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帰省・旅行の前に決めておけること——長い移動・泊まり・祖父母への伝え方

最終更新:2026年9月7日
前回の帰省が大変だったから、今回は準備して行きたい。そう思って検索されたのだと思います。
帰省や旅行は、日帰りの外出とは別のものです。移動が長く、寝る場所が変わり、久しぶりに会う人がいて、いつもの時刻が全部ずれる。四つが同時に起きます。どれか一つなら乗り切れる子が、四つ重なると崩れる——それは当たり前のことで、お子さんの問題でも、ご家庭の準備不足でもありません。
この記事では、出発の二週間前から帰宅後の数日までを日付で区切って、交通機関の予約のときに頼めること、宿に前もって伝えること、祖父母や親戚への伝え方、帰省先での寝る場所と食事の決めごとを、国土交通省の接遇ガイドライン・旅館業法・障害者差別解消法・こども家庭庁のガイドラインを開きながら並べます。
電車や買い物、外食といった日帰りの外出については、関連記事「子どもとの外出が不安」に詳しく書きましたので、この記事では繰り返しません。

日帰りの外出と、何が違うのか——四つの「長さ」が同時に来る

電車に乗れる子が、新幹線には乗れない。外食はできる子が、旅館の夕食で固まってしまう。こういうことが起きるのは、帰省や旅行では日帰りの外出にはない四つの負荷が、同時にかかるからです。分けて見ると、それぞれに前もって決められることがあります。

日帰りと違うところ前もって決められること
移動が長い——数分ごとに駅に着く電車と違い、次に止まるまでの時間が長く、「降りる」という逃げ道が遠くなります座席の位置、途中で立てる場所(デッキ・通路側)、移動中にやることの順番を先に決める。「つらくなったらどうするか」を乗る前に親子で共有する
寝る場所が変わる——布団の向き、枕、明るさ、音、におい、隣に誰が寝るか。すべてが一度に変わります家の寝具の一部(枕カバー・タオルケット・ぬいぐるみ)を持っていく。寝る前の手順を家と同じにする。寝る部屋を先に決めて、着いたら最初に見せる
会う人が増える——久しぶりの祖父母、名前を覚えていない親戚、「大きくなったね」と近づいてくる大人誰に会うかを写真で先に見せる。挨拶を求めない、と大人側で決めておく。一人になれる部屋を一つ確保する
いつもの時刻がずれる——起きる・食べる・お風呂・寝るの全部が動きます全部は守れません。一つか二つだけ(たとえば寝る時刻と朝食)を決めて、それだけ守る

「いつもと違う状況」のしんどさは、国の文書に書かれています

国土交通省は、鉄道・バス・航空などの事業者に向けて「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」を作っています(平成30年5月作成、令和6年3月に改正障害者差別解消法の施行を踏まえて改訂)。その「発達障害者、知的障害者、精神障害者」の章には、公共交通機関を利用する際の困りごととして、次のことが挙げられています。

ガイドラインが挙げる「困りごと」
「いつもと違う状況になると対応できずパニックになってしまう」
「困っていても自分から助けを求めることが難しく、気持ちを上手く伝えられない」
「ストレスに弱く、緊張したり、不安を感じやすく、疲れやすい」

つまり、「いつもと違う」がしんどいことは、交通事業者の側が前提として知っているべきこととして、国の文書に書かれています。帰省や旅行は「いつもと違う」の塊です。しんどくなるのは想定の内側にあり、ご家庭の努力が足りないからではありません。

出発の二週間前から——日付で区切る段取り

帰省の準備は、荷造りより先に「誰に、いつ、何を伝えるか」から始まります。下の表は、出発を基準に日付で区切ったものです。全部やる必要はありません。前回大変だったところに当たる行だけ、拾ってください。

いつやること
二週間前交通機関の予約。座席の位置(通路側・端・出入口の近く)を決める。宿を取るなら、このときに「静かな部屋」「食事の時間」を相談する(→ 泊まる場所の節)。祖父母に、電話かメッセージで「今回はこうしたい」を先に伝える(→ 伝え方の節)
一週間前お子さんに予定を渡し始める。「何日に、何に乗って、どこに泊まって、誰に会って、何日に帰る」を絵か短い言葉で一枚に。
予定は「多く」ではなく「少なく」書くほうが守れます
三日前祖父母に渡す一枚紙を書く。ヘルプマーク・ヘルプカードの用意(→ 目印の節)。移動中にやることの順番(食べる→見る→寝る、など)を決める
前日荷物のうち「お子さんの手元に置くもの」だけ別の袋に。寝る時刻はいつも通りに。予定の一枚をもう一度見せる
当日の朝予定の一枚を持たせる。出発の時刻を「あと○分」で見えるようにする。駅や空港に早く着きすぎない(待つ時間がいちばん長い負荷になります)
移動中決めた順番でやる。つらくなったら決めておいた逃げ道(デッキ・トイレ・次の駅)を使う。係員に助けを求めてよい(→ 長い移動の節)
着いたら最初に寝る部屋、トイレ、一人になれる場所の三つを見せる。挨拶はあとでよい
帰った翌日予定を入れない。いつもの時刻に戻す。うまくいったことと困ったことを一行ずつ書く(→ 帰ってきてからの節)

今夜できること

  1. 前回の帰省でいちばん大変だった場面を一つだけ思い出して、上の表のどの行に当たるかを見る
  2. その行の「やること」の中で、明日連絡できる相手(交通機関の窓口・宿・祖父母)を一人決める
  3. お子さんに渡す予定の一枚を、まず大人が下書きする。行き先・乗り物・泊まる場所・会う人・帰る日の五つだけ
  4. 「つらくなったらどうするか」を一つ決めておく。移動なら「デッキに行く」、家なら「この部屋に行く」

予定を渡すときは、「変わるかもしれないところ」に印を付けておくと、変更のときに戻りやすくなります。見通しの渡し方は関連記事「切り替えが苦手」で詳しく書いています。

長い移動——予約のときに頼めること、途中で立ってよいこと

新幹線や特急、飛行機は、「次に止まるまで」が長い乗り物です。だから、乗ってからがんばるのではなく、予約のときに決めることが大半になります。ここでは、国土交通省の接遇ガイドラインが交通事業者に求めている対応を土台に、保護者の側から頼めること・決めておけることを並べます。

予約のとき——「支援の内容を確認する」と書かれています

接遇ガイドラインの鉄軌道の章は、「発達障害者・知的障害者・精神障害者」の「予約、改札利用、切符購入」について、「指定席等、乗車の予約時においては、支援にあたっての必要事項、支援内容について確認を行う」と書いています。航空の章にも同じく「予約時においては、支援にあたっての必要事項、支援内容について確認を行う」とあります。予約のときに「こういう子で、こうしてほしい」と伝えることは、事業者の側が受け止めることになっている手順です。

予約のときに伝える三つ
①何に困るか——「音が苦手」「じっと座っているのがむずかしい」「列に長く並べない」
②何をしてほしいか——「出入口に近い席」「通路側」「並ばずに済む方法があれば教えてほしい」
③できないときは——「代わりに、こういう案があれば教えてほしい」
診断名を言う必要はありません。求められているのは困る場面と、してほしいことです。

乗る前・乗ってから——場面ごとに決めておけること

場面決めておけること・頼めること
座席通路側か窓側かは、お子さんによって逆です。「立ちたくなる子は通路側」「外を見ると落ち着く子は窓側」。端の席・出入口に近い席は、立ちやすさと人の少なさの両方で効きます
待つ時間駅や空港に早く着きすぎない。待つ場所は、出発の案内が見える範囲でいちばん端。「あと○分」が見えるものを持つ
飛行機の手続き航空の章は、チェックイン時に「機内でのトイレ利用等に配慮し、搭乗時間、シートベルトサイン消灯時間等の目安をチェックイン時に可能な限り伝えることが望ましい」と書いています。「シートベルトのサインが消えるまで何分か」を聞いてよい、ということです
保安検査同じ章に、事業者の事例として「支援が必要なお客様には、優先レーンの利用をご案内している」「門型金属探知機を通過することが困難なお客様に対しては、代替の通路を積極的に案内している」「保安検査機に抵抗がある場合は接触検査に変えるなど……柔軟に対応している」が載っています。
すべての空港・事業者で同じ対応があるとは限りません。「こういう方法があると聞いたが、ここではどうか」と尋ねる形が使えます
乗ってからやることの順番を決めておく(食べる→見る→寝る、など)。つらくなったときの場所(デッキ・通路・トイレの前)を、座る前に一度見に行く
乗り換え鉄軌道の章は「乗り換えについての支援の申し出があった場合には、具体的に乗換経路について案内し、必要に応じてできる限りの支援を行う」と書いています。乗換経路をメモで渡す例も載っています。駅の係員に「乗り換えを紙に書いてほしい」と頼んでよい
降りたあと航空の章には、降機について事業者の事例として「降機の混雑を避けるため、他のお客様が降機後にご案内を実施している」が載っています。「最後に降りる」を先に決めておくと、出口の混雑を避けられます

「途中で降りる」が遠い乗り物では、代わりの逃げ道を決める

在来線なら「次の駅で降りる」が逃げ道になります。新幹線や飛行機ではそれが遠い。だから降りる代わりの逃げ道を、乗る前に決めておきます。

パニックになったとき、事業者はこう動くことになっています
接遇ガイドラインの全モード共通事項は、「万一パニック状態となったら、刺激せず、安全を確保しながら落ち着くまでしばらく見守る。近くに静かで落ち着ける場所があれば、そちらに誘導する」と書いています。航空の章では、保安検査場について「一番奥の検査場は静かです。そちらに行きましょう」と案内する例も挙げられています。「静かな場所はありますか」と尋ねることは、この文書の想定の内側です。

運賃の割引(手帳の「第○種」)と、自治体の移動支援については、関連記事「子どもとの外出が不安」に整理していますので、そちらをご覧ください。個別の事業者の手続きは、各社の窓口でご確認ください。

ヘルプマークとヘルプカード——帰省先でも通じる目印

移動中に困ったとき、状況をいちから説明する余裕はありません。そのためにヘルプマークと、連絡先や必要な支援を書いたヘルプカードがあります。東京で受け取ったものが帰省先で通じるのか——ここが気になるところだと思います。

全国で導入されています

東京都福祉局のヘルプマークのページには、「都以外の全道府県でヘルプマークは導入されています(令和6年10月1日現在)」と書かれています。東京で受け取ったヘルプマークは、帰省先でも同じ意味で通じる状態です。また、「ヘルプマーク本体は無償でお受け取りいただけます」とあり、道府県ごとの受け取り場所は各道府県のページで確認するよう案内されています。

交通事業者は、カードの記載を見て動くことになっています

接遇ガイドラインは、「パニックを起こしている様子などが見られた場合で、ヘルプマークやヘルプカード等を持っている場合は、緊急時連絡先や必要な支援等が記載されている場合があるため、記載内容を確認のうえ対応する」と書いています。つまり、ヘルプカードは読まれる前提で作られています。書く中身が大切です。

カードに書くこと書き方
連絡先保護者の携帯番号。帰省中は、祖父母の家の固定電話も一行足しておく
してほしいこと「静かな場所に連れて行ってください」「短い言葉でゆっくり話しかけてください」など、一つか二つ。多く書くほど読まれません
してほしくないこと「大きな声で叱らないでください」「身体を押さえないでください」。接遇ガイドラインも「無理に押さえつけようとしたり、大きな声で叱責すると余計にパニックになることがあり」と書いています
落ち着く方法「耳をふさぐと落ち着きます」「好きなものの名前」など、その子だけの一行

ヘルプマークは「見せる義務」のあるものではありません。付けるかどうか、いつ付けるかは、ご家庭で決めてかまいません。まわりへの説明の義務がないことは、関連記事「子どもとの外出が不安」に書いています。

泊まる場所——宿に前もって伝えること、宿が断れないこと

初めての宿では、「こんなことを頼んでいいのか」「断られたらどうしよう」が先に立ちます。ここは法令がはっきりしているところなので、先に条文を見ておきます。

旅館業法は「宿泊を拒んではならない」と書いています

旅館業法 第5条第1項は、「営業者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない」と定めています。拒める場合として挙がっているのは、特定感染症の患者等であるとき、違法行為や風紀を乱す行為のおそれがあるとき、厚生労働省令で定める要求を繰り返したとき、宿泊施設に余裕がないときなどです。「障害があるから」は、この中にありません。

さらに第5条第2項は、営業者に対し「みだりに宿泊を拒むことがないようにするとともに、宿泊を拒む場合には……客観的な事実に基づいて判断し、及び宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにする」ことを求めています。もし断られたら、理由を尋ねてよい、ということです。

「要求を繰り返した」の中身——配慮を求めることは除かれています
旅館業法施行規則 第5条の6は、宿を断る理由になる「要求」を定めたうえで、「宿泊に関して障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律……第二条第二号に規定する社会的障壁の除去を求める場合を除く」と書いています。
つまり、「静かな部屋にしてほしい」「食事の時間を変えてほしい」といった配慮の求めは、断る理由になる「要求」からはっきり除かれています

宿は事業者——合理的配慮は「しなければならない」

障害者差別解消法 第8条第2項は、事業者に対し、「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは……必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めています。宿も事業者です。

宿に前もって伝えること——場面ごとに

宿で起きやすいこと前もって伝える・決めること
——廊下の足音、隣の部屋の声、朝の館内放送「音に敏感なので、できれば端の部屋か、廊下から離れた部屋を」。館内放送の有無と時刻を聞いておく
食事——時間が決まっている、知らない料理が並ぶ、席が広間食事の時間をずらせるか、部屋で食べられるかを聞く。食べ慣れたものを一品持ち込んでよいかは、宿に相談する
お風呂——大浴場の音と湯気と人部屋に風呂があるか、大浴場の空いている時間帯はいつかを聞く。入らない選択も先に決めておく
寝具——布団かベッドか、枕の高さ家と同じ側の寝具(枕カバー・タオルケット)を持っていく。布団とベッドのどちらが合うかは、家での様子で先に決める
夜中——起きて部屋を出る、廊下を歩く部屋の鍵の仕組みを到着時に確かめる。出入口に大人が寝る
備品——触ると困るもの、開けてしまうもの到着時に「これは触らないもの」を先に一度だけ見せる。冷蔵庫の中身は事前に聞いて、必要なら出しておいてもらえるか相談する

祖父母や親戚の家に泊まる場合は、宿と違って「頼む」より「決めておく」が中心になります。次の節に書きます。

祖父母・親戚への伝え方——診断名より「困る場面と、してほしいこと」

帰省でいちばん重いのは、移動でも宿でもなく、祖父母にどう伝えるかかもしれません。「甘やかしすぎ」「昔はそんな子はいなかった」——その一言で、帰省全体が重くなります。

祖父母は「支援の対象」として、国のガイドラインに書かれています

こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、「家族支援」について、「大きなストレスや負担にさらされている母親が中心となる場合が多いが、父親やきょうだい、さらには祖父母など、家族全体を支援していく観点が必要である」と書いています。別の箇所でも「対象を保護者に限った支援ではなく、きょうだいや祖父母等への支援も含まれる」とあります。

そして、こう続きます。「家族がこどもの障害の特性等を理解していくために重要な支援であるが、理解のプロセス及び態様は、それぞれの家族で異なることを理解することが重要である」。祖父母の理解が進まないことは、家庭の中で解決すべき問題ではなく、支援機関に相談してよいことです。通っている事業所に「祖父母にどう伝えたらよいか」と聞くのは、ガイドラインの想定の内側です。

伝える順番——一度だけ、紙で、先に

  1. 出発の二週間前に、電話かメッセージで先に伝える。当日その場で言うと、言い争いになります。「今回は、こういうふうにさせてもらえると助かる」と、お願いの形で
  2. 一枚の紙にする。診断名ではなく「困る場面」と「してほしいこと」と「してほしくないこと」を、それぞれ二つか三つ。口で言うと、その場の空気で伝わり方が変わります。紙なら同じ内容が残ります
  3. 到着したら、繰り返さない。一度伝えたことを何度も言うと、祖父母を疑っているように聞こえます。紙を渡して、あとは任せる
  4. 「しつけ」の話になったら、引く。その場で説得しようとしないほうが、帰省全体がうまくいきます。「今はこの方法でやっているので、見ていてもらえると助かる」で止める

一枚紙に書くこと

言われやすい言葉と、争わない返し方

祖父母から出やすい言葉争わない返し方
「甘やかしすぎじゃないか」「そう見えると思う。今はこのやり方で落ち着くことが分かっているから、見ていてもらえると助かる」
「そのうち治るよ」「そうだといいなと思ってる。今は今のやり方で、この子が楽なようにしたい」
治る・治らないの話には乗らない。診断や見通しは、家庭で議論することではありません
「ちゃんと食べさせなさい」「家でも同じで、いつものものを一品持ってきているから、それでいい」
「うちに来ると態度が悪くなる」「いつもと違うところにいると、どの子もそうなる。悪くなっているのではなく、がんばっている」
「しつけの問題」にしないほうがよい根拠
児童発達支援ガイドラインは、「合わない環境や不適切な働きかけにより二次障害が生じる場合があることを理解した上で」支援を行うよう求めています。環境が合わないときに崩れるのは、しつけの問題ではなく、環境の問題——これは国の文書の立場です。祖父母を説得する材料にする必要はありませんが、保護者ご自身が揺れないための根拠にはなります。

帰省先での生活リズム——寝る場所・食事・お風呂・いつもの物

帰省先で「いつも通り」を全部守ろうとすると、大人が先に折れます。守るのは一つか二つ。あとは崩れて当然、と最初から決めておきます。

国のガイドラインが「安心できる環境」として挙げていること

児童発達支援ガイドラインは、発達障害のあるこどもについて「予定等の見通しをわかりやすくすることや、感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)に留意し、安心できる環境づくりが必要である。また、具体的又は視覚的な手段を用いながら、活動や場面の理解を促すこと」と書いています。また、支援の基本として「こどもの生活リズムを大切にし、健康、安全で情緒の安定した生活ができる環境」を挙げています。これは事業所に向けた文書ですが、祖父母の家でも同じ三つ——見通し・感覚・生活リズム——が軸になります。

場面決めておくこと
寝る場所着いたら最初に寝る部屋を見せる。家と同じ側に寝かせる(右が壁なら右が壁)。枕カバーとタオルケットは家のものを。寝る前の手順(お風呂→絵本→消灯)は家と同じ順番で。
寝つきの工夫は関連記事「寝つきが悪い・夜中に起きる」に詳しく書いています
食事食べ慣れたものを一品、毎食出す。それだけは家から持っていく。祖父母の料理は「皿に載っていてよい。食べなくてよい」と先に決めて、一枚紙に書いておく
お風呂順番(誰と、いつ)を先に決める。家と違う風呂は音とにおいが変わります。入らない日があってよい、と大人が決めておく
テレビ・音祖父母の家のテレビは、つけっぱなしで音が大きいことがあります。「この時間は消してほしい」を一枚紙に一行。消せないなら、離れた部屋を一つ確保する
一人になれる場所部屋でなくてもかまいません。押し入れの前、廊下の端、車の中。「つらくなったらここ」を、着いた日のうちに一緒に見ておく
いつもの物ぬいぐるみ、毛布、決まったコップ。「こだわり」と見えるものが、いつもと違う場所では命綱になります。帰省中に手放させようとしない
守るのは一つか二つ
起きる・食べる・お風呂・寝るの全部は動きます。寝る時刻朝食の時刻のように、帰ってからの戻しやすさに効くものを一つか二つ選んで、それだけ守ります。残りは「帰省中は動くもの」と、出発前に大人が決めておくと、当日に揺れません。

音・光・においへの手当ては関連記事「感覚過敏」に、いつもの物や順番へのこだわりについては関連記事「こだわりが強い子」に、それぞれ書いています。この記事では繰り返しません。

帰ってきてからの数日——戻し方と、園・事業所に伝えること

帰省は、帰ってきた日には終わりません。帰宅後の数日が、次の帰省の準備の始まりです。

きょうだいと、大人の休み

帰省は、きょうだいにとっても「いつもと違う」の塊です。上の子が祖父母と過ごす時間を楽しみにしていたのに、下の子の対応で終わってしまう。こういうことが重なります。児童発達支援ガイドラインは、家族支援の内容として「きょうだい同士の交流の機会の提供やきょうだいに対する相談援助」を挙げ、「特にきょうだいは、心的負担等から精神的な問題を抱える場合も少なくない」と書いています。

きょうだいへの支援は関連記事「きょうだい児支援」に、家族の休みについては関連記事「レスパイト」「短期入所」に整理しています。

相談してよいこと——出発前に園・事業所・保健センターに頼めること

帰省の準備は、家庭だけでやることになっていません。出発前に頼めることがあります。

相談先頼めること
通っている事業所見通しの一枚(絵カードや予定表)の作り方を一緒に考えてもらう。祖父母に渡す一枚紙の書き方を相談する。帰省中に崩れたときの戻し方を、事前に聞いておく
園・保育所連休前に「遠出をする」と伝えておく。園で使っている絵カードや手順表があれば、同じものを持っていけるか聞く
保健センター事業所に通っていない場合の相談先。「帰省で困ったことがある」は、保健師に相談してよいことです
交通機関の窓口予約のときに、困る場面としてほしいことを伝える。接遇ガイドラインは「予約時においては、支援にあたっての必要事項、支援内容について確認を行う」と書いています
宿部屋の位置、食事の時間と場所、お風呂、寝具。断られたら「代わりにできることはあるか」を続けてよい

そして、繰り返しになりますが——今回は行かない、と決めてもかまいません。帰省は義務ではなく、時期を動かせるものです。「今年は来てもらう」「日帰りにする」「一泊だけにする」も、段取りのうちです。

この記事で書かないこと

出典

※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

新幹線や飛行機の予約のとき、子どもの特性を伝えてもよいのでしょうか?
はい。国土交通省の「公共交通事業者に向けた接遇ガイドライン」は、鉄軌道・航空のどちらの章でも、発達障害のある方について「予約時においては、支援にあたっての必要事項、支援内容について確認を行う」と書いています。伝えることは、事業者の側が受け止めることになっている手順です。
診断名を言う必要はありません。「何に困るか」「何をしてほしいか」の二つで足ります。
東京で受け取ったヘルプマークは、帰省先でも通じますか?
東京都福祉局のページには「都以外の全道府県でヘルプマークは導入されています(令和6年10月1日現在)」と書かれています。同じマークが全国で使われている状態です。
受け取りは代理人(家族や支援者など)の口頭の申し出でも可能で、急ぐ場合は都のページから画像を印刷して使うこともできます(縦横の比率と色は変えないでください)。
宿に「静かな部屋にしてほしい」「食事の時間をずらしてほしい」と頼んでもよいのでしょうか?
頼んでかまいません。旅館業法施行規則 第5条の6は、宿が断る理由になる「要求」から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律……第二条第二号に規定する社会的障壁の除去を求める場合を除く」と明記しています。配慮の求めは、断る理由になる要求ではありません。
障害者差別解消法 第8条第2項は、事業者に対し、負担が過重でないときは「必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めています。できないと言われたら、「代わりにできることはありますか」と続けてよいことです。
宿に泊まるのを断られたら、どうすればいいですか?
旅館業法 第5条第1項は「営業者は、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、宿泊を拒んではならない」と定めており、拒める場合は限られています。第5条第2項は、宿泊を拒む場合には「宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにする」ことを求めています。理由を尋ねてかまいません。
それでも納得できないときは、お住まいの自治体の障害福祉の窓口や、宿のある都道府県の相談窓口にご相談ください。
祖父母に、診断名を伝えるべきでしょうか?
伝えるかどうかは、ご家庭で決めてよいことです。この記事でおすすめしているのは、診断名より先に「困る場面」「してほしいこと」「してほしくないこと」を一枚の紙で渡すことです。診断名は受け止め方が人によって大きく違いますが、「大きな音が苦手なので、テレビの音を小さくしてほしい」は、誰にでも同じように伝わります。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、家族支援の対象に祖父母を含め、「理解のプロセス及び態様は、それぞれの家族で異なる」と書いています。祖父母にどう伝えるかは、通っている事業所に相談してよいことです。
帰省先で生活リズムが崩れてしまいます。どこまで守ればいいですか?
全部は守れません。一つか二つ——たとえば寝る時刻と朝食の時刻——を決めて、それだけ守ります。残りは「帰省中は動くもの」と、出発前に大人が決めておきます。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、発達障害のあるこどもについて「予定等の見通しをわかりやすくすること」と「感覚の特性に留意し、安心できる環境づくり」を挙げています。帰省先でも、見通しの一枚一人になれる場所の二つがあると、崩れても戻りやすくなります。
帰ってきてから荒れています。帰省がよくなかったのでしょうか?
帰ってきてから崩れるのは、帰省中にがんばった分が出ているだけで、帰省がよくなかったという結論にはなりません。帰った翌日に予定を入れず、守っていた一つか二つの時刻から戻していきます。三日から一週間で戻れば十分です。
「うまくいったこと」「困ったこと」「どうしたら戻れたか」を一行ずつ書いておくと、次の帰省の段取りの出発点になります。園や事業所には「連休中に遠出をした」と一言伝えておくと、今週の見立てが変わります。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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