結論から——(自立支援)協議会は、関係機関が地域の課題を持ち寄る話し合いの場です
「自立支援協議会」「地域自立支援協議会」——お住まいの市区町村によって呼び方は違いますが、見学や相談の場でこの言葉が出てくることがあります。まず、根拠となる条文そのものを確かめます。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第89条の3第1項
地方公共団体は、単独で又は共同して、障害者等への支援の体制の整備を図るため、関係機関、関係団体並びに
障害者等及びその家族並びに障害者等の福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者(以下この条において「関係機関等」という。)により構成される協議会(以下この条において単に「協議会」という。)を
置くように努めなければならない。
条文が定めているのは、市町村や都道府県が「関係機関等」を集めた協議会を置くように努めるということです。「必ず置かなければならない」という義務(義務規定)ではなく、置くように努力する義務(努力義務)という書き方になっています。
※条文上の正式名称は、単に「協議会」です。「自立支援協議会」「地域自立支援協議会」という呼び方は、この条文には出てきません。名称については本文の後半で確かめます。
努力義務でも、ほとんどの市区町村に置かれています——第89条の3の全体構成
第89条の3は、第1項から第6項まであります。全体を見ると、協議会という仕組みの骨組みがわかります。
| 項 | 定めている内容 |
| 第1項 | 地方公共団体は、関係機関等で構成される協議会を置くように努めなければならない(努力義務) |
| 第2項 | 協議会は、情報共有・連携の緊密化・体制整備の協議を行うものとする |
| 第3項 | 協議会は、関係機関等に資料提供・意見表明などの協力を求めることができる |
| 第4項 | 関係機関等は、求めがあれば協力するよう努める(こちらも努力義務) |
| 第5項 | 協議会の事務に従事する者・していた者は、秘密を漏らしてはならない(守秘義務) |
| 第6項 | 組織・運営に関し必要な事項は、協議会が定める(国が細部まで決めていない) |
厚生労働省「(自立支援)協議会について」
地域の関係者が集まり、地域における課題を共有し、その課題を踏まえて、地域のサービス基盤の整備を進めていくこと及び関係機関等の連携の緊密化を図る役割。市町村協議会と都道府県協議会の2つのレベルがある。
第89条の3は「地方公共団体」に努力義務を課しているため、市町村の協議会と都道府県の協議会の両方が根拠を持ちます。義務ではなく努力義務ですが、厚生労働省はガイドラインや事例集を整備しており、実際には多くの市区町村・都道府県に協議会が置かれています。ただし「全市区町村に必ずある」と条文が保証しているわけではないため、お住まいの市区町村にあるかどうかは、窓口で確かめる必要があります。
協議会は何をする場か——地域の課題を持ち寄り、足りない支援を洗い出します
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第89条の3第2項
協議会は、関係機関等が相互の連絡を図ることにより、
地域における障害者等への適切な支援に関する情報及び支援体制に関する課題についての情報を共有し、関係機関等の連携の緊密化を図るとともに、
地域の実情に応じた体制の整備について協議を行うものとする。
条文を分けて読むと、協議会がしていることは大きく2つです。ひとつは、「この地域には、こういう子が使える通所支援が少ない」「相談支援専門員が足りない」といった地域の課題についての情報共有。もうひとつは、それを踏まえた体制整備の協議——新しい事業所の誘致や、既存の資源の使い方を話し合うことです。
同法 第89条の3第3項・第4項
協議会は、前項の規定による情報の共有及び協議を行うために必要があると認めるときは、関係機関等に対し、
資料又は情報の提供、意見の表明その他必要な協力を求めることができる。関係機関等は、前項の規定による求めがあった場合には、
これに協力するよう努めるものとする。
※協議会が求めることができるのは「関係機関等」への協力であり、事業所や保護者個人に対して何かを強制する規定ではありません。個別の家庭の事案そのものを協議会が決定する場ではない、という点も条文からは読み取れます。
構成員に「障害者等及びその家族」と書かれています——保護者・当事者が委員に入ることがあります
協議会の構成員(第1項が「関係機関等」と呼んでいる範囲)を、もう一度条文で確かめます。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第89条の3第1項(構成員部分)
関係機関、関係団体並びに
障害者等及びその家族並びに障害者等の福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者
条文には、行政・事業所・専門職に混じって、「障害者等及びその家族」がはっきりと構成員の一つとして書かれています。つまり、保護者や当事者本人が、委員として協議会に加わることは、条文の上でも想定されている、ということです。
宜野湾市地域自立支援協議会設置要綱 第4条(組織)
協議会は、委員20名以内で組織する。委員は、次に掲げる者のうちから市長が委嘱又は任命する。(一部抜粋)学識経験者等/相談支援事業者/障がい福祉サービス事業者/
障がい当事者及び障がい者団体の関係者/福祉団体関係者/教育関係者/保健・医療関係者/雇用及び就労に関する機関の関係者/民生児童委員/市民団体等/行政機関の職員
※実際に誰が委員になるか、何名になるかは、条文ではなく、この例のように市区町村が定める設置要綱で決まります。「必ず保護者代表の枠がある」と条文が保証しているわけではなく、設置要綱の書き方は市区町村ごとに違います。委員になりたい場合や、保護者委員の枠があるかを知りたい場合は、お住まいの市区町村の障害福祉の担当課にお尋ねください。
こども部会・療育部会が置かれることがあります——ただし名称は条文にありません
協議会には、全体の会議のほかに、テーマごとに分かれた「専門部会」が置かれることがあります。子どもの支援を専門に話し合う「こども部会」「療育部会」「保育・教育・療育部会」といった名称を見かけることがありますが、これらの名称が条文に書かれているわけではありません。
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第89条の3第6項
前各項に定めるもののほか、
協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
第6項は、専門部会を置くかどうか、何という名前にするかを、法律ではなく協議会自身が定めると委任しています。「こども部会」「療育部会」という言葉は、条文にはありません。これは各地の協議会が、地域の実情に合わせて自分たちで決めている名称です。
宜野湾市地域自立支援協議会設置要綱 第9条(専門部会)
協議会は、協議会の下に
専門部会を置くことができる。専門部会の設置は、協議会において協議し決める。専門部会には、部会長を置き、部会長は、協議会委員の中から会長が指名する。
実際の運営例(活性化事例集で紹介されている構成図)では、権利擁護部会・住まい・暮らし部会・就労部会と並んで、「保育・教育・療育部会」という子ども関連のテーマを扱う専門部会が設けられている例があります。ただし、これは第6項に基づいて協議会自身が決めた部会名であり、全国共通の名称ではありません。
※「こども部会」があるかどうか、名前が「療育部会」なのか「保育・教育・療育部会」なのかは、市区町村(またはその協議会)によって違います。無いところもあります。お住まいの市区町村の協議会に専門部会があるかどうかは、窓口か協議会の公開資料でご確認ください。
名称も、市区町村によって違います——「自立支援協議会」「地域自立支援協議会」など
条文上の正式名称は、単に「協議会」です。しかし、実際に各市区町村がつけている名称は、「地域自立支援協議会」だったり、「地域」を付けずに「障害者自立支援協議会」だったりと、さまざまです。
| 自治体 | 協議会の名称(設置要綱・公式ページ掲載) |
| 沖縄県宜野湾市 | 宜野湾市地域自立支援協議会(要綱第2条=法第89条の3第1項に基づき設置) |
| 千葉県八千代市 | 八千代市障害者自立支援協議会(「地域」を含まない名称) |
同じ第89条の3を根拠にしながら、名称に「地域」が入るかどうかだけでも違いがあります。本記事では、これ以上「〇〇市はこう呼ぶ」と決め打ちすることはしません。市区町村によって名前が違います。お住まいの町の名称は、市区町村の公式サイトで「(自治体名) 自立支援協議会」と検索するか、窓口でお確かめください。
※法律・法令の中で「地域自立支援協議会」という表記そのものを探しましたが、第89条の3の条文には見当たりませんでした。「地域」という語は、各自治体が名称に加えている部分です。
議事録を公開している自治体があります——自分の町の支援の実情が読めます
協議会で共有される「地域の課題」は、実はその市区町村の障害児支援の実情そのものです。議事録を公開している自治体であれば、保護者が窓口で聞く前に、地域にどんな課題があるのかを自分で読むことができます。
千葉県八千代市「八千代市障害者自立支援協議会について」
令和5年度から令和8年度までの各回の会議について、
議事録を「公開」として一覧に掲載している。委員は23名で構成され、障害者の相談・支援に関係する機関の代表者等が委員となる。
新潟県佐渡市「佐渡市地域自立支援協議会 議事録」
令和5年度第2回の議事録が、日時・場所・出席者とともに、PDFで公式サイトに掲載されている。
この2つの例が示しているのは、「議事録を公開している自治体がある」ということです。すべての市区町村が同じように公開しているとは限りません。お住まいの市区町村の公式サイトで、「(自治体名) 自立支援協議会 議事録」と検索してみることをお勧めします。非公開の自治体では、窓口に直接尋ねる必要があります。
※議事録の公開・非公開、公開の範囲(要約か、発言者名入りかなど)は、条文で決まっているものではなく、各市区町村の情報公開に関する取り扱いによります。
障害児福祉計画との関係——計画を決める前に、協議会の意見を聴くよう努めます
協議会と並んでよく出てくる制度に、市町村・都道府県が定める「障害児福祉計画」があります(障害児福祉計画そのものの仕組みは、別記事で詳しく扱います)。この2つがどう関係するのかを、児童福祉法の条文で確かめます。
児童福祉法 第33条の20第9項(市町村障害児福祉計画)
市町村は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律
第89条の3第1項に規定する協議会を設置したときは、市町村障害児福祉計画を定め、又は変更しようとする場合において、あらかじめ、
当該協議会の意見を聴くよう努めなければならない。
児童福祉法 第33条の22第7項(都道府県障害児福祉計画)
都道府県は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第89条の3第1項に規定する協議会を設置したときは、都道府県障害児福祉計画を定め、又は変更しようとする場合において、あらかじめ、当該協議会の意見を聴くよう努めなければならない。
つまり、市町村や都道府県が障害児福祉計画をつくったり見直したりするとき、協議会を設置していれば、あらかじめその協議会の意見を聴くよう努めるという条文があります。協議会で共有された「この地域には放課後等デイサービスが足りない」といった課題が、計画づくりの材料の一つになる仕組みです。
※ここも「努めなければならない」という努力義務です。「必ず反映される」と条文が保証しているわけではありません。また、この規定が働くのは「協議会を設置したとき」に限られます——第1項自体が努力義務であるため、協議会を設置していない市区町村では、この意見聴取の規定も働く前提を欠くことになります。
協議会の事務にかかわる人には、秘密を守る義務があります(第5項)
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 第89条の3第5項
協議会の事務に従事する者又は従事していた者は、
正当な理由なしに、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
協議会では、個別の困難事例(もちろん特定の子どもや家庭がわかる形で)が話題になることもあります。第5項は、協議会の運営にかかわる人(事務局や委員を含む)に対して、そこで知った秘密を漏らしてはならないという義務を課しています。保護者が委員として加わる場合も、他の家庭の情報を含む話し合いの場であることは変わりません。
※違反した場合の罰則(罰金など)が条文にあるかどうかは、第89条の3自体には規定がありません。第5項は義務を定める規定であり、罰則は別の条文(罰則章)を確かめる必要がありますが、本記事ではそこまでは扱っていません。
今夜〜今週、確かめられること/この記事で書かないこと
- お住まいの市区町村名+「自立支援協議会」で検索する——名称が「地域自立支援協議会」か「障害者自立支援協議会」かは、市区町村によって違います。
- 議事録や会議資料が公開されているか確認する——公開されていれば、地域の課題を先に読むことができます。
- こども部会・療育部会にあたる専門部会があるか確認する——無い市区町村もあります。
- 委員に保護者・当事者の枠があるか、窓口か公式サイトで確認する——設置要綱に書かれています。
- 相談支援専門員に、協議会で扱われている地域の課題を聞いてみる——利用計画の相談と合わせて聞ける場合があります。
この記事は、(自立支援)協議会という仕組みそのものに絞っています。次のことは、この記事の範囲外です。
- 障害児福祉計画そのものの仕組み・記載事項——別記事で扱います。
- 個々の市区町村の協議会の具体的な議題・結論——自治体ごとに違うため、本記事では扱いません。
- 相談支援専門員が作る「障害児支援利用計画」との違い——障害児支援利用計画とは?で扱っています。
- 事業所内の「個別支援計画」との違い——個別支援計画は、どこを見ればよいのかで扱っています。
※確かめられなかったこと——全国の市区町村ごとの協議会の設置状況、専門部会の種類、議事録の公開範囲を横断的にまとめた国の一覧は見当たりませんでした。推測で埋めず、ここに「確認できなかった」と書きます。
出典
※上記の出典は2026年9月8日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
(自立支援)協議会とは、何をする場ですか?
障害者総合支援法第89条の3にもとづき、市町村や都道府県が置くように努める話し合いの場です。関係機関・関係団体・障害者等及びその家族などが集まり、地域の支援の課題を共有し、体制整備について協議します(第89条の3第1項・第2項)。
協議会の設置は義務ですか?
「置くように努めなければならない」という努力義務です(第89条の3第1項)。必ず設置しなければならないという義務規定ではありません。実際には多くの市区町村・都道府県に置かれていますが、条文が全市区町村への設置を保証しているわけではないため、お住まいの市区町村にあるかは窓口でご確認ください。
保護者や当事者本人が、協議会の委員になることはありますか?
あります。第89条の3第1項は、構成員(関係機関等)の一つとして「障害者等及びその家族」を明記しています。実際に誰が委員になるかは市区町村が定める設置要綱によります(例:宜野湾市の設置要綱は「障がい当事者及び障がい者団体の関係者」を委員の一つに挙げています)。
こども部会・療育部会とは何ですか?
協議会の下に置かれることがある、テーマ別の専門部会の一種です。ただし「こども部会」「療育部会」という名称そのものは条文にはありません。第89条の3第6項が「協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める」としているため、部会を置くかどうか、何という名前にするかは各地の協議会が独自に決めています。置いていない市区町村もあります。
名前が「地域自立支援協議会」だったり「障害者自立支援協議会」だったりするのはなぜですか?
条文上の正式名称は、単に「協議会」だからです。「地域」を付けるかどうかを含め、具体的な名称は市区町村が決めています。市区町村によって名前が違います。お住まいの町の名称は、公式サイトの検索か窓口でご確認ください。
協議会の議事録は、誰でも見られますか?
自治体によります。八千代市や佐渡市のように、議事録を公式サイトで公開している市区町村がある一方、すべての市区町村が同じように公開しているとは確認できませんでした。「(自治体名) 自立支援協議会 議事録」で検索するか、窓口にお尋ねください。
協議会は、障害児福祉計画とどう関係しますか?
児童福祉法第33条の20第9項・第33条の22第7項は、市町村・都道府県が協議会を設置している場合、障害児福祉計画を定めたり変更したりする際に、あらかじめその協議会の意見を聴くよう努めなければならないと定めています。協議会で共有された地域の課題が、計画づくりの材料になる仕組みです。
うちの子の個別の相談を、協議会に直接持ち込むことはできますか?
協議会は地域全体の課題を扱う場であり、個別の家庭の相談を直接受け付ける窓口として条文に規定されているわけではありません。個別の相談は、まず契約している相談支援専門員や、お住まいの市区町村の障害福祉の担当課にご相談ください。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。
制度のこと、見学のときに一緒に確認できます
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)では、受給者証の申請や利用料のしくみについても、見学・ご相談の際にご案内しています。手続きが不安な段階からお声がけいただけます。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。