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🧭 年齢・場面別

着替えが進まない・ボタンや靴が苦手なとき——家と園で分けて進める段取り

最終更新:2026年9月7日
朝、着替えが終わらないまま時計だけが進む。園から「そろそろひとりで着替えられるように」と言われた。ボタンが留まらない、靴が左右逆、靴下のかかとが合わない、タグが当たると脱いでしまう——そんな毎日の中でこのページを開かれたのだと思います。
この記事では、「着替え」をひとまとまりにせず、部品に分けるところから始めます。そのうえで、今夜から変えられる朝の段取り家でやることと園に任せることの分け方ボタン・ファスナー・靴・靴下で道具の側を変える手服のこだわりと季節の切り替え、そして園への頼み方を順に書きます。根拠には、保育所保育指針と幼稚園教育要領が着替えについて「家庭での生活経験に配慮し」と書いていること、こども家庭庁のガイドラインと対応指針が環境の工夫合理的配慮をどう置いているかを使います。何歳で何ができるかの目安、訓練法の効果、医学的なことには踏み込みません。ここで扱うのは、段取りと、頼み方です。

「着替えが苦手」を、部品に分けてみる

「着替えができない」と一言で言われることが多いのですが、着替えはひとつの動作ではありません。脱ぐ、前後を見分ける、袖に腕を通す、ボタンを留める、靴下のかかとを合わせる、靴の左右を見分ける——部品ごとに、使っている力が違います。どこで止まっているかが分かると、手の打ち方が変わります。

部品そこで何が起きているか
脱ぐ着るより先にできることが多い部品です。1歳6か月児健診の問診票にも「上着を脱ごうとすることがありますか」という設問が置かれています(次の節で扱います)。頭を抜くときに視界が暗くなることがいやな子もいます
前後・裏表タグや絵柄を手がかりに判断する部品です。手がかりがどこにあるか分からないと止まります。服によって手がかりの場所が違うことも、止まる理由になります
袖・ズボンに通す穴の位置を見て、腕や足をそこへ向ける動きです。見えない後ろ側で手を動かすことになるので、途中で分からなくなります
ボタン両手で別々のことをする部品です。片手でボタンを持ち、もう片方で穴を開けて、押し込んで、引き抜く。小さいボタンほど難しく、上から順に留めると、いちばん見えにくい首元から始まります
ファスナー下の金具を差し込む「はめる」動作と、つまんで引き上げる動作は別の部品です。はめるほうが先に止まることが多く、はめてあれば引き上げられる子はたくさんいます
靴下かかとの向き、指の入れ方、引き上げる力。縫い目が指に当たることが原因のこともあります
靴の左右左右の違いは、大人が思うほど目立ちません。手がかりが靴の側に無いことが、見分けられない理由の大半です
服のこだわりタグ、縫い目、素材、首まわりのきつさ、同じ服しか着ない。着替えの手順とは別の、服そのものの条件の話です
季節の切り替え半袖から長袖へ、長袖から半袖へ。いつもの服が急に「違う服」になる場面で、手順は同じでも止まります
止まっている部品は、たいてい1つか2つです

全部が苦手なように見えても、書き出してみると止まっているのは1つか2つで、あとは時間がかかっているだけ、ということがよくあります。「着替えが苦手」ではなく、「ボタンの穴に押し込むところで止まる」「靴のかかとが合わない」まで言えると、家でも園でも、次の一手が具体的になります。

感覚の受け取り方の違いそのもの(音・触覚・においなど)については、別記事「感覚過敏」で扱っています。この記事では、服の条件については後の節で、着替えの段取りに関わる範囲だけを書きます。

国の文書は、着替えを「家庭と園で一緒に」進めるものと書いています

「園から、ひとりで着替えられるようにと言われた」——この言葉が重く聞こえるのは、家で仕上げてから園に出さなければならないように受け取れるからだと思います。けれど、園の側の文書は、そうは書いていません。

保育所保育指針——「保育士等の助けを借りながら」から始まっています

保育所の保育の中身は、保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)で定められています。着替えに関わる記述は、年齢の区分ごとに置かれています。

年齢の区分指針の書き方(原文のまま)
乳児「おむつ交換や衣服の着脱などを通じて、清潔になることの心地よさを感じる。」
——「感じる」で止まっています。「する」とは書かれていません
1歳以上3歳未満児「保育士等の助けを借りながら、衣類の着脱を自分でしようとする。」
——「助けを借りながら」「しようとする」。助けがある状態が、指針の側の前提です
3歳以上児「身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする。」
——ここではじめて「自分でする」になります。ただし、これは「ねらい及び内容」であって、入園時に満たしているべき条件ではありません

そして、1歳以上3歳未満児の「内容の取扱い」に、この記事の芯になる一文があります。

保育所保育指針 第2章 2(2)ア(ウ)④

「食事、排泄、睡眠、衣類の着脱、身の回りを清潔にすることなど、生活に必要な基本的な習慣については、一人一人の状態に応じ、落ち着いた雰囲気の中で行うようにし、子どもが自分でしようとする気持ちを尊重すること。また、基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し、家庭との適切な連携の下で行うようにすること。」

3歳以上児の「内容の取扱い」⑤にも、同じ言い回しがあります——「基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し、子どもの自立心を育て……次第に見通しをもって行動できるようにすること。」

つまり、着替えは園の側が「家庭での生活経験に配慮し、家庭との連携の下で」進めると定められている項目です。家で仕上げてから持ち込むものではなく、家と園が同じ子を、それぞれの場面で見ているという形が、指針の前提になっています。

幼稚園教育要領——同じ一文があります

幼稚園については幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号)が定めています。領域「健康」の内容(7)に「身の回りを清潔にし、衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動を自分でする。」とあり、内容の取扱い(5)に「基本的な生活習慣の形成に当たっては、家庭での生活経験に配慮し、幼児の自立心を育て……」と、保育所保育指針と同じ言い回しが置かれています。

児童発達支援ガイドライン——「環境の工夫」と「適切な時期に」

こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)は、5領域のうち「健康・生活」に「衣類の着脱」を置き、「生活の場面における環境の工夫を行いながら、こどもの状態に応じて適切な時期に適切な支援をする」と書いています。この部分は別記事「身辺自立とは?」で詳しく扱っているので、ここでは繰り返しません。

この記事で使うのは、同じガイドラインの別の場所です。児童発達支援の職員に対して、「保育所等との連携及び併行利用や移行に向けた支援を行うために、保育所保育指針……を理解する」ことを求め、「移行支援」の支援内容として「併行利用先とのこどもの状態や支援内容の共有(例:得意不得意やその背景、声掛けのタイミングやコミュニケーション手段の共有)」を挙げています。事業所に通っている場合、着替えの「どこで止まるか」と「どう手助けすると通るか」を園と共有することは、ガイドラインが事業所の仕事として書いている範囲に入っています。

※ 幼保連携型認定こども園については「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」が別にありますが、この記事では原文を確かめていないため、引用していません。

健診の問診票では、着替えは「脱ぐ」の1問だけです

「着替えができていないと、健診で何か言われるのでは」と心配される方がいます。実際に健診で何を聞かれるかは、こども家庭庁の通知「乳幼児に対する健康診査について」(改正後全文・令和7年9月1日 第7次改正)に、問診票の様式が丸ごと載っているので、確かめられます。

健診着替えに関わる設問(様式のとおり)
1歳6か月児問25「上着を脱ごうとすることがありますか。」(はい・いいえ)
生活習慣の欄。「脱ごうとする」であって「脱げる」でも「着られる」でもありません。着替えに関わる設問は、全43問のうちこの1問です
3歳児着替えに関する設問はありません(全40問を通読)。
生活に関わるのは 問6「ほぼこぼさないで一人で食べますか」、問9「何でも自分でしたがりますか」、問17「昼間のおしっこを前もって知らせますか」。着脱の設問は置かれていません

法令の側も見ておきます。健診の項目を定めているのは母子保健法施行規則 第2条ですが、1歳6か月児(全11号)にも3歳児(全13号)にも、「生活習慣」という語はありません。着替えに近いものを探すなら「精神発達の状況」「育児上問題となる事項」の号に含まれると読むほかなく、着脱衣そのものは項目として書かれていません。

だから、健診で着替えの話をするなら「育児上」の相談として持ち込めます

問診票に設問が無いということは、聞かれないと話す機会が無いということでもあります。3歳児健診の問診票の最後には、問40「現在何か心配なことはありますか。いくつでも○を付けて下さい」があり、選択肢に「こどものこと」があります。ここに○を付けて、当日「朝の着替えで毎日30分かかります」と言えば、施行規則の「育児上問題となる事項」として、その場で相談できる形になります。

健診票には「子育て支援の必要性の判定」という別欄(1 特に問題なし/2 保健師による支援が必要/3 その他の支援が必要)もあります。健診全体の見方は、別記事「3歳児健診で指摘されたら」で扱っています。

今夜できること——朝を「着替えを覚える時間」から外す

毎朝もめている家庭でいちばん先に効くのは、朝の着替えに「できるようになる」役目を負わせないことです。朝は出る時刻が決まっていて、待てる時間が短く、大人の側も余裕がありません。覚える練習は、時間のある夕方や休日に回し、朝は「通す」だけにします。

  1. 前の晩に、明日着る服を一式そろえて、着る順に重ねておく——上に着るものを下に、最初に着るものを上に。朝の「選ぶ」と「探す」を無くします
  2. 選ばせるなら、前の晩に2つから——「どっちにする?」を朝に持ち込むと、決めるところで止まります。夜のうちに決めて、朝はその一式だけを出します
  3. 脱ぐ場所と着る場所を、同じ場所に固定する——毎朝同じ位置、同じ向き。場所が決まっていると、次に何をするかが場所で分かります
  4. 順番を固定する——「ズボン→シャツ→靴下」なら、毎日その順で。今日は上から、明日は下から、と変えると、順番を思い出すところから始まります
  5. 止まる部品だけ、大人がやる——前の節で書き出した「止まる部品」は朝は手伝います。ボタンなら、いちばん上の1つだけ大人が留めて、残りを子どもに渡す、という分け方もできます
  6. 終わりの合図を決める——「靴下をはいたら、おしまい」。着替えの終わりが決まっていると、そこまでの見通しが立ちます
「手伝ったら覚えない」は、朝には当てはまりません

覚える場面と、通す場面は分けてかまいません。保育所保育指針が着替えを「保育士等の助けを借りながら」から書き始めているのは前の節のとおりです。朝に手伝うことは、指針の書き方から外れていません。

逆に、朝にもめた記憶が積み上がると、着替えそのものが「もめる時間」になります。通す朝を増やしておいて、覚えるほうは別の時間に置く——この順番のほうが、両方が前に進みます。

夕方か休日に、1つだけ

覚える練習をするなら、止まる部品を1つだけ選び、時間のあるときに、その部品だけをやります。「ボタンを穴に押し込む」だけ、「靴下のかかとを合わせる」だけ。着替え全体を最初から通す必要はありません。服を着た状態で、胸のボタンを1つ外して、留める。それだけで1回分です。

このとき、最後の一手を子どもに渡す形にすると、「自分でできた」で終われます。ボタンなら、大人が穴の半分まで押し込んで、引き抜くところだけ子どもがやる。ファスナーなら、大人が下の金具をはめて、引き上げるところだけ子どもがやる。終わりの側から少しずつ手前に戻していくと、毎回「できた」で終わります。

家でやること/園に任せることを、分けて決める

家と園は、条件が違います。家は1対1で、時間を調整できて、服を選べる。園は集団で、流れの中で、決まった服のことが多い。同じ着替えでも、向いている役目が違います。分けて決めると、どちらも無理をしなくて済みます。

どちらで向いている役目
止まる部品を1つずつ覚える(時間のあるとき)/朝は通すだけ/服の条件(タグ・素材)を試す/道具を変えてみる(次の節)/うまくいった形を書き留める
流れの中で、決まった順番で着替える経験/まわりの子を見て手順を覚える/家で通った形(手助けの入れ方、順番、目印)を、園でも同じにしてもらう/園で見えている「止まる部品」を家に伝えてもらう

ここで大事なのは、園に「できるようにしてほしい」と頼むのではなく、「家ではこの形で通っています」を渡すことです。前の節で見たとおり、指針は園の側に「家庭での生活経験に配慮し」と求めています。家庭での生活経験は、保護者が伝えないと園には見えません。

家と園で「同じ」にしておくと効くもの

※ 逆に、家と園で違っていてよいものもあります。服そのもの(家は好きな服、園は決まった服)は違っていて当然です。違うものを無理にそろえる必要はありません。

ボタン・ファスナー・靴下・靴の左右——道具の側を変える

やり方を変えても止まるときは、道具の側を変えるという手があります。児童発達支援ガイドラインが、着脱を含む生活の技能について「生活の場面における環境の工夫を行いながら」と書いているのは前の節のとおりです。服と靴は、いちばん身近な「環境」です。

変えられるところ変えると何が変わるか
ボタンの大きさ大きいボタンは、つまむ・押し込む・引き抜くのすべてが楽になります。練習用にはボタンの大きい前開きの服を1枚だけ用意する、という形でも足ります
ボタンの位置上から留めると、いちばん見えにくい首元から始まります。いちばん下から留めると、見える場所で最初の1つが通ります。穴とボタンがずれる子には、下から順にそろえる形のほうが合うことがあります
ファスナーの引き手小さい引き手はつまみにくいので、大きめの引き手や、ひも・輪を付けるとつまめます。「はめる」が止まる部品なら、そこは大人がやって、引き上げだけを渡します
前後・裏表の目印タグの無い服は、前か後ろのどちらか一方だけに目印を付けます。両方に付けると、どちらが前か分からなくなります。目印は毎回同じ場所に、同じ形で
靴下かかとの区別のない筒型の靴下は、向きを合わせる部品そのものが無くなります。縫い目が当たる子には、縫い目の平らなもの、裏返して履くという手もあります
左右で色や絵が違う目印を、内側(土踏まず側)に付けると、並べたときに絵が合えば正しい向きになります。留め具は、ひもより面ファスナーのほうが部品が少なく、かかとに輪(プルタブ)があると引き上げやすくなります
服の伸び首まわりの伸びる服は、頭を抜く時間が短くなります。「頭を抜くときに視界が暗くなる」のがいやな子には、前開きにすると、暗くなる場面そのものが無くなります
一度にひとつだけ変える

同じ日にボタンの大きさと靴の目印を両方変えると、うまくいっても、いかなくても、どちらが効いたのか分からなくなります。1回にひとつ。効いたら残し、効かなかったら戻す。これを繰り返すほうが、遠回りに見えて早く着きます。

手指の使い方や姿勢の側から見てもらえる職種として、作業療法士がいます。道具(自助具)の選び方も含めて相談できる場合があります。通っている事業所や、区市町村の発達相談の窓口で「作業療法士に見てもらえる機会はありますか」と聞いてみてください。

服のこだわりと、季節の切り替え

タグ・縫い目・素材——「わがまま」ではなく、服の条件です

タグが当たると脱いでしまう、縫い目が気になって靴下を何度も履き直す、同じ服しか着ない。これは着替えの手順とは別の、服そのものの条件の話です。感覚の受け取り方の違いについては別記事「感覚過敏」に書いたので、ここでは着替えの段取りに関わる範囲だけを書きます。

季節の切り替え——「いつもの服」が急に「違う服」になる日

半袖から長袖へ、長袖から半袖へ。手順は同じなのに、切り替えの週だけ止まる子がいます。「いつもの服」が「違う服」になったからです。長袖は袖に腕を通す距離が長く、途中で手が見えなくなる時間も長くなります。

  1. 切り替えは、一気にやらない——上だけ長袖、下はいつもの、から始めます。1週間ほど置いて、次を変えます
  2. 切り替える前に、家で一度着る——衣替えの日に初めて出すのではなく、前の週の休日に一度着ておきます
  3. 長袖は、袖をたくし上げてから通す——袖口を手前まで持ってきて、腕を通す距離を短くします。通してから伸ばします
  4. 「今日は長袖の日」を、朝の前に伝える——前の晩に一式そろえるときに、「明日から長袖ね」と一言。朝に初めて知らされる形を避けます
  5. 園には「この週は着替えに時間がかかるかもしれません」と先に伝える——切り替えの週だけ、園でも同じことが起きます。先に伝えておけば、園の側も待つ準備ができます

※ 暑さ・寒さの感じ方が周囲と違う子もいます。児童発達支援ガイドラインは「健康・生活」の中で「衣服の調節、室温の調節や換気」を挙げています。厚着・薄着のことは、体調に関わるので、園と共有しておくと安心です。

園への頼み方——「部品」と「手助けの形」で伝える

園に伝えるとき、「着替えが苦手です」だけでは、園は何をすればよいか分かりません。前の節までで分けた「止まる部品」と「家で通っている手助けの形」を、そのまま渡します。

伝わりにくい言い方伝わりやすい言い方
着替えが苦手ですボタンの穴に押し込むところで止まります。いちばん上の1つを手伝うと、残りは自分で留めます
靴が左右逆になります靴の内側に絵を付けて、絵が合えば正しい向きにしています。園の靴にも同じ目印を付けてよいですか
朝の着替えに時間がかかります家では「ズボン→シャツ→靴下」の順で、靴下で終わりと決めています。園でも同じ順番と終わりの合図にしてもらえますか
服にこだわりがありますタグと首まわりのきつい服が通りません。体操着の首まわりだけ、家で試してから持たせてよいですか
長袖になると着替えられません切り替えの週は、袖をたくし上げてから通すと着られます。その週だけ、着替えの時間を少し長めに見てもらえますか

短い時間で伝える組み立て方そのものは、別記事「園や学校の面談で、何をどう伝えるか」で扱っています。ここでは、着替えについて園に頼めることの根拠を書きます。

頼めることの根拠①——保育所保育指針の「個別の支援」

保育所保育指針 第4章「子育て支援」は、保育所を利用している保護者への支援として、次の二つを置いています。

保育所保育指針 第4章 2(1)(2)

(1)保護者との相互理解 ア「日常の保育に関連した様々な機会を活用し子どもの日々の様子の伝達や収集、保育所保育の意図の説明などを通じて、保護者との相互理解を図るよう努めること。」

(2)保護者の状況に配慮した個別の支援 イ「子どもに障害や発達上の課題が見られる場合には、市町村や関係機関と連携及び協力を図りつつ、保護者に対する個別の支援を行うよう努めること。」

「様子の伝達や収集」は、園から家へも、家から園へも、の両方向です。着替えの「止まる部品」を園から教えてもらうことも、家の形を園に伝えることも、指針が園に求めている「相互理解」の中身に入ります。また、「発達上の課題が見られる場合」に「個別の支援」を行うよう努めることは、診断や手帳の有無を条件にしていません

頼めることの根拠②——障害者差別解消法の「合理的配慮」

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)第8条第2項は、事業者に対して、「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは……社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない」と定めています。保育所・認定こども園は、この法律でいう「事業者」に当たります(こども家庭庁の対応指針が、保育所と各類型の認定こども園を所管事業分野として挙げています)。

こども家庭庁の「こども家庭庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」には、この記事に直接関わる書き方が三つあります。

「診断がないと頼めない」ではありません

障害者差別解消法 第2条第1号の「障害者」の定義に、手帳や診断書の所持は要件として書かれていません。また、保育所保育指針の「個別の支援」も「発達上の課題が見られる場合」としか書いていません。着替えで止まっている部品があり、家でこうすれば通る、という形を持って、まず伝えてみてよいことです。

ただし、合理的配慮は「負担が過重でないとき」に「建設的対話」で決めるものです。頼んだことがそのまま通るとは限りません。「できないなら、代わりにどこまでなら可能か」を一緒に考えるのが、対応指針の書き方です。

頼めることの根拠③——保育所等訪問支援というしくみ

園と家だけで折り合いがつかないとき、専門職が園を訪問して、園の先生と一緒に考えるしくみがあります。児童福祉法 第6条の2の2が定める保育所等訪問支援です。条文は「当該施設を訪問し、当該施設における障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援その他の便宜を供与すること」と書いています。

こども家庭庁の保育所等訪問支援ガイドラインは、訪問前に把握する項目として「保育所等での生活の様子」の中に「日常生活動作:食事、排泄、着替え等」を挙げています。着替えは、このしくみが見ることになっている項目のひとつです。利用には市区町村の手続きが要ります。通っている事業所か、区市町村の窓口で「保育所等訪問支援は使えますか」と聞くところからです。

うまくいった形を、3行だけ残す

着替えは毎日のことなので、通った朝は流れていきます。けれど、「どうすれば通るか」は、園に渡す材料そのものです。3行でかまいません。

できなかった朝は書かなくてよい

毎日書く決まりにすると、書けない朝が増えたところで止まります。通った朝だけ書くと決めておけば、たまった紙がそのまま「通る形の一覧」になります。園の面談、健診の「心配なこと」の欄、事業所の計画の見直し——どこに持って行っても、そのまま使えます。

使う場面そこで何の役に立つか
園への伝達「着替えが苦手です」ではなく「下から留めると通ります」と言えます。園の側が同じ形を試せます
事業所の計画児童発達支援ガイドラインは、併行利用先との「得意不得意やその背景、声掛けのタイミング」の共有を支援内容に挙げています。書いた3行が、その共有の中身になります
健診・発達相談3歳児健診の問診票には着替えの設問がありません。「心配なこと」に○を付けたとき、当日その場で具体的に話せます
次の一手を決めるとき「前の晩に準備した日は通っている」「新しい服の日は止まっている」——どの条件が効いているかは、並べてみないと見えません

この記事で書かないこと

書けるのは、着替えを部品に分けること、朝の段取り、家と園の役目の分け方、道具の変え方、園に頼むときの言い方と根拠までです。それでも、毎朝のもめごとが「止まる部品が1つある」に変わるだけで、明日の朝は少し違うと思います。

出典

※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

園から「ひとりで着替えられるように」と言われました。家で仕上げないといけませんか。
保育所保育指針は、着替えを含む基本的な生活習慣について「家庭での生活経験に配慮し、家庭との適切な連携の下で行う」と、園の側に求めています。幼稚園教育要領にも同じ一文があります。家で仕上げてから園に出す、という形は、指針の書き方ではありません。「家ではこの形で通っています」を園に渡し、園で見えている「止まる部品」を教えてもらう——その両方向が、指針のいう「相互理解」です。
朝、手伝ってしまうと覚えないのではないですか。
覚える場面と、通す場面は分けてかまいません。朝は出る時刻が決まっていて待てる時間が短いので、朝は「通す」だけにし、覚える練習は夕方や休日に「止まる部品を1つだけ」で行う形をこの記事では書きました。保育所保育指針も、1歳以上3歳未満児の着替えを「保育士等の助けを借りながら、衣類の着脱を自分でしようとする」から書き始めています。
健診で、着替えのことは聞かれますか。
こども家庭庁の通知に載っている問診票の様式では、1歳6か月児は問25「上着を脱ごうとすることがありますか」の1問だけで、3歳児の問診票に着替えの設問はありません(全40問)。母子保健法施行規則 第2条の健診項目にも「着脱」の語はありません。心配があるときは、問診票の「現在何か心配なことはありますか」に○を付けて、当日その場で「育児上」の相談として話せます。
ボタンだけがどうしても留められません。
ボタンは「つまむ・穴を開ける・押し込む・引き抜く」を両手で分担する部品で、上から留めると、いちばん見えにくい首元から始まります。大きいボタンの服を1枚だけ用意するいちばん下から留める大人が穴の半分まで押し込んで「引き抜く」だけを子どもに渡す——この3つを、一度にひとつずつ試してみてください。手指の使い方の側から見てもらえる職種として作業療法士がいます。事業所や区市町村の発達相談で聞けます。
靴の左右を、どうすれば見分けられますか。
左右の違いは靴の側に手がかりが無いので、大人が思うほど目立ちません。靴の内側(土踏まず側)に、左右で絵が合う目印を付けると、並べたときに絵が合えば正しい向きになります。園の靴に目印を付けてよいかは、園に確かめてください。「家ではこうしています。園の靴にも同じ目印を付けてよいですか」という頼み方が、そのまま伝わる形です。
診断も手帳もありません。園に配慮を頼んでいいのでしょうか。
頼んでよいことです。障害者差別解消法 第2条第1号の「障害者」の定義に、手帳や診断書の所持は要件として書かれていません。保育所保育指針の「個別の支援」も「発達上の課題が見られる場合」としか書いていません。こども家庭庁の対応指針は、本人の意思表明が難しいときに「家族……が本人を補佐して行う意思の表明も含む」としています。ただし合理的配慮は「負担が過重でないとき」に「建設的対話」で決めるものなので、頼んだことがそのまま通るとは限りません。「代わりにどこまでなら可能か」を一緒に考える形になります。
衣替えの週だけ、着替えが止まります。
「いつもの服」が「違う服」になる週です。長袖は袖に腕を通す距離が長く、途中で手が見えない時間も長くなります。上だけ先に長袖にして下はいつもの、から始める切り替える前の休日に一度着ておく袖をたくし上げてから通す前の晩に「明日から長袖」と伝える——そして園には「この週は着替えに時間がかかるかもしれません」と先に伝えておくと、園の側も待つ準備ができます。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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