こども家庭庁の通知「乳幼児に対する健康診査について」(改正後全文・令和7年9月1日 第7次改正)には、市町村が使う1歳6か月児・3歳児健康診査票の様式が丸ごと載っています。その用紙の「判定」欄に印刷されている選択肢は、次の四つだけです。
| 判定欄の四つ | 書かれている意味と、そのあとに起きること |
|---|---|
| 1 異常なし | この健診で確かめた項目に所見が付かなかった、ということです。 → 次の健診の予定に戻ります |
| 2 既医療 | その項目について、すでに医療機関にかかっている、ということです。 → 健診としては新しい紹介をせず、かかっている医療機関で続けます |
| 3 要経過観察 | 所見はあるが、いますぐ紹介するほどではない、ということです。 → 市町村のフォローアップの対象になります。この記事が扱うのはここです |
| 4 要紹介 (要精密・要治療) | この健診の場で確かめられる範囲を超えている、ということです。 → 様式の判定欄のすぐ下に「紹介先」という記入欄があります。書かれた先へ進みます |
「様子を見ましょう」「もう少し見てみましょう」「次にもう一度お会いしましょう」——会場で耳から入る言葉は、多くの場合この3 要経過観察を、その場の言い方に置き換えたものです。
こども家庭庁が周知している令和7年度改訂版 5歳児健康診査マニュアルは、判定の意味を医師向けにはっきり書き分けています。要経過観察についての一文はこうです。
「経過観察は何らかの所見があり異常なしとは言えないが、直ちに要紹介と判断する程度でもない場合が該当します」
つまり要経過観察は、「何もなかった」でも「すぐに医療につなぐ」でもない、その中間に置かれた枠です。所見はあった、けれど今日この場で決めきる段階ではない——そう読むのが、様式と国のマニュアルに沿った読み方です。
この言葉が伝わりにくいことは、自治体の会議の場でも指摘されています。港区の「5歳児健診導入に向けた検討委員会」(第4回・令和7年9月3日)の資料には、委員の意見として次の趣旨が記録されています。
言葉がやわらかく作られているぶん、「何もなかった」と読めてしまう——そのことは、言葉を選んだ側も分かっているということです。だからこの記事では、やわらかい言い方の下に何が書かれているのかを、様式の欄そのもので確かめていきます。
※ 5歳児健康診査マニュアルは5歳児健診向けに書かれた資料です。判定の四区分そのものは1歳6か月児・3歳児の健康診査票と共通しているため、区分の意味を確かめる材料として引いています。
健診票を「1枚の紙に判定が1つ」と思っていると、話が噛み合わなくなります。通知に載っている3歳児健康診査票には、判定欄が四か所あります。診察所見・眼科所見・耳鼻咽喉科所見・歯科所見の、それぞれに1つずつです。しかも選択肢の言葉がそろっていません。
| 3歳児健康診査票の判定欄 | 印刷されている選択肢 |
|---|---|
| 診察所見の判定 身体発育・精神発達・運動機能・情緒行動などの欄がここに集まっています | 1 異常なし / 2 既医療 / 3 要経過観察 / 4 要紹介(要精密・要治療) 下に「紹介先」「診査医名」の欄 |
| 眼科所見の判定 視力・屈折・眼位異常・眼球運動異常の欄 | 1 異常なし / 2 既医療 / 3 要経過観察( か月位) / 4 要精密検査 期間を書く欄が付いています |
| 耳鼻咽喉科所見の判定 聴力・ティンパノメトリーのほか「言語発達の遅れ 無・有」「構音障害 無・有」の欄 | 1 異常なし / 2 既医療 / 3 要経過観察( か月位) / 4 要精密検査 ここにも期間の欄 |
| 歯科所見の判定 むし歯・軟組織異常・咬合異常・清掃不良の欄 | 1 問題なし / 2 要指導 / 3 要経過観察 / 4 要治療 言葉が「異常なし」ではなく「問題なし」になります |
ここで気づいておきたいのは、ことばのことが記録される欄が、診察所見だけではないということです。3歳児健康診査票では「言語発達の遅れ」と「構音障害」の欄が耳鼻咽喉科所見の中にあります。聞こえの確認とひとつづきになっているからです。
同じ通知の別添6「3歳児健康診査のお知らせとお願い」に、その理由がそのまま書かれています。この年齢でかかりやすい滲出性中耳炎は痛みの訴えがないため保護者が気づきにくく、聞こえにくい状態が長く続くとことばの発達に影響が出てくることがある——だから3歳児健診は聞こえを確かめるよい機会である、という説明です。
ことばのことで要経過観察が付いたとき、それが耳の欄なのか、診察所見の欄なのかで、次に見る場所が変わります。ここは聞いておく価値があります。
1歳6か月児健康診査票には、判定欄が診察所見と歯科所見の二か所あります。3歳児健診で増える眼科所見・耳鼻咽喉科所見の欄は、1歳6か月の様式にはありません。これは母子保健法施行規則 第2条の項目立てと対応しています。1歳6か月児健診の項目は11個、3歳児健診の項目は13個で、増える2つが「眼の疾病及び異常の有無」と「耳、鼻及び咽頭の疾病及び異常の有無」です。
※ 判定欄の様式は国の通知に載っているものです。実際にお住まいの市区町村がどの言い方で結果を伝えるか、結果の紙を渡すかどうかは、自治体ごとに違います。
この記事でいちばんお伝えしたいのが、この欄です。3歳児健康診査票の眼科所見と耳鼻咽喉科所見の判定欄は、こう印刷されています。
1 異常なし 2 既医療 3 要経過観察( か月位) 4 要精密検査
要経過観察のうしろに、期間を書き込む空欄が用意されています。つまりこの判定は、はじめから「何か月みるか」を決めて書く前提で設計されています。
「様子を見ましょう」が漠然と聞こえるのは、その場で期間が言葉にならなかったからであることが多いのだと思います。けれど様式の側には、期間を書く場所がある。ですから、その場で「何か月くらい見ますか」と聞くのは、様式に沿った質問です。
判定欄の下には「診査医名」の記入欄があります。眼科所見・耳鼻咽喉科所見・歯科所見にはそれぞれ別の診査医名欄があり、つまりその欄を見た医師が、その欄の判定と期間を書くという作りです。
ただし、健診全体としての方向づけは医師1人で決めているわけではありません。乳幼児健康診査事業 実践ガイドは、健診のあとに事後カンファレンスを開き、医師・歯科医師の診察結果、保健師・助産師・看護師・管理栄養士・歯科衛生士などの情報を持ち寄って総合的判断を行う、と書いています。そこで「継続的な支援が必要」と判断された親子が「フォローアップの対象」になり、保健師等による経過観察や支援、必要に応じた医療・療育機関・保育所等との連携につながっていきます。
念のため書いておくと、「( か月位)」の欄があるのは3歳児健康診査票の眼科所見と耳鼻咽喉科所見だけです。1歳6か月児健康診査票の判定欄にも、3歳児健康診査票の診察所見の判定欄にも、この期間欄は印刷されていません。1歳半で要経過観察になった場合の期間は、様式ではなくその市区町村のフォローアップのやり方で決まる、ということになります。だからこそ、期間を口で聞いておくことに意味があります。
※ ここで書いている欄の有無は、こども家庭庁の通知(改正後全文)に載っている様式を1欄ずつ確かめたものです。自治体が独自に様式を足している場合まではこの記事では確認していません。
5歳児健康診査マニュアルは、要経過観察をどう伝えるかについて、医師に向けてかなり強い言い方をしています。そのまま引きます。
「単に経過を見ましょうと言って終わることは絶対に控えてください。健診では、医師としての所見を伝え、次にどうしたらよいかという情報を提供することがもっとも重要です。」
さらに、専門相談の章にはこうあります。「『様子を見ましょう』の代わりに、こどもの発達を促すことにつながる行動変容の助言を行うことが大切です。」
同じマニュアルは、伝え方についても「疑い病名を告げるよりも医師としての見立て(所見)とその意味を伝えて、解決の手立てを知るために専門職に相談してみましょう、と伝える」ことを勧めています。病名ではなく所見を、そして次の一手を——という設計です。
これを保護者の側から読み直すと、こうなります。「何を見て、次に何をすればよいか」を聞くのは、遠慮ではなく、国が想定しているやりとりそのものだということです。
会場では子どもを追いかけていて、それどころではないのが普通です。帰ってから聞いても構いません。母子健康手帳と、健診の案内に載っている保健センター(保健所・健康支援センター)の電話番号を手元に置いて、「先日の健診で経過観察と言われたのですが、次にどこで見ていただけますか」と伝えれば話が通ります。
新宿区の「子どもの健診」のページにも、「ご相談のある方は担当の保健センターまでご連絡ください」と書かれています。相談は健診の日だけのものではありません。
健康診査票をよく見ると、医師の判定欄とは別に、もう一つの判定欄が印刷されています。1歳6か月児健康診査票にも3歳児健康診査票にも、同じ形であります。
1 特に問題なし 2 保健師による支援が必要 3 その他の支援が必要( )
そして、その下に「判定者」という欄が別に用意されています。医師の判定欄の下は「診査医名」ですから、この欄は医師以外の人が書くことがあるという作りです。
この欄のすぐ近くには、「育児環境等(ア 生活リズム/イ 母の心身状態/ウ その他)」「心配事 無・有( )」「栄養 良・要指導」という欄も並んでいます。つまり健診票は、子どもの所見と家庭の状況を、別々の欄で受け止める設計になっています。
問診票の側も同じです。3歳児健康診査問診票には、「あなたは、お子さんに対して、育てにくさを感じていますか」(感じない・時々感じる・いつも感じる)という設問があり、「時々感じる」「いつも感じる」と答えた人に向けて、「育てにくさを感じた時に、相談先を知っているなど、何らかの解決する方法を知っていますか」という設問が続きます。ほかにも「あなたの最近の心身の調子はいかがですか」「ゆったりとした気分でお子さんと過ごせる時間がありますか」「現在何か心配なことはありますか」といった設問が並びます。
ここに正直に書くことは、子どもの判定を悪くするためのものではありません。「2 保健師による支援が必要」に丸が付けば、それは保健師がついてくれるということです。要経過観察のあいだ、いちばん身近に相談できる相手が決まる欄だと考えてよいと思います。
国の通知に、これがはっきり書かれている箇所があります。こども家庭庁ほか関係省庁の連名通知「5歳児健康診査の実施に当たって求められる地域のフォローアップ体制等の整備について」(令和6年3月29日)は、健診の「判定」に、わざわざ次のかっこ書きを付けています。
判定とは「健診後カンファレンス等で総合的な判断に基づいて行われるものであり、専門医療機関等で行われる診断とは異なる」
要経過観察は診断名ではありません。健診という場で見えた範囲についての、そのときの整理です。
「様子を見ましょう」と言われると、こちらが一人で見ているように感じますが、多くの自治体には要経過観察になった子のための枠が名前つきで用意されています。東京23区の公式ページから、実際の名前を二つ挙げます。
| 自治体の枠の例 | 対象と中身(公式ページの記載) |
|---|---|
| 荒川区 乳幼児健診【経過観察健診】 | 対象=乳幼児健診等の結果、発育、発達等の経過を観察する必要があると判断されたお子さん。 「経過観察(小児)」=小児科・小児神経科の診察、育児・栄養相談、理学療法士による相談(運動面)。 「経過観察(心理)」=臨床心理士によることばの発達等の相談。 いずれも予約制。持ち物に「事前にお渡ししている予約票またはハガキ」と書かれています |
| 北区 幼児経過観察心理相談 | 対象=1歳6か月児健診、3歳児健診を受けた後で、発育・発達の経過観察、相談が必要なお子さん。心理相談員が相談を受けます。 「ことばが遅い、動きが激しすぎるなど、お子さんの発育・発達で心配なことがありましたら、ご相談ください」と案内されています。 事前予約制。住まいの地区担当の健康支援センターに申し込みます |
名前は自治体ごとに違います(経過観察健診・発達健診・心理相談・専門相談・事後相談・親子教室など)。共通しているのは、健診とは別の日に、別の職種が、もう一度見る枠だということです。
5歳児健康診査マニュアルは、専門相談に健診日の当日に行われるものと、健診後に別の日程で行われる事後相談の2タイプがあると整理しています。そして、日常生活での心配事のような相談であれば当日の専門相談でよく、発達が遅い・集団行動に参加できないなどの相談は、別の日程で行われる事後相談がよいとしています。
専門相談の種類として挙がっているのは、子育て相談・栄養相談・療育相談・心理発達相談・教育相談。携わる職種として、保健師、保育士等、管理栄養士、児童発達支援センターの相談員、言語聴覚士、作業療法士、心理担当職員、教育委員会の担当者が挙げられています。
実践ガイドは、フォローアップの中身をこう書いています。経過観察健診や二次健診等の活用のほか、まず保健師等の担当者が親子の状況をアセスメントして個別支援を行い、必要に応じて親子教室などの集団的支援を組み合わせ、定期的にフォローアップ結果を評価し、支援計画を修正しながら継続的な支援を行う、と。
実践ガイドには、「発達障害は、1回のスクリーニングのみで専門機関へ紹介することが困難なことがある。一定期間のアセスメントと保護者への心理的支援を行いながら、診断につなげることや福祉等による支援の要否を判断していく必要がある」という記述があります。
要経過観察という枠が用意されているのは、判断を先送りにするためではなく、1回では決められないことを、期間をとって確かめ直すためだと読めます。
経過観察のあいだにいちばん値打ちが出るのは、次に会う人に渡せる形の記録です。健診は短時間で、しかも非日常の場です。改訂2版 身体診察マニュアルも、「短時間の診察においては、行動観察・評価を十分に行うことは困難である。また、健康診査という非日常場面であることにも留意する必要がある。緊張したり、恥ずかしがったりして医師との会話ができないこともある」と書いたうえで、保護者からの情報を問診から把握し、診察所見とあわせて判断する、保育所等に入園している場合は同年齢の子どもとの対人関係や集団行動の状態についても情報を得ておくとよいとしています。
つまり、家と園での様子は、診察所見と並ぶ判断材料として最初から想定されています。書いたものを持っていけば、そのぶん確かめる材料が増えます。
母子健康手帳は、思い出のノートではなく法律に位置づけられた記録です。母子保健法 第16条第2項は、健康診査や保健指導を受けたときは「その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない」としています(乳幼児の場合は保護者について同様)。同法施行規則 第7条は、母子健康手帳に「妊産婦の健康管理及び乳幼児の養育についての相談窓口に関する情報」を記載することも定めています。相談先は、手元の手帳にすでに書かれている、ということです。
気になっている場面が短い動画で残っていると、相談の場で「こういうことです」と一度で伝わることがあります。10〜20秒で構いません。
撮るのがしんどい日は、撮らなくて大丈夫です。記録は、あとで誰かに説明する負担を減らすための道具で、増やすほど良いというものではありません。
※ 実践ガイドは、支援する側にも「対応の全てを家族に委ねないように注意します」という趣旨の記載を置いています。家で全部やる前提の仕組みではありません。
「次の連絡まで待つべきだろうか」と迷われるところですが、待つ必要はありません。母子保健法には、相談についての条文があります。
「市町村は、母性又は乳児若しくは幼児の健康の保持及び増進のため、母子保健に関する相談に応じなければならない。」
第2項では、支援を必要とする者について支援に関する計画の作成その他の支援を行うものとする、とされています。また第10条(保健指導)は、市町村が乳児又は幼児の保護者に対して必要な保健指導を行い、又は医師・歯科医師・助産師・保健師について保健指導を受けることを勧奨しなければならないと定めています。
「相談に応じなければならない」は、市町村の義務として書かれた言葉です。要経過観察の期間中かどうかとは関係がありません。
杉並区の「乳幼児健康診査」のページには、区として1歳児健診を実施していないことにふれたうえで、「お子さんの発達にご心配があれば、担当地域の保健センターへお問い合わせください」と書かれています。健診と健診のあいだにも窓口は開いている、という書き方です。
こども家庭庁の「乳幼児健診に関する取組み」のページには、「特別な配慮が必要な児に対する乳幼児健康診査のかかり増し経費支援事業」という事業が載っています。説明にはこうあります——発達障害のため集団健診会場に行くことが困難な児や医療的ケア児などの特別な配慮が必要な児に対する健診を推進するため、市町村への支援を行っている、と。
会場に入れなかった、途中で出てしまった、順番が待てなかった——それは国の側でも前提に入っている状況です。行けなかったこと自体を相談してよい、ということでもあります。
決めた期間が過ぎたあとに起きることは、大きく三つに分かれます。5歳児健康診査マニュアルは、健診後の経過を三つのグループに分けて説明しています(5歳児健診についての記述ですが、要経過観察の行き先の型としてそのまま参考になります)。
| 経過観察のあとに分かれる三つ | 中身 |
|---|---|
| 専門相談で区切りがつく | 健診当日に専門相談を行い、以後は保護者・保健師・保育士等の見守りで進むグループ。 マニュアルの分類では「要経過観察」 |
| 福祉のサービスにつながる | 健診後の事後相談につなぎ、その後、児童発達支援センターなどの福祉サービスを活用して進むグループ。 マニュアルの分類では「要経過観察(要療育を含む)」 |
| 医療機関で確かめる | 専門相談や福祉サービスだけでは課題の解決が難しく、病気の鑑別などのために専門医療機関等を受診するグループ。 マニュアルの分類では「要紹介」 |
要経過観察は行き止まりではなく分岐点です。そして、どこへ分かれるかは、経過観察のあいだに集まった情報で決まります。家と園の記録が効いてくるのは、まさにここです。
通知の別添7に「1歳6か月児・3歳児 健康診査 精密健康診査(判定相談)受診票」という様式があります。要紹介になったときに使われる票です。この票には「有効期間 令和 年 月 日から 月 日まで」という欄があり、注意書きには「この票で精密健康診査を受けるときは、無料で受診できます」と書かれています。受け取ったら、有効期間を最初に見る——それだけ覚えておけば十分です。
1歳6か月児・3歳児健康診査票のいちばん下には、「記事(精密健診の結果等)」という欄があります。紹介先で分かったことは、この欄に戻って記録される作りです。健診票は1回で終わる紙ではなく、あとから書き足される台帳だということです。
経過観察の枠は、荒川区の経過観察健診も北区の幼児経過観察心理相談も予約制です。荒川区の持ち物には「事前にお渡ししている予約票またはハガキ」とあり、北区は「お住まいの地区担当の健康支援センターにお申し込みください」となっています。区から連絡が来る形と、こちらから申し込む形の両方があるということです。ここが分からないまま待つと、時間だけが過ぎます。
5歳児健康診査マニュアルは、市区町村が行う健診の精度管理について、「精度管理において、要紹介(要精密・要治療)、要経過観察となった児の結果の管理が必要です」と書いています。要経過観察になった子の結果を追うことは、市区町村の側の仕事として書かれているということです。連絡が来ないことに気づいたら、それを窓口に伝えることは、こちらから催促するというより仕組みを動かすことに近いと考えてよいと思います。
令和6年3月29日の連名通知には、「関係機関に対してこどもや保護者に関する情報の共有を依頼する際には、あらかじめ市町村が保護者から同意を取得することが必要となるので留意すること」と書かれています。園や学校に健診の結果を伝えるかどうかは、保護者の同意が要るということです。同意を求められたら、誰に・何を・何のために伝えるのかを聞いてから決めて構いません。
「診断がつかないと療育は使えない」と思われていることがありますが、法律の条文はそういう組み立てにはなっていません。順に見ます。
児童福祉法 第4条第2項は、この法律でいう障害児を、身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害者支援法第2条第2項に規定する発達障害児を含む)などと定義しています。この条文に「医師の診断書がある児童」という限定は書かれていません。
条文を通して読むと、判断の中心にあるのは診断名ではなく「心身の状態」と「環境」と「意向」です。ただし、市区町村が実際に何の書類を求めるかは自治体ごとに違います。医師の意見書を求める区もあれば、相談機関の意見で足りる区もあります。ここは推測せず、お住まいの区の窓口で「何が必要ですか」と直接確かめるのがいちばん確実です。
児童福祉法 第21条の5の3第2項は、保護者の負担額を、家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額とし、その額が費用の100分の10に相当する額を超えるときは、当該相当する額とする、と書いています。
負担するのは「世帯の所得に応じた月額の上限額」と「かかった費用の1割」の、低いほうまでです。上限額に達したあとは、その月に何回通っても負担は増えません。「負担は費用の1割」とだけ覚えると、実際より高く見積もることになります。
就学前の期間には無償化のしくみもあります。適用の範囲や手続きは自治体で違うため、金額の話は窓口でご確認ください。
5歳児健康診査マニュアルは、「医療機関につなげる必要がある幼児についても、健診当日から『診断前からの支援』が開始されることが望まれます」と書いています。診断がついてから支援が始まる、という順番だけを想定した書き方にはなっていません。
同じマニュアルには、要経過観察と判定されたあとの経過が事例として載っています。集団行動や多動を指摘され、専門相談を受け、保護者の同意を得て園やかかりつけ医と指導内容を共有し、園と家庭で事前の声かけやほめる関わりを重ねて落ち着いていった例。専門相談での助言を続けたが変化が乏しく、保健師が児童発達支援センターにつなぎ、年長になってから支援を始めた例。いずれも、経過観察のあいだに何かが動いているという点で共通しています。
※ ここに書いた事例は、こども家庭庁が周知している5歳児健康診査マニュアルに掲載されている例です。当教室の利用者の事例ではありません。
※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。