まず、いちばん知っていただきたいことから書きます。こども家庭庁の「乳幼児健診に関する取組み」というページには、市町村向けの補助事業がいくつも並んでいます。その中に、こういう名前の事業があります。
特別な配慮が必要な児に対する乳幼児健康診査の
かかり増し経費支援事業
令和8年度予算 0.5億円。実施主体は市町村、補助率は2分の1、補助基準額は1件あたり30,000円です。
この事業の資料に、目的がこう書かれています。読点の位置まで、原文のまま引きます。
乳幼児健診をはじめとした母子保健施策については、受診率等の向上に向けて周知広報を行うなど、市町村においてさまざまな取組が行われている一方で、乳幼児健診等の母子保健サービスの享受が難しい児がいることが課題として指摘されている。たとえば、発達障害のため集団健診会場に行くことが困難な児や医療的ケア児などは、通常の集団健診(歯科健診を含む。)の受診が難しく、特別な配慮が必要な場合があると考えられる。
つまり、「集団健診の会場には行きにくい子がいる」ということが、国の予算書に書かれているということです。これは、頑張って連れて行けなかった家庭の落ち度として扱われていません。制度の側が想定して、お金を用意している状況です。
同じ資料の「事業の概要」には、対象と内容がこう書かれています。ここがいちばん実用的です。
| 項目 | 資料に書かれている中身 |
|---|---|
| 対象 | 市町村が集団健診を行っている乳幼児健診について、集団健診を行うことが困難な、特別な配慮が必要な児に対して個別に対応を行っている場合 |
| 内容 | 市町村が特別な配慮が必要な児に対して、訪問健診や個別健診等の個別対応を実施した場合にかかる、通常の健診費用からのかかり増し経費について、補助を行う =「集団の会場に来られないなら受けられません」ではなく、「来られないなら別のやり方で」が制度の形です |
| 実施主体 | 市町村(補助率2分の1・補助基準額 1件あたり30,000円) =この道を動かせるのは、お住まいの市区町村です。だから相談先も市区町村になります |
こども家庭庁のページ本文でも、同じことがこう説明されています。「乳幼児健診を含め、母子保健サービスの享受が難しい児がいることが課題として指摘されています。本事業では、発達障害のため集団健診会場に行くことが困難な児や医療的ケア児などの特別な配慮が必要な児に対する健診を推進するため、市町村への支援を行っています。」
保健センターに電話するとき、謝ることから始めなくて大丈夫です。「集団の会場が難しいので、個別の受け方について相談したいのですが」——この一言で、話は制度の中に入ります。
※ この補助事業は市町村向けのものです。お住まいの市区町村がこの事業を使っているかどうかは、市区町村ごとに違います。使っていない場合でも、後の節で挙げるとおり、日程変更・会場変更・医療機関での個別健診といった道は別にあります。
「受けさせなかった親」として何かが起きるのではないか。夜中に検索する手が止まらないのは、たいていこの不安です。条文で確かめます。
市町村は、次に掲げる者に対し、内閣府令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。
一 満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児
二 満三歳を超え満四歳に達しない幼児
主語は市町村です。「行わなければならない」という義務を負っているのは、保護者ではなく自治体の側です。では保護者について、この法律は何と書いているか。第4条第2項です。
乳児又は幼児の保護者は、みずからすすんで、育児についての正しい理解を深め、乳児又は幼児の健康の保持及び増進に努めなければならない。
「努めなければならない」は、法令の言い方では努力義務です。義務違反として何かが科される作りにはなっていません。
母子保健法の本則は、第1条(目的)から第28条(権限の委任)までです。第25条は削除されています。この間に、健康診査を受けなかったことに対する罰金・過料・その他の罰則を定めた条は、置かれていません。附則には「罰則に関する経過措置」という文言が出てきますが、これは他の法律を改正したときに置かれる定型の経過規定で、母子保健法そのものが罰則を持っていることを意味しません。
同じことを、健診の項目を定めている母子保健法施行規則でも確かめました。こちらも第1条から第14条までと附則で、罰則の定めはありません。
確認できたこと:母子保健法および同施行規則に、健康診査を受けなかったことへの罰則の定めはありません。
確認できないこと:お住まいの市区町村が独自に何かを定めていないかまでは、この記事では確かめられません。ただし、東京23区の健診案内を実際に読んだ範囲では、未受診に対する不利益を書いているページは見つかりませんでした。書かれていたのは、いずれも「日を変えられます」「連絡してください」という案内でした。
こども家庭庁のサイトに掲載されている「乳幼児健康診査事業 実践ガイド」は、市町村の担当者向けに書かれた実務書です。ここに、受診促し対応期間という言葉の定義があります。
受診促し対応期間とは、健診を受診しなくても未受診としない期間であり、その間は受診日の変更及び再通知を行うなど受診の機会を設ける。
そして「未受診」は、「受診促し対応期間中の健診を受診していない」と定義され、その期間を1歳6か月児健診・3歳児健診ごとに決めておくことが市町村に求められています。行けなかった日の翌日から未受診として数えられるのではなく、日を変えて案内し直す時間が、業務の中にあらかじめ組み込まれているということです。
ついでに、数のことも書いておきます。同じ実践ガイドが挙げている平成27年度の未受診率は、3〜5か月児 4.4%、1歳6か月児 4.3%、3歳児 6.7%です。3歳児健診では、100人のうち6人から7人が、その年度のうちには受けていない計算になります。珍しいことではありません。
相談の電話をためらう理由の多くは、「うまく説明できる自信がない」ことだと思います。けれど、日程や会場を変えてもらうのに、込み入った説明は要りません。実際の自治体の案内を読むと、理由を書かせる欄そのものが無いことが分かります。
たとえば新宿区の「子どもの健診」のページは、こう書いています。
※ 指定された日時以外でお受けになりたい場合は、個別のお送りする通知に記載のQRコードよりお申込み、または担当の保健センターへご連絡ください。
※ 指定された保健センター以外でお受けになりたい場合は、希望する保健センターへご連絡ください。
「やむを得ない事由があるとき」でも「病気のときに限り」でもなく、「お受けになりたい場合」です。5歳児健診についても「担当の保健センターでご都合がつかない場合は、他の保健センターでも予約ができます」と書かれています。
電話で言葉に詰まったときのために、言い方の見本として挙げておきます。どれも、そのまま伝えて構わない内容です。
「発達障害のため」と説明できなくても大丈夫です。「人の多い場所が苦手です」「待つのが難しいです」——観察できたことをそのまま言えば十分です。健診はこれから確かめる場であって、診断名を持って行く場ではありません。
※ 日程や会場を変えるやり方は自治体ごとに違います。通知に予約変更用のQRコードが付いている区、予約変更専用の電話番号を載せている区、窓口だけの自治体があります。まず手元の通知を、裏面まで見てください。
「健診=決められた日に、決められた会場で、大勢で」だけではありません。東京23区の実際の案内を3区分だけ読み比べると、受け方がいくつもあることが見えてきます。
これは意外に知られていないところです。1歳6か月児健診の一部または全部を、区内の契約医療機関で個別に受ける形をとっている区があります。
| 自治体 | 公式ページに書かれている受け方 |
|---|---|
| 新宿区 | 1歳6か月児健診=区内委託医療機関(計測・診察)。1歳6か月の頃に受診票を個別送付。 1歳6か月児歯科健診は担当の保健センター(集団)。3歳児健診・5歳児健診も保健センター =新宿区では、1歳半の内科部分はもともと「かかりつけで受ける」形です |
| 豊島区 | 集団と個別の二本立て。歯科健診・育児相談・心理相談・栄養相談は保健所/健康相談所で集団、内科健診は区と契約した医療機関で個別に無料。受診票は集団健診のお知らせに同封 =集団のほうが難しければ、まず内科健診だけでも医療機関で受けられます |
| 江戸川区 | 1歳6か月児健康診査(内科健診)=区内指定医療機関。「医療機関では、混雑や病気の感染を避けるため健康診査の日時を定めている場合がありますので、前もって医療機関にお問い合わせのうえ受診してください」 =電話で空いている時間を聞ける=待ち時間を選べる、ということでもあります |
この形が成り立つ根拠も、母子保健法にあります。
市町村は、この法律に基づく母子保健に関する事業の一部について、病院若しくは診療所又は医師、助産師その他適当と認められる者に対し、その実施を委託することができる。
こども家庭庁の通知「乳幼児に対する健康診査について」(改正後全文・令和7年9月1日 第7次改正)にも、「乳児一般健康診査受診票(医療機関委託健康診査)」という様式が丸ごと載っています。医療機関で受ける形は、例外の裏道ではなく、国の様式に最初から入っている受け方です。
実家に長く滞在している、里帰りから戻れていない——そういうときの手続きも、実際に用意されています。江戸川区の公式ページには「里帰り等で江戸川区以外の自治体で1歳6か月児健康診査を希望する場合」という項目があり、電子申請で他自治体への依頼申請ができると書かれています。申請の前に電話等で確かめる項目まで、こう指定されています。
また、引っ越しをまたいだ場合については、母子保健法にこういう条文があります。
市町村は、……健康診査等……を行うために必要があると認めるときは、他の市町村に対し、内閣府令で定めるところにより、当該妊産婦又は乳児若しくは幼児に係る健康診査等に関する情報の提供を求めることができる。
=前の自治体で受けた分の記録は、保護者がゼロから説明し直さなくても、行政どうしで確かめられる仕組みがあります。
母子保健法第12条は、1歳6か月児健診の対象を「満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児」、3歳児健診を「満三歳を超え満四歳に達しない幼児」と定めています。ここから先の言い方は、区によって少し違います。
| 自治体 | 公式ページの締め切りの書き方 |
|---|---|
| 豊島区 | 受診日現在、1歳6か月から2歳未満(2歳の誕生日の前々日まで)のお子さん |
| 江戸川区 | 1歳6か月から2歳未満のお子様とその保護者 (注)2歳になる日の前日まで受診できます。2歳を迎えると受診できません |
同じ法律の同じ条文から出ているのに、日にちの言い方が1日ずれて読めます。締め切りは、必ずお住まいの区の案内で確かめてください。そして、締め切りまでにまだ日があるなら——たとえば1歳7か月で行けなかったのなら、2歳になるまでの数か月がまるごと残っています。
ここがこの記事のいちばん実用的な部分です。健診の内容は、事前に伝えておけば動かせる部分があります。ただし、伝えなければ動きません。誰に、いつ、どう伝えるかを分解します。
通知が届いた日から、当日の受付までのいつでもです。当日でも動く部分があります。新宿区の3歳児健診の案内には、こう書かれています。
※ おむつが外れていないなど採尿が難しい場合、尿検査は後日でもできますので、受付時にお申し出ください。
=「その日にできなかった項目は、後日に回せる」ことが、区の公式ページに明記されている実例です。当日の受付でも、言えば変わります。
頼める中身を、具体物で並べます。すべてが叶うとは限りませんが、聞かなければ選択肢に上がりません。
| 頼めること | 言い方の見本と、根拠になる公式の記載 |
|---|---|
| 日を変える | 「指定された日時以外で受けたいのですが」 新宿区=QRコードまたは保健センターへ連絡/実践ガイド=受診促し対応期間中は受診日の変更と再通知を行う |
| 会場を変える | 「指定された保健センター以外で受けたいのですが」 新宿区=希望する保健センターへ連絡/5歳児健診は他の保健センターでも予約可 |
| 待たずに済む時間帯 | 「待ち時間が長いと難しいので、空いている時間帯はありますか」 豊島区=混雑緩和のため、生年月日により受付時間を分けて設定し、健診のお知らせで案内している |
| 別室・個別で | 「大勢の部屋が難しいので、別のお部屋でお願いできますか」 実践ガイド=障害がある子どもについて「家族の希望を確認したうえで、グループ学習への参加なしに最初から別室で個別指導をするなどの個別に配慮」がなされていた自治体がある |
| 順番を先に/後に | 「先に診察だけ済ませて、相談は最後にしていただけますか」 =会場での滞在時間そのものを短くする頼み方です |
| 訪問・個別で受ける | 「集団の会場が難しいので、個別の対応をお願いできますか」 こども家庭庁=特別な配慮が必要な児に対する訪問健診・個別健診等の個別対応に、市町村への補助がある |
| 一部を後日に | 「採尿が難しいのですが」 新宿区=尿検査は後日でもできる。受付時に申し出る |
| 通訳をつける | 「日本語での説明が難しいので、通訳をお願いできますか」 新宿区=保健センター4所にテレビ通訳システムを設置(詳しくは後の節) |
これも制度の中に最初から入っています。こども家庭庁の通知に載っている「3歳児健康診査のお知らせとお願い」という様式は、視力と聞こえの検査を家庭で行い、結果を書き込んで会場へ持って行くことを求めています。
そこで、ご家庭で視力検査を行い、その結果を3歳児健康診査の時にお知らせください。
アンケートは2種類あります。目の状態を確認するためのページ、それに耳の状態を確認するためのページであり、ごめんどうですが、その答えを全部書き込んだ上で3歳児健康診査の会場へお持ちくださるようお願いいたします。
国の様式が示す視力検査の道具は、切り取った輪の視標、ガーゼやティッシュで作る目隠し、距離を測るものさしだけです。2.5メートル離れて、上下左右の4方向のうち3方向以上正しく答えられたら見えたとする、と手順まで書かれています。新宿区の3歳児健診のページにも「視力・聴力は自宅での事前検査があります」と明記されています。
問診票も、家で書いて持って行けます。会場で書く時間がまるごと減ります。気になっていることは、問診票の余白に先に書いておくと、その場で言葉にできなくても伝わります。「人が多い場所が苦手です」「呼んでも振り向かないことがあります」——短くて構いません。
健診は、発達を見てもらえる唯一の機会ではありません。母子保健法には、健診とは別の入口がいくつも書かれています。
市町村は、母性又は乳児若しくは幼児の健康の保持及び増進のため、母子保健に関する相談に応じなければならない。
この条文の強さに、少し立ち止まってください。「応じるものとする」でも「努めなければならない」でもなく、「応じなければならない」です。健診に行けていない状態で電話をかけても、相談を受けることそのものは市町村の義務です。
同じ第9条の2の第2項は、支援を必要とする人について支援に関する計画(サポートプラン)を作り、支援の実施状況と本人の状態を定期的に確認して見直すことを定めています。計画の中身は母子保健法施行規則 第1条に書かれています。
市町村は、妊産婦若しくはその配偶者又は乳児若しくは幼児の保護者に対して、妊娠、出産又は育児に関し、必要な保健指導を行い、又は医師、歯科医師、助産師若しくは保健師について保健指導を受けることを勧奨しなければならない。
訪問については、条文の作りに注意が要ります。母子保健法 第11条は「新生児の訪問指導」、第17条は「妊産婦の訪問指導等」、第19条は「未熟児の訪問指導」で、いずれも幼児期の家庭訪問を直接定めた条ではありません。ただし第11条第2項に、こうあります。
前項の規定による新生児に対する訪問指導は、当該新生児が新生児でなくなつた後においても、継続することができる。
そして第13条第1項は、第12条の義務健診のほかに、市町村が「必要に応じ」健康診査を行い、または受けることを勧奨しなければならないと定めています。1歳半でも3歳でもない時期に、市町村の判断で健診や相談の機会を設けられる根拠がここにあります。
実際には、幼児期の家庭訪問は、こうした条文と第10条の保健指導を組み合わせて行われています。「来てもらえますか」と聞いて構いません。前の節で見たとおり、国の補助事業は訪問健診という言葉を名指しで使っています。
※ 健診で「要観察」「要紹介」と書かれたあとに進む道については、1歳半健診で「様子を見ましょう」と言われたらで判定欄の四区分から詳しく書いています。
健診に行けなかった時期の欄が白いままになっている。就園のとき、就学のとき、受給者証の申請のときに困るのではないか——この心配について、確かめられたことと確かめられなかったことを分けて書きます。
妊産婦は、医師、歯科医師、助産師又は保健師について、健康診査又は保健指導を受けたときは、その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない。乳児又は幼児の健康診査又は保健指導を受けた当該乳児又は幼児の保護者についても、同様とする。
「受けたときは、その都度」です。受けていない期間について、何かを書き込む義務が生じているわけではありません。そして前の節で確かめたとおり、この法律に罰則はありません。
とはいえ、母子健康手帳が窓口で実際に使われる場面はあります。豊島区の1歳6か月児健診のページには、受診票を紛失した方や送付時期を過ぎて転入した方の申請について、こう書かれています。
母子健康手帳の受診歴を確認し、受診票を交付いたします。医療機関受診後の交付はできませんので、ご注意ください。
=母子健康手帳の記録は、受診票を出すかどうかの確認に使われます。そして「先に受診票をもらってから医療機関へ」の順番です。
| 手続き | 所要日数(豊島区・江戸川区の公式ページより) |
|---|---|
| 窓口で申請 | 豊島区=母子健康手帳を持参、原則当日。江戸川区=本人確認書類と母子健康手帳を持参、その場で受診票を渡す(混雑時は待ち時間あり) |
| 郵送・電子申請 | 豊島区=2週間程度。江戸川区=電子申請後、切手を貼った返信用封筒を送付し、投函後10日から2週間程度(有効期限1か月、A4三つ折りが入る封筒。最小で長3封筒に110円) =急ぐなら窓口、動けない時期なら郵送、と選べます |
これは母子保健法施行規則 第7条が定めています。母子健康手帳に記載する事項として、次のものが挙げられています。
母子健康手帳を開いて、相談窓口のページを探してください。法令で載せることになっている情報なので、必ずあります。電話番号を1つ、明日かける先として決めておけば、今夜の検索はそこで終われます。
母子健康手帳の「保護者の記録」のページについて、実践ガイドはこう位置づけています。「母子健康手帳の『保護者の記録』の項目は、すべての健診従事者が踏まえておくべき標準的な発育・発達の目安である」。つまり、あのページの質問は、健診で見ているものと同じ枠組みで作られています。
健診に行けていない時期でも、そのページは家で書けます。あとで相談に行くとき、その記録はそのまま材料になります。書けない項目は空けたままで構いません。空欄も情報です。
障害児通所支援の受給者証(通所受給者証)の申請に、母子健康手帳の記録が法令上の要件として求められる——という定めは、今回確認できませんでした。窓口で母子健康手帳の持参を求める自治体はありますが、それは成長の経過を一緒に見るためのもので、健診の欄が空いていることが申請を止める根拠だと書いた公式ページは見つかりませんでした。お住まいの自治体の案内で必要書類をご確認ください。
健診を受けないままでいると、保健センターから電話が来たり、保健師が家に来ると言われたりすることがあります。あの連絡が何なのかを、市町村向けの実務書で確かめます。
実践ガイドは、健診を受けていない人への対応を「健診後のフォローアップ」という業務に位置づけています。そして、その業務が終わる時点を「現認のうえで支援の必要性について判定した時点」と定義しています。「現認」には、こういう定義が付いています。
現認とは……「保健師若しくは関係機関や関係者が目視により児を確認すること」と定義する。保護者への電話による聞き取りや、親戚や近隣住民からの情報提供は現認には含めない。
なぜ「会いたい」と言われるのかが、ここで分かります。電話だけでは、市町村の側の業務が終わらない決まりになっているのです。逆に言えば、一度どこかで会えれば、その一連の連絡はそこで区切りがつきます。健診会場でなくても構いません——窓口でも、家でも、支援センターでも、目視で会えれば同じです。
同じ実践ガイドは、支援の基本的な考え方を「全ての親子に必要な支援が行き届くことを保障する」と書いています。そして、断られたときの姿勢についても、こう書いています。
支援を拒否する場合や、支援の利用に同意が得られない場合には、「全ての親子に必要な支援が行き届くことを保障する」との標準的な保健指導の考え方に基づいて、丁寧なフォローアップと相手の状況に合わせた支援への促しが必要である。
実際の場面では、保護者の意欲・関心、支援者との関係や来所の可能性、家庭訪問の同意が得られるか、家庭訪問は受け入れ難くても、ほかの母子保健事業や子育て支援センターなどの事業なら参加できないか、さらには家族や近隣との関係など、様々な状況の違いによって、支援方法やタイミングを工夫する。
「家庭訪問は受け入れ難くても、別の形なら」——この選択肢は、行政の側の教科書に最初から書かれています。だから、「家には来ないでほしいが、窓口には行けます」と言って構いません。断ることと、つながらないことは別です。
留守番電話が入っていて、かけ直しづらいときのために、そのまま使える言い方を置いておきます。
※ 実践ガイドは市町村の担当者向けに書かれた実務書です。ここで引いているのは業務の定義と考え方であって、お住まいの自治体が実際にどう運用しているかは自治体ごとに違います。
「行けない」の理由が子どもの側だけにあるとは限りません。ここでは、事情ごとに使える手立てを、確認できた範囲で挙げます。
これは実際に区の公式ページで確かめて、驚いたことです。新宿区の「テレビ通訳システム」のページには、こう書かれています。
区の窓口でテレビ通訳システムが利用できます。タブレット端末で言語を選ぶと、テレビ電話で通訳者が、会話を通訳します。区役所での手続きや相談に通訳が必要な場合は、お気軽に職員にお申し付けください。
設置場所=本庁舎、第2分庁舎、しんじゅく多文化共生プラザ、子ども総合センター、保健センター(4所)
健診が行われている保健センターそのものに置かれています。対応言語は平日の時間帯ごとに分かれていて、公式ページに挙げられているのは次の18言語です。
| 開始時間(いずれも平日・窓口開設時間まで) | 対応している言語 |
|---|---|
| 8時30分〜 | 英語・中国語・韓国語・スペイン語・ポルトガル語・フィリピン語・ベトナム語・ネパール語 |
| 9時〜 | タイ語・ヒンディー語・インドネシア語・カンボジア語・ミャンマー語・マレーシア語 |
| 10時〜 | フランス語・ロシア語 |
| 事前に電話で予約 | ウクライナ語・ベンガル語 |
行政向けの「母子健康手帳の交付・活用の手引き」にも、「外国語版母子健康手帳の準備があれば、外国語版を交付しましょう。市民の通訳ボランティアなどの制度がある場合には、交付時に通訳してもらえるよう事前に調整します」と書かれています。通訳を頼むことは、特別なお願いではなく、担当者が想定している手順のひとつです。
※ 通訳の仕組みは自治体ごとに違います。数に限りがあり利用できないことがある、と新宿区も注記しています。予約の電話のときに「通訳をお願いしたい」と先に伝えておくのが確実です。
母子保健法 第9条の2第2項と施行規則 第1条は、包括的な支援を必要とすると認められる人について、サポートプランを作り、支援の実施状況と状態を定期的に確認して見直すことを市町村の仕事としています。子どもの健診の話として持ちかけなくても構いません。「自分のほうが動けない」と伝えることが、そのまま入口になります。
「子どもの健診に行きたいのですが、いま私自身が朝から動くのが難しいです。どういう受け方がありますか」
「一人で二人を連れて行くのが難しいです。短い時間で済む方法はありますか」
最後に、順番だけ置いておきます。全部やらなくて構いません。1と2は今夜、3は明日以降で足ります。
こども家庭庁の予算資料に、こう書かれています。「発達障害のため集団健診会場に行くことが困難な児」。
お子さんのことが、国の資料に想定として書かれています。行けなかったのは、備えが足りなかったからではありません。制度の側が、そのための別の受け方にお金を用意しています。あとは、それを動かせる場所——お住まいの市区町村——に、ひとこと伝えるだけです。
※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
のびのび発達ラボを運営する児童発達支援てらぴぁぽけっと早稲田教室(東京都新宿区・早稲田駅徒歩1分)には、言語聴覚士・公認心理師・精神保健福祉士・保育士など多職種の専門スタッフが在籍しています。見学・ご相談は、診断の有無に関わらず承ります。