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決定に納得できないとき——審査請求という制度があります

最終更新:2026年9月8日
受給者証の支給量が、思っていたより少なかった。更新のたびに日数が減っていく。申請したのに、却下の通知が届いた。
そんなとき、多くの方がまず窓口に相談します。それは正しい順番です。ですが、窓口で理由を聞いても、納得できないことがあります。
そのときのために、行政不服審査法という法律が、行政の処分に不服がある人のための手続きを用意しています。児童福祉法には、この手続きを受給者証にかかわる処分にそのまま使えるようにする条文があります。
この記事は、支給量を増やす交渉の続き編ではありません。「窓口で理由を聞いても、それでも納得できないとき」に、制度として用意されている道を、条文にもとづいて説明します。

まず、窓口へ——それでも納得できないときの話です

この記事を開いた方は、次のどれかの場面にいると思います。

先に確かめておきたいこと

受給者証の支給量は、更新を待たずに変更を申し出ることができます(→支給量を増やしたい——受給者証の変更申請)。更新のしくみそのものは受給者証の更新——有効期間は法令でどう決まっているかで扱っています。就学先の決定について、教育委員会との話し合いで調整する手続きは就学相談の「判定」——誰が、何をもとに、どう決めるのかにまとめています。

この記事は、それでも納得できないとき——窓口での相談や話し合いの先に、制度として用意されている手続きに絞って書きます。

※ この記事は、窓口に相談する前の段階を省略してよい、という意味ではありません。理由を尋ねる、変更を申し出る——多くの場合、そこで解決します。ここで扱うのは、それでも解決しないときの話です。

「不服申立て」の正式な名前は「審査請求」です

「不服申立て」は日常でよく使われる言い方ですが、いまの法律の正式な手続き名は審査請求です。根拠は行政不服審査法(平成26年法律第68号)という、特定の分野に限らない一般法です。

行政不服審査法 第1条(目的等)

「この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」

第2条は「行政庁の処分に不服がある者は……審査請求をすることができる」と定めています。裁判所に訴えるより手続きが軽く、書面を出して行政の側にあらためて審査させる仕組みです。

受給者証にかぎった話ではありません

この法律は、行政のあらゆる処分(税金、建築、福祉、教育……)に共通して使われる一般法です。受給者証にかかわる処分に使えるのは、次の節で見る児童福祉法の条文が、この一般法を呼び込んでいるからです。

受給者証にかかわる処分は、審査請求の対象になります——児童福祉法第56条の5の5

受給者証の支給量や、申請の可否を決めるのは市町村です。この市町村の決定(=処分)に不服があるとき、審査請求ができることは、児童福祉法にはっきり書かれています。

児童福祉法 第56条の5の5

「市町村の障害児通所給付費又は特例障害児通所給付費に係る処分に不服がある障害児の保護者は、都道府県知事に対して審査請求をすることができる。

「前項の審査請求については、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第八章(第九十七条第一項を除く。)の規定を準用する。」

「障害児通所給付費」とは、児童発達支援・放課後等デイサービス・居宅訪問型児童発達支援・保育所等訪問支援を利用したときに公費でまかなわれる費用のことです。この費用の支給に関する市町村の処分——申請の却下支給量を減らす変更決定など——が、審査請求の対象になります。

「処分」にあたるものの例

市町村の決定審査請求の対象になるか
申請を却下する決定(不支給決定)対象になります。児童福祉法第56条の5の5にいう「処分」です
変更申請で、希望より少ない支給量に決定対象になります。申請に対して市町村が行った処分だからです
更新で、前回より日数を減らして決定対象になります。更新も新しい支給決定という処分です
申請したのに、市町村から長期間なんの返事もない「不作為」として審査請求ができます
根拠=行政不服審査法第3条

※ 障害児入所給付費(入所施設)に関する処分は、この記事では扱っていません。窓口の異なる別の制度です。

誰に、いつまでに出すのか

審査請求の相手は、条文のとおり都道府県知事です。市町村ではありません(提出そのものは市町村の窓口を経由できる運用の自治体もあります。まずは窓口に確認してください)。

期間には、原則があります

行政不服審査法 第18条(審査請求期間)

「処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月……を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

「処分についての審査請求は、処分があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。」

つまり、原則は処分を知った日の翌日から3か月以内です。決定通知書が届いた日を起点に、カレンダーで数えられます。体調不良や連絡の行き違いなど「正当な理由」があれば例外も認められますが、まずは3か月という原則を前提に動くのが確実です。

決定通知書に、審査請求先と期間が書いてあるはずです

行政不服審査法第82条は、行政庁が処分をするときに、不服申立てができる旨・審査請求すべき行政庁・審査請求ができる期間書面で教示しなければならないと定めています。受け取った通知書のどこかに、この案内が書かれているはずなので、まずそこを確認してください。書かれていなかった場合も、処分をした市町村の窓口に不服申立書を提出すれば、はじめから正しい行政庁に審査請求があったものとみなす救済があります(同法第83条)。

  1. 受け取った決定通知書を見直し、教示欄(審査請求先・期間)を確認する
  2. 書かれていない、分かりにくいときは、処分をした市町村の窓口に聞く
  3. 審査請求書には、氏名・住所、処分の内容、処分を知った年月日、審査請求の趣旨と理由を書く(行政不服審査法第19条)
  4. 弁護士など代理人に依頼して出すこともできる(同法第12条)

どう進むか——審理と、裁決という結果

審査請求を出すと、都道府県の中で審理が行われます。児童福祉法第56条の5の5第2項は、この審理について障害者総合支援法第8章(第97条第1項を除く)の規定を準用すると定めており、都道府県に置かれた不服審査会のしくみが技術的な読み替えのうえで関わることがあります。

どのくらいの期間で結果が出るか

行政不服審査法第16条は、審査庁に対し、審査請求が届いてから裁決までに通常要すべき標準的な期間(標準審理期間)を定め、公表するよう努めることとしています。ただし、これは努力義務であり、法律そのものに「何日以内」という具体的な日数は定められていません。実際の標準審理期間は審査庁(都道府県)ごとに定められ、公表されている場合があります。確認するときは、審査請求先に直接尋ねるのが確実です。

結果は「裁決」という形で届きます

審理の結果は裁決という文書で伝えられます。行政不服審査法は、次の種類を定めています。

裁決の種類内容
却下3か月の期間を過ぎているなど、審査の入口で退けられる場合
根拠=第45条第1項
棄却審査はされたが、審査請求に理由がないと判断された場合
根拠=第45条第2項
認容審査請求に理由があると認められ、処分の全部または一部が取り消され、または変更される場合
根拠=第46条
不利益変更禁止(行政不服審査法第48条)

審査請求をしたことで、いまより不利な決定に変えられることはありません。法律は「審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更……することはできない」と明記しています。結果が思うようにならなくても、状況が今より悪くなることはない仕組みです。

審査請求をしている間、いまの支給量はどうなるか

審査請求の手続き中も、通所の予定を立てる必要があります。ここは執行不停止の原則が基本です。

行政不服審査法 第25条第1項

「審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。

つまり、審査請求を出しただけでは、変更後(減らされたあと)の支給量がいったん止まる、ということにはなりません。審査の結果が出るまでは、通知された内容にもとづいて利用を続けることになります。

ただし、審査庁は必要があると認めるときに、申立てまたは職権で執行停止(処分の効力や執行を一時止める措置)をとることができます(同条第2項〜第4項)。急を要する事情があるときは、審査請求書を出すときに、この執行停止についてもあわせて相談できます。

審査請求をせずに、裁判所に訴えることもできます

審査請求は、裁判に進む前に必ず通らなければならない手続きではありません。

行政事件訴訟法 第8条第1項

「処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。」

これは自由選択主義と呼ばれる原則です。児童福祉法にも障害者総合支援法にも、審査請求を先にしなければ裁判を起こせないという「前置」の定めは、確認できた範囲では見当たりませんでした。審査請求と裁判のどちらから始めても構わない、という建てつけです。

とはいえ、審査請求には、書面を出すだけで始められる・提出そのものに手数料はかからない・弁護士に依頼しなくても本人で進められるという利点があります。まず審査請求で見直しを求め、それでも解決しなければ裁判、という順番を選ぶ方が多い制度です。

就学先の決定に納得できないとき

就学相談の結果——どの学校、どの学びの場に通うか——について、教育委員会との話し合いで調整する手続きは、別記事(就学相談の「判定」——誰が、何をもとに、どう決めるのか)で扱っています。合意に至らないときの調整の手立て(第三者の関与、体験入学のやり直しなど)は、そちらをご覧ください。

この記事で追加で確かめられたのは、次の一点です。文部科学省の手引は、意見が一致しない場合の手立てのひとつとして、次のように述べています。

障害のある子供の教育支援の手引(令和3年6月)第2編第3章7(4)

「市区町村教育委員会は、あらかじめ本人及び保護者に対し、行政不服審査制度も含めた就学に関する異議申し立ての制度やプロセスについても情報提供を行っておくことが望ましい。」

つまり、就学先の決定についても、行政不服審査制度(審査請求)が異議申し立ての選択肢のひとつとして、国の手引で位置づけられています。ただし、この記事で確認できたのは「情報提供が望ましい」という手引の記述までです。就学先の決定という処分について、具体的にどの行政庁が審査庁になるか、どういう手続きになるかは、自治体によって案内が異なります。まずは在籍(予定)の教育委員会の窓口で、この手引にもとづく案内を求めてください。

この記事で書かないこと

確かめられなかったこと、この記事の範囲外にしたことを、正直に書きます。

今夜〜今週、確かめておきたいこと

争うための記事ではありません。落ち着いて、順番に確認できることをまとめます。

  1. 受け取った決定通知書を見直し、審査請求先・期間の案内(教示)が書かれているか確かめる
  2. まだ窓口で理由を聞いていないなら、そこから始める(多くの場合、ここで解決します)
  3. 処分を知った日を起点に、3か月後の日付をカレンダーに書いておく
  4. 支給量を増やしたいだけなら、審査請求より先に変更申請で足りることもある
  5. 迷ったら、審査請求先(都道府県)の窓口、または法テラスに相談してよいこととして聞いてみる

出典

※上記の出典は2026年9月8日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

「不服申立て」と「審査請求」は、何が違うのですか?
同じことを指しています。日常でよく使われる「不服申立て」という言葉に対応する、いまの法律上の正式な手続き名が審査請求です。根拠は行政不服審査法(平成26年法律第68号)で、受給者証にかかわる処分については児童福祉法第56条の5の5がこの手続きを準用しています。
審査請求は、保護者本人でなければできませんか?
児童福祉法第56条の5の5は「障害児の保護者」が審査請求できると定めています。あわせて、行政不服審査法第12条により代理人(弁護士など)に依頼して出すこともできます。
費用はかかりますか?
審査請求書の提出そのものに手数料が必要という規定は見当たりませんでした。行政不服審査法にある手数料の定めは、審理手続の書類の閲覧・写しの交付など一部の場面に関するものです。ただし、弁護士など代理人に依頼する場合は、その費用が別にかかります。
審査請求をしている間、いま利用している事業所には通えなくなりますか?
審査請求には執行不停止の原則があります(行政不服審査法第25条第1項)。審査請求を出しただけで、決定された支給量の効力が止まるわけではありません。急を要する事情があるときは、審査庁に執行停止を申し立てられる制度もあります(同条第2項〜第4項)。
審査請求をしたら、かえって不利な決定に変えられることはありますか?
ありません。行政不服審査法第48条は、審査庁が審査請求人の不利益に処分を変更することを禁じています(不利益変更の禁止)。審査請求の結果、いまより支給量が減らされるということは、この規定によって起こりません。
処分を知ってから3か月を過ぎてしまいました。もう何もできませんか?
行政不服審査法第18条は、原則として処分を知った日の翌日から3か月以内としつつ、「正当な理由があるとき」は例外を認めています。また、審査請求を経ずに裁判所へ処分の取消しを求める訴え(行政事件訴訟法)という道も別にあります。まずは審査請求先(都道府県)または法テラスなど相談窓口に、状況を伝えて確認することをおすすめします。
就学先の決定についても、同じ審査請求の制度が使えますか?
文部科学省の手引(令和3年6月)は、就学に関して意見が一致しない場合の手立てのひとつとして「行政不服審査制度も含めた……異議申し立ての制度やプロセスについても情報提供を行っておくことが望ましい」としています。まずは就学相談の「判定」——誰が、何をもとに、どう決めるのかにある話し合いによる調整の手続きを確認したうえで、審査請求について詳しくは在籍(予定)の教育委員会の窓口にご確認ください。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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