施行規則——を確かめます。条文に書かれていないことは、推測で埋めず「条文にはありません」と書きます。
第6条の2の2第4項をもう一度読むと、対象になる子の要件は、二段構えになっています。
| 要件 | 条文の文言(第6条の2の2第4項) |
|---|---|
| ①状態の要件 | 重度の障害の状態その他これに準ずるものとして内閣府令で定める状態にあること |
| ②外出の要件 | 児童発達支援又は放課後等デイサービスを受けるために外出することが著しく困難であること |
この①と②は、条文の文言上「であつて」でつながれており、両方に当てはまることが前提になっています。①の「重度の障害の状態その他これに準ずるもの」が具体的に何を指すのかは、次の章で確かめます。
条文は「重度の障害の状態その他これに準ずるものとして内閣府令で定める状態」と、具体的な中身を内閣府令(児童福祉法施行規則)に委ねています。この委任の先を確かめました。
つまり、条文と省令を合わせて読むと、①の要件は「人工呼吸器の装着など、日常生活を営むために医療を要する状態」か、「重い疾病のため感染症にかかるおそれがある状態」の、いずれかに当てはまることを指しています。省令が列挙しているのは、この二つだけです。
一方で、こども家庭庁が示している報酬改定に関するQ&Aには、この二つより広い場面を扱った問答があります。
省令が列挙する二つの状態は、人工呼吸器の装着など医療的な状態が中心です。これに対してこども家庭庁のQ&Aは、精神障害や行動障害によって外出や集団生活が著しく困難な場合も「これに準ずるもの」として対象になり得る、という考え方を示しています。ただし、これは法律の条文そのものではなく、こども家庭庁が実務上の解釈として示した回答です。個別のケースにその子が当てはまるかどうかは、最終的に市区町村が判断します。
※このQ&Aは、居宅訪問型児童発達支援を行うにあたって障害児相談支援事業所による相談支援を求めており、できる限り段階的に通所支援へつなげていくこと、集団生活への移行にあたっては医師や児童相談所の意見書等の客観的な評価も参考にすることが望ましい、とも述べています。
次に、実際にどんな支援を受けられるのかを確かめます。第6条の2の2第4項の後半部分がこれにあたります。
| 要素 | 条文の文言 |
|---|---|
| 行われる場所 | 当該障害児の居宅を訪問し |
| 支援の内容① | 日常生活における基本的な動作及び知識技能の習得 |
| 支援の内容② | 生活能力の向上のために必要な支援その他の内閣府令で定める便宜 |
「その他の内閣府令で定める便宜」の中身も、念のため施行規則で確かめました。
この施行規則は、法律本文とほぼ同じ言葉を繰り返しているだけで、新しく付け加えられている中身はありません。つまり、支援内容として条文が定めているのは、基本的な動作・知識技能の習得と生活能力の向上のために必要な支援の二本柱で、それ以上の具体的な項目(例えば入浴・排せつの介助など)は、この条文には書かれていません。
同じ第6条の2の2には、児童発達支援・放課後等デイサービスの定義も並んでいます。並べて読むと、条文の作り方そのものが対照的です。
| 比べる点 | 通所の支援と、居宅訪問型児童発達支援の違い |
|---|---|
| 行われる場所 | 児童発達支援・放課後等デイサービス:児童発達支援センター等の施設に「通わせ」(第2項・第3項) 居宅訪問型児童発達支援:障害児の「居宅を訪問し」(第4項) |
| 対象となる子 | 通所:施設に通うこと自体は前提になっている 居宅訪問型:通所支援を受けるために外出することが著しく困難な子(省令が定める二つの状態など) |
| 申し込みの窓口 | 通所・居宅訪問型のいずれも共通:保護者の居住地の市町村が通所給付決定を行う(第21条の5の5)。受給者証が交付される点も同じ |
つまり、居宅訪問型児童発達支援は、通所支援とまったく別の制度ではなく、「障害児通所支援」という同じ枠組みの中で、支援が行われる場所と、対象となる子の状態だけが違う制度として設計されています(第6条の2の2第1項=障害児通所支援には児童発達支援・放課後等デイサービス・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援が含まれる)。
家庭を訪問するのは、誰でもよいわけではありません。運営基準(児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準)第五章が、配置すべき人と資格を定めています。
| 職種 | 配置基準(第71条の8) |
|---|---|
| 訪問支援員 | 事業規模に応じて訪問支援を行うために必要な数(第1項第1号)。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員・保育士のいずれかの資格を取得後、又は児童指導員・心理担当職員として配置された日以後、障害児の介護や支援に関する業務等に3年以上従事した者(第2項) |
| 児童発達支援管理責任者 | 1以上(第1項第2号)。うち1人以上は、専らその指定居宅訪問型児童発達支援事業所の職務に従事する者でなければならない(第3項) |
※訪問支援員になれる資格の組み合わせは、条文上かなり細かく定められています。ここでは代表的な資格のみを挙げました。正確な要件は、契約する事業所に直接ご確認ください。
| 費用の項目 | 仕組み(運営基準 第71条の12) |
|---|---|
| 通所利用者負担額 | 指定居宅訪問型児童発達支援を提供したとき、事業者は通所給付決定保護者から通所利用者負担額(法定代理受領を行わない場合は指定通所支援費用基準額)の支払を受けるものとする(第1項・第2項) |
| 訪問のための交通費 | 事業所が通常の事業の実施地域以外に訪問して支援を行う場合は、それに要した交通費の実費の支払を受けることができる(第3項)。ただし、あらかじめ額を説明し、保護者の同意を得なければならない(第5項) |
通所利用者負担額のしくみ自体は、通所の児童発達支援・放課後等デイサービスと共通で、世帯の所得に応じた月額上限額があり、上限までは1割負担という仕組みです(2026年9月時点)。居宅訪問型に特有なのは、事業者側が訪問するための交通費を、保護者が実費で負担する場合があるという点です。
※利用料・無償化の制度は変わることがあります。金額の詳細は、契約する事業所と、住んでいる市区町村の窓口に、その時点の情報としてご確認ください。
受給者証そのもののしくみや、通所給付決定が何を決めているかという一般的な説明は、受給者証とは?——法律が定める「通所受給者証」のしくみにまとめています。あわせてご覧ください。
この記事は「居宅訪問型児童発達支援とは何か」に絞っています。次のことは、別の記事で扱っています。
※確かめられなかったこと——訪問支援員になれる資格の細かな組み合わせ、個々の医療的ケアの具体的な内容までは、この記事では扱いきれていません。また、実際の申し込みの流れや必要書類は、市区町村によって違います。お住まいの窓口でお確かめください。
※上記の出典は2026年9月8日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)では、受給者証の申請や利用料のしくみについても、見学・ご相談の際にご案内しています。手続きが不安な段階からお声がけいただけます。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。