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災害への備え——感覚や見通しに特性のある子と、いま決めておけること

最終更新:2026年9月7日
9月は、防災について考える月です。
避難所は、音・光・におい・人の距離・いつもと違う手順が一度に来る場所です。感覚や見通しに特性のあるお子さんにとって、そこが過ごしにくい場所になりうることは、国が作った資料にもはっきり書かれています。
そして——ここがいちばん伝えたいところですが——そのための制度は、すでに用意されています福祉避難所避難行動要支援者名簿個別避難計画。三つとも災害対策基本法に根拠があり、個別避難計画は令和3年の改正で市町村の努力義務として法律に位置づけられました。けれど、この三つがあることを知らないまま過ごしているご家庭は少なくありません。
この記事では、条文と内閣府のガイドライン、そして東京23区が実際に出している案内を開きながら、今週のうちに決めておけることを順に並べます。起きたときの心配ではなく、いま手が届くところの話です。

避難所で何が起きるかは、もう言葉になっています

国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが、発達障害のある本人と家族に向けた防災パンフレット「もしものときのために、そなえておきたいこと」を公開しています。その9ページ、「避難所ってどんなところ?」という見開きに、「避難所では、こんなことがあるかもしれません」として、次の7つがそのまま並んでいます。

この7つは、想像で書かれたものではありません。同じセンターが東日本大震災の被災地で行った調査(岩手県・宮城県(仙台市を除く)・福島県/平成24年2〜3月/回答276人)の結果をもとに、「災害時の発達障害児・者支援エッセンス」としてまとめられた内容が下敷きになっています。その調査で、避難所についての回答はこうでした。

調査で分かったこと数字(回答276人)
そもそも避難所を利用しなかった77%
実家や親戚宅・知人宅・施設に移った、という回答が中心です
避難所での生活はどうだったか問題なく過ごせた 18%/問題はあったが過ごせた 45%/過ごすのが大変だった 27%/すぐに避難所を出なくてはならなくなった 5%
物資で困ったこと(複数回答)偏食があり配給や備蓄の食料が食べられなかった 48人/見守りが必要なため家族が配給の受け取りや買い物に行けなかった 44人/少しでも汚れたら着替えたがったが着替えがなかった 16人/感覚過敏やこだわりで配給された衣服が着られなかった 6人

エッセンスは、この結果から避難所についての課題を「大勢がひしめき合う一般避難所の環境は発達障害の人には過ごすのが難しい」「周囲の人に気兼ねして家族の心理的負担も大きい」の2点にまとめています。つまり、避難所が過ごしにくかったのはそのご家庭の準備が足りなかったからではなく、環境の側の問題として国が把握しているということです。

だからこそ、制度が動きました

この調査の翌年、災害対策基本法に避難行動要支援者名簿の規定が入りました。さらに令和3年5月の改正で、個別避難計画が市町村の努力義務として法律に位置づけられ、同じ月に、内閣府が福祉避難所への「直接の避難」を進める方向でガイドラインを改定しています。この記事の後半は、その三つの制度の話です。

※ ここで挙げた数字は、東日本大震災の被災3県で行われた1回の調査の結果です。全国のすべての災害・すべての地域に当てはまる割合ではありません。

備えの土台になる三つの制度と、その根拠条文

災害のときに配慮を必要とする人のための仕組みは、ばらばらに存在しているように見えて、実は災害対策基本法という一本の法律の中に並んでいます。まず、この法律が使っている二つの言葉を押さえると、その後がすべて読めるようになります。

法律の言葉条文での定義と、お子さんとの関係
要配慮者第8条第2項第17号の括弧書きで定義されています。「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」
乳幼児は、それだけで要配慮者です。手帳の有無も診断の有無も、この定義には出てきません
避難行動
要支援者
第49条の10第1項。要配慮者のうち「災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの」
=要配慮者の中でも、避難そのものに支援が要る人。名簿と個別避難計画は、この人たちが対象です

この二つの言葉を軸に、備えの制度は次の三つに分かれます。どれも役所が用意するもので、保護者の側から動いて使うものです。

制度の名前(根拠条文)誰が何をするのか
避難行動要支援者名簿
災害対策基本法 第49条の10
市町村長が作らなければならない(義務)。災害のときに支援が要る人をあらかじめ把握し、安否確認や避難支援の土台にするための名簿です。
まず、ここに載ることが出発点になります
個別避難計画
災害対策基本法 第49条の14(令和3年5月改正で新設)
市町村長が作るよう努めなければならない(努力義務)。名簿に載っている一人ひとりについて、どこへ・誰と・どうやって避難するかを先に決めておく計画です。
本人の同意がないと作られません。裏返せば、同意すれば作ってもらえる余地があります
指定福祉避難所
災害対策基本法 第49条の7/同法施行令 第20条の6第5号/同法施行規則 第1条の9
市町村長が指定しなければならない指定避難所のうち、要配慮者のための基準を満たすもの。設備・相談体制・居室の3つの基準が内閣府令に書かれています。
行き先そのものの話です

もう一本、根っこにあたる条文があります。障害者基本法 第26条(防災及び防犯)です。「国及び地方公共団体は、障害者が地域社会において安全にかつ安心して生活を営むことができるようにするため、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、防災及び防犯に関し必要な施策を講じなければならない」——「障害の状態及び生活の実態に応じて」という一句が、この分野の出発点です。

三つの順番は決まっています

①名簿に載る → ②個別避難計画をつくる → ③(計画の中で)行き先が決まる、という順です。個別避難計画は「名簿情報に係る避難行動要支援者ごとに」作ると条文に書かれているので、名簿に載っていないと、次に進みません。まず①から始めてください。

避難行動要支援者名簿——どうすれば載るのか

第49条の10第1項は、市町村長に対して名簿を「作成しておかなければならない」と書いています。努力義務ではなく、義務です。そして、名簿に記載する事項は同条第2項に7つ列挙されています。

6番目の「避難支援等を必要とする事由」が、この記事を読んでいる方にとっていちばん大切な欄です。手帳の等級や介護度だけを書く欄ではありません。その子が避難のときに何で困るのかを、市町村に伝える欄です。

同居している保護者がいることを理由に外されない、と国は書いています

内閣府(防災担当)の「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」は、名簿に載せる人の要件について、こう明記しています。

取組指針から(第Ⅱ部・避難行動要支援者名簿の作成)

「同居家族がいる場合であっても、時間帯等によって一人となるケースや介護者が高齢者のみのケース、医療機器の装着等により同居家族だけでは避難が困難など、避難が困難な状況もあることから、同居家族がいることのみをもって避難行動要支援者から除外することは適切ではないこと。同様に、保護者と同居する障害児であっても、『保護者と同居していること』等の要件のみで避難行動要支援者名簿への掲載がされないことがないよう留意すること

「保護者がいるのだから大丈夫でしょう」と言われそうで相談をためらう——という気持ちは、国の側でも想定されています。同じ指針は、障害のあるお子さんは障害支援区分の判定がないことにも触れ、重症心身障害児や医療的ケア児については障害児通所支援の基本報酬や加算の情報から把握する方法もあると、市町村向けに書いています。

要件に当てはまらなくても、自分から手を挙げる仕組みがあります

多くの市町村は、要介護度や手帳の等級で「対象者」を機械的に決めています。取組指針は、その方式だけでは支援が要る人が漏れることを認めたうえで、要件以外の仕組みを二つ挙げています。

二つめが、いわゆる「手上げ」です。指針は、この仕組みが実際に使われるためには制度の周知が重要だ、とも書いています。要件表に自分の子が載っていないことは、申し出てはいけないという意味ではありません。

東京23区の実際——3区の案内を開いてみます

同じ「名簿」でも、区によって呼び名も入口も違います。実際の案内から拾います。

区と名簿の呼び名案内に書かれている入口
新宿区
「災害時要援護者名簿」
ご本人の申し出により作成、と明記されています。登録・更新の申出書は、要介護3以上/身体障害者手帳2級以上/愛の手帳2度以上/すでに名簿登録済みの方へ送付されますが、申出書に提出期限はなく「ご本人やご家族が必要と感じたときに、いつでもお申し込みいただけます」と書かれています。
窓口=本庁舎、各特別出張所、各保健センター、障害者福祉センター、各高齢者総合相談センター。地域福祉課は郵送・FAXでも受付。電子申請フォームもあります
豊島区
「災害時要援護者名簿」(全件名簿)と「災害時要援護者地域共有名簿」の2本立て
全件名簿への登録は「豊島区災害時要援護者名簿登録申請書」を福祉総務課へ郵送または持参。地域共有名簿は、全件名簿に載った方へ原則2年おきに掲載同意の調査を行い、不同意の意思表示をされた方を除いて作成され、町会・自治会や警察・消防に提供されます
世田谷区
「避難行動要支援者名簿」
名簿の使い道が正面から説明されています。警察・消防の救助活動、地域の民生委員・児童委員、協定を締結している町会・自治会による安否確認に活用。平時は同意を得られた方が記載されている名簿を配布し、施錠可能な場所への保管を求めています

※ 名簿の登録は、優先的に助けてもらえることを約束するものではありません。新宿区の案内にも「名簿への登録は優先的な救助を約束するものではありません。登録された方も、日頃から災害への備えをお願いします」と書かれています。名簿は、ご家庭の備えを置き換えるものではなく、それに足すものです。

個別避難計画——市町村の努力義務として、法律に入りました

令和3年5月の災害対策基本法改正で新しく入ったのが、第49条の14(個別避難計画の作成)です。条文はこう始まります。

災害対策基本法 第49条の14 第1項

「市町村長は、地域防災計画の定めるところにより、名簿情報に係る避難行動要支援者ごとに、当該避難行動要支援者について避難支援等を実施するための計画(以下「個別避難計画」という。)を作成するよう努めなければならない。ただし、個別避難計画を作成することについて当該避難行動要支援者の同意が得られない場合は、この限りでない

作るのは市町村長で、努力義務です。そして、ただし書がとても重要です。本人(お子さんの場合は保護者)の同意がないと作られません。つまり、区から意向を尋ねる書類が届いたら、それが作ってもらえるかどうかの分かれ道になります。

計画に書かれる中身は、条文で決まっています

第49条の14第3項は、名簿の記載事項(氏名・生年月日・性別・住所・連絡先・避難支援等を必要とする事由)に加えて、次を記載すると定めています。

2番目——避難場所と避難経路が、その子について個別に書かれる——が、この計画のいちばんの働きです。後で見るとおり、この欄に「福祉避難所」と書かれるかどうかが、直接そこへ行けるかどうかにつながります。

順番があります。国は「優先度の高い人から」と書いています

取組指針は、市町村の体制には限りがあるため、優先度が高い方から作ることが適当だとしたうえで、優先度を判断する3つのポイントを挙げています。

そのうえで、令和3年改正の施行後おおむね5年程度で優先度の高い方の計画作成を終えるように、と示しています。2番目に「情報取得や判断への支援が必要な程度」が入っている点は、覚えておく価値があります。アナウンスが届きにくい、急な変更の判断が難しい——それは優先度を上げる側の事情として書かれています。

市町村を待たなくてもいい道が、指針に書かれています

取組指針は、市町村が支援して作る計画と並行して「本人・地域記入の個別避難計画」——本人や家族、自主防災組織等が記入する計画——づくりを進めることが適当だ、としています。順番待ちの列に並びながら、先に自分たちで書いておけるということです。後から市町村の支援で更新する方法も、同じ指針に例として挙がっています。

もうひとつ、指針にはこう書かれています。「個別避難計画は、よりよい避難を実現しようという趣旨のものであって、市町村や、個別避難計画作成の関係者等に対して、計画に基づく避難支援等の結果について法的な責任や義務を負わせるものではない」。支援者になってくださる方に声をかけるとき、この一文は伝えておくと話が進みやすくなります。

東京23区の実際——様式が公開されている区があります

個別避難計画の呼び名と、現在の進み方
豊島区「わが家のひなん計画」。「どこに避難するか」「誰が支援するか」「避難するときにどのような配慮が必要か」等を定める計画、と説明されています。作成数は令和7年7月末現在で累計774件。令和8年度にかけて区内全域で作成できるよう、災害リスク等から優先順位をつけて進めるとしています。
対象要件は9つ(要介護3〜5/愛の手帳1度〜3度/身体障害者手帳の各区分/人工呼吸器利用で名簿登録者/精神障害者保健福祉手帳1・2級で名簿登録者)で、要件に当てはまる方へ様式と案内を郵送し、記入して返送する形です。
様式「わが家のひなん計画」・記入見本・「記入例と記入の方法」は、区のページからPDFで誰でもダウンロードできます
新宿区令和8年度から、災害時要援護者名簿の登録・更新の申出とあわせて個別避難計画を作成できるようになりました。「災害時の避難先や避難方法、避難時に必要な配慮などをあらかじめ整理しておく計画」と説明され、申出書に記入した内容をもとに区が計画を作成します。
=新宿区では、名簿の登録と計画の作成が1枚の申出書でつながっています
世田谷区区の案内では、多摩川の浸水想定区域内にお住まいの避難行動要支援者に対して個別避難計画の書類と調査票を送付し、同意が得られた方について計画を作成した、と説明されています。
=ハザードの高い地区から進める、という取組指針どおりの進め方です
今夜できること

お住まいの区の名前と「個別避難計画」で検索して、様式がPDFで公開されていないかを確かめてください。豊島区のように様式と記入見本を公開している区なら、届くのを待たずに下書きだけ先に作れます。公開されていなければ、次の節で挙げる窓口に電話して「様式はありますか」と聞くところからです。

福祉避難所——直接行けるのか。国の方向と、23区の現在地

ここがいちばん誤解の多いところなので、条文から順に開きます。まず、「福祉避難所」という言葉は、災害対策基本法の本文には出てきません。法律にあるのは指定避難所(第49条の7)で、その基準を政令に委ねています。

その政令=災害対策基本法施行令 第20条の6が、指定避難所の基準を5号まで挙げています。1号から4号までは規模・構造・場所・輸送のしやすさ。そして5号が、こう書かれています。

災害対策基本法施行令 第20条の6 第5号

主として高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下この号において「要配慮者」という。)を滞在させることが想定されるものにあつては、要配慮者の円滑な利用の確保、要配慮者が相談し、又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備その他の要配慮者の良好な生活環境の確保に資する事項について内閣府令で定める基準に適合するものであること」

この5号まで満たす指定避難所が、行政の呼び方でいう指定福祉避難所です。5号がいう「内閣府令で定める基準」は、災害対策基本法施行規則 第1条の9に3つ書かれています。

令和3年に、制度がひとつ増えました——受入対象者を特定して公示できます

同じ施行規則の第1条の7の2 第2項が、令和3年5月に新設されました。指定福祉避難所を指定したときは、その名称、所在地に加えて、「当該指定福祉避難所に受け入れる被災者等を特定する場合にはその旨」を公示する、という規定です。

これが何を変えたのか。内閣府が同時に出した「福祉避難所の確保・運営ガイドライン 主な改定のポイント」に、経緯がそのまま書かれています。

改定のポイント(内閣府・令和3年5月)から

<課題・背景>
「障害のある人等については、福祉避難所ではない避難所で過ごすことに困難を伴うことがあるため、一般避難所への避難が難しい場合があり、平素から利用している施設へ直接に避難したいとの声がある
「指定避難所として公表されると、受入れを想定していない被災者の避難により、福祉避難所としての対応に支障を生ずる懸念があるため、指定避難所としての福祉避難所の確保が進んでいない(令和2年現在9,072箇所)」

<改定の趣旨>
「指定福祉避難所の指定を促進するとともに、事前に受入対象者を調整して、人的物的体制の整備を図ることで、災害時の直接の避難等を促進し、要配慮者の支援を強化する」

「受け入れる人をあらかじめ決めて公示できる」ようにすることで、施設側の「誰が来るか分からない」という不安を外し、その施設をふだん使っている人が、災害のとき直接そこへ行けるようにする——それが改定の狙いです。

ガイドラインは、児童発達支援センターを例に挙げています

本体のガイドライン(令和3年5月改定)には、受入対象者を特定して公示する場合の書き方が例として載っています。障害のある方の場合として挙がっている例の中に、次の記載があります。

ガイドラインの公示例(施設の種類)受入対象者として書かれている例
児童発達支援センター障害児及び事前に市が特定した者
特別支援学校在校生/在校生、卒業生及び事前に市が特定した者
障害者福祉施設障害者/市が特定した者/知的障害者、精神障害者(発達障害者)
この行には「左記の者のうち、事前に市が特定し、環境調整を事前に行った者」という注記が付いています

そして、いずれの表にも共通して「※ 家族等も受入対象とする」という注が付いています。本文でも、指定福祉避難所の受入対象は「高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者等、避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする者とし、その家族まで含めて差し支えない」と明記されています。きょうだいを置いていく必要はありません。

直接避難については、ガイドライン本文がこう書いています。「個別避難計画により、指定福祉避難所へ避難することになっている場合は、最寄りの一般の避難所等ではなく、指定福祉避難所へ直接に避難することとなる」。——個別避難計画が、直接避難のかぎになっていることが、ここではっきりします。

ただし、東京23区の案内は、いまはこう書かれています

国が示している方向と、いまお住まいの区に書かれていることは、同じではありません。実際に3区の案内を開いて確かめました(2026年9月時点)。

区の案内(呼び名)直接避難について書かれていること
新宿区
「二次避難所(福祉避難所)」
「災害発生後、避難所での生活が困難な高齢者や障害者、乳幼児等を対象として、被害や避難の状況に応じて区の判断で開設します。原則として、ご自宅から直接向かう場所ではありませんのでご注意ください。なお、障害者通所施設については、福祉避難所として開設した際、施設利用者の直接避難が可能となる場合があります
=原則は経由。ただしふだん通っている通所施設については道が開いています
豊島区
「福祉救援センター」
「東京都地域防災計画における『福祉避難所』に相当するもの」と説明したうえで、「配慮の必要性の高い方から受け入れるため、自宅等から福祉救援センターへ直接避難することはできません。身の安全確保を最優先に、まずは救援センターに避難しましょう」
介護型・障害型などに分かれており、障害のための救援センターとして心身障害者福祉センター、生活実習所、福祉作業所等が指定されています
国(内閣府)が示している方向「地区防災計画や個別避難計画等の作成プロセスを通じて、事前に指定福祉避難所ごとに受入対象者の調整等を行う」「市町村が希望する要配慮者全員を指定福祉避難所に直接の避難をさせることができない場合などには、まず一般の避難所に要配慮者スペースを設置して一時的に避難し、その後、指定福祉避難所に移送する方法も個別避難計画等の策定時に検討する
この差が、いちばん実用的な情報です

いまお住まいの区が「直接は行けません」と書いていても、それは制度がそうだからではありません。国は、個別避難計画と受入対象者の事前調整によって直接避難を進める方向を示しています。だから、窓口で聞く言葉は「福祉避難所に行けますか」ではなく——
「個別避難計画をつくったうえで、避難先の欄に福祉避難所を書いてもらうことはできますか」
「うちの子が通っている児童発達支援事業所は、指定福祉避難所になっていますか。受入対象者は公示されていますか」
この二つになります。

一般の避難所の中にも、居場所を作る仕組みがあります

直接避難がかなわず、まず一般の避難所へ行くことになった場合の受け皿も、ガイドラインに書かれています。要配慮者スペース——生活相談員等を置かないため指定福祉避難所の基準は満たさないものの、要配慮者のために何らかの配慮がされているスペースです。ガイドラインは、その確保の目標を「少なくとも、小学校区に1箇所程度の割合」としています。

また、指定福祉避難所には「概ね10人の要配慮者に1人の生活相談員等を配置する」と書かれ、災害救助法が適用された場合には、この人員配置や、要配慮者に配慮したポータブルトイレ・手すり・仮設スロープ・情報伝達機器・段ボールベッド等の費用について国庫負担を受けることができる、とされています。

※ 区の案内は更新されます。ここに引いたのは2026年9月時点で各区のページに書かれていた内容です。実際に動くときは、必ずお住まいの区の最新の案内をご確認ください。

その子に合わせた非常持ち出し——何を、なぜ入れるのか

ここからは家庭の側の話です。発達障害情報・支援センターのパンフレットは、一般的な防災リストとは別に「自分のために持ち出し袋に入れておくもの」という項目を立てています。中身はこの7つです。

5番目に注目してください。ヘッドフォンや耳せん、マスク、サングラス——第1節で見た「音がうるさい」「電気がまぶしい」「においが気になる」に、一つずつ対応しています。感覚のための道具は、国の防災パンフレットに載っている持ち出し品です。「うちの子だけの特別なもの」ではありません。

持ち出し袋に入れるものその子にとって、何を助けるものか
イヤーマフ・耳せん・ヘッドフォン体育館は音が響きます。人の声、放送、荷物を動かす音、夜の物音。音の量そのものを下げられる道具は、他の何かで代わりがききません。ふだん使っているものをそのまま入れてください(新品は感触が違って使えないことがあります)
いつもの毛布・タオル・クッション触りなれた素材が一枚あると、寝る場所が変わっても手がかりが残ります。洗い替えではなく、ふだん使っているそのものを入れておくのが要点です
好きな遊び道具・本・音楽パンフレットは「気持ちが落ち着くもの」と書いています。先の調査の報告にも、避難生活の空いた時間を過ごすためのもの(お絵かき道具、本、携帯音楽プレイヤー、ゲーム、電池など)を自ら準備しておくこととして挙げられています。電池と充電器を忘れずに
薬(5日分以上)とお薬手帳のコピー報告書には、いつもの薬が手に入らなかったこと、薬をもらえても形状が違って飲めなかったことが困りごととして挙げられています。薬の名前・量・回数・飲むタイミングを書いた紙も一緒に入れてください
マスク・サングラス・帽子においと、まぶしさへの手当てです。屋内でも照明が消えない場所、消灯が遅い場所があります
もしもシート/おねがいカード話し言葉で説明しづらい場面のための一枚。次の節で詳しく書きます

生活必需品のほうのリストも、パンフレットには載っています(総務省消防庁の防災ページを参考に一部改変して作られた、と注記されています)。飲み水/食べ物(少なくとも3日分)/スマートフォン・充電器・モバイルバッテリー・ラジオ/懐中電灯・LEDランタン・笛・ハザードマップ/救急セット・マスク・ティッシュ/タオル・アルミシート・衣類/お金(小銭も)・健康保険の情報・お薬手帳/紙とペン・簡易トイレ、の7分類です。

置き場所も、パンフレットに書かれています

「持ち出し袋は、玄関など、すぐに持っていける場所に置いておきましょう」。
そして——これは特性のあるお子さんのご家庭で効いてきます——持ち出し袋の中身を、一度お子さんと一緒に見ておいてください。袋の存在も中身も知らないまま、慌ただしい場面で初めて開けることになると、「知らないものが出てくる」体験が一つ増えてしまいます。

食べられるものが限られている場合の備え

第1節の調査で、物資について困ったことの1位だったのが「偏食があり、配給や備蓄の食料が食べられなかった」(276人中48人)でした。これは、アレルギーとはまったく別の話です。

報告書には、非常食はどんなに空腹でも食べられなかったという記述、そして食料や飲料は、同じものでもパッケージが変わっただけで拒否されたという記述があります。見た目・におい・口の中の感触・容器の形——食べられるかどうかを決めている手がかりが、非常時にはまとめて変わってしまいます。

アレルギーの欄と、食べられるものの欄は、別々に書きます

パンフレットの「もしもシート」に書く項目を見ると、この二つがきちんと分けられています。

パンフレットは、書き方の例まで示しています。アレルギーの欄は「たまごアレルギー」のように。食べられるものの欄は「食べられる → 白いごはん、りんご/食べられない → たまご、かたいもの、とうもろこし」のように。——「かたいもの」という例が入っているところが大事です。食品名ではなく質感で書けると伝わります。

備え方具体的に何をするか
ふだんの銘柄を、そのまま多めにパッケージが変わると受けつけないことがある、という報告があります。非常食用の特別な商品をそろえるより、いつも食べているものを箱で買っておくほうが確実です
ローリングストックパンフレットに書かれているやり方です。「食べ物や日用品を少し多めに買っておきます。古いものから使います。使ったら、新しいものを買い足します」。賞味期限の管理が要らないうえ、味も包装も変わりません
調理なしで食べられる形を確保在宅避難では「ガスが使えなくなる(料理ができない)」ことが起きうる、とパンフレットは書いています。そのまま食べられる形で、食べられるものを何日分か持っておいてください
飲み物も同じ扱いで報告書では、食料と飲料が並べて書かれています。いつものコップやストローが使えるかどうかも、確かめておく価値があります
ふりかけ・お菓子を一袋パンフレットの持ち出しリストに「食べられる食べ物(好きなお菓子やふりかけなど)」と、報告書の「自ら準備しておくこと」に「食べられる非常食やふりかけなど」と、どちらにも同じ趣旨で書かれています。配られたごはんに一振りかけるだけで食べられる、ということが起こります

なお、報告書は避難所の側に準備してほしいこととして、「画一的でない備蓄食料の工夫」「大きめの紙おむつの備蓄」「在宅生活を送る方への支援」を挙げています。食べられるものが限られていることは、避難所の運営側に伝えてよい事情です。

※ ここに書いたのは備蓄と持ち出しの話で、食べられるものを増やす取り組みとは別のことです。食べることの背景については 偏食とは?感覚と食べることの関係 にまとめています。

見通しを立てる備え——先に見る、先に書いておく

パンフレットの8ページに、こんな一節があります。

「前もって避難所に行ってみましょう」

「災害のとき、初めての場所に行くのは、とても不安です。だから、前もって一度、避難所を見に行きましょう。家の人や手伝ってくれる人といっしょに、行ってみましょう」
(発達障害情報・支援センター「もしものときのために、そなえておきたいこと」より)

国が作った当事者向けの資料に、下見に行くことが正面から書かれています。体育館の中まで入れなくてかまいません。門から見る、外周を歩く、写真を撮って帰る。その写真が、当日の見通しになります。

書いて持っておく三つの紙

話し言葉で自分のことを説明するのが難しい場面のために、国と自治体の両方から、書き込み式の様式が公開されています。

様式(出どころ)何のための紙か
もしもシート
発達障害情報・支援センター(Word版もあり)
名前・連絡先・薬・アレルギー・食べられるもの・困ったときにしてほしいことを1枚に。使い方まで書かれています——「水にぬれないようにラミネート加工をするか、チャックつきのビニール袋に入れて、いつも持ち歩く」「スマートフォンで写真をとっておく」「書いたことが変わっていないか、1年に1回見直す」
じぶんの思いをつたえるシート
同上
その場の気持ちを絵の中から指さして伝えるためのシート。「伝えることで、まわりの人も助けやすくなります」と書かれています
おねがいカード/あんしん手帳
新宿区「要配慮者災害用セルフプラン」
おねがいカード=「意思表示が困難な場合に、災害時を想定し、あらかじめ配慮してほしい事項を記載し、カード型に切り取って携帯」するもの。あんしん手帳=要配慮事項・医療や介護の利用状況をあらかじめ書いておき、支援者や避難所運営者に示すことで自身の状況を伝えられるようにするもの。
いずれも区のページからPDFで誰でもダウンロードできます(記入見本つき)

「困ったときにしてほしいこと」の欄に何を書くか、パンフレットは例を挙げています。「大きな声で話さないでください」「紙に書いて教えてください」「1つずつ話してください」。短く、ひとつずつ、動作の形で書く——これが伝わる書き方です。

内閣府の取組指針も、災害時の情報伝達の例として「わかりやすい短い言葉、文字、絵や写真の提示等(知的障害児者、精神障害児者、発達障害児者、認知症者)」を挙げています。絵や写真で伝えることは、支援者の側に求められている方法でもあります。

家族が離れているときの約束

パンフレットは、在宅避難の備えの中に「家族と、どうやって連絡するかを話しておきましょう」という一項を置いています。園や学校にいるとき、保護者が職場にいるとき——誰が迎えに行くのか、行けないときは誰が来るのか、どこで落ち合うのか。これは今夜の食卓で決められることです。

  1. 今週:区のハザードマップで、家からいちばん近い避難所を確かめる(パンフレットは「わからないときは、家の人や手伝ってくれる人など、あなたのことをよく知っている人に聞いてください」と書いています)
  2. 今月:その避難所まで、お子さんと一緒に歩いてみる。写真を撮って帰る
  3. 今月:もしもシート/おねがいカードを書き、スマートフォンで写真を撮っておく。ラミネートかチャック袋に入れて持ち出し袋へ
  4. 今月:家族の合流の約束を決めて、紙に書いて冷蔵庫に貼る
  5. 1年に1回:書いた内容が今も合っているかを見直す(これもパンフレットに書かれている手順です)

停電・断水のとき——家で過ごすという選択肢

避難所に行くことだけが避難ではありません。パンフレットは「災害が起きても、家が安全なら、家ですごすことができます」とし、これを在宅避難と呼んで、独立した節を立てています。

そのうえで、在宅避難のときに起きうることを3つ挙げています。

この3つは、感覚や見通しに特性のあるお子さんにとっては、それぞれ別の意味を持ちます。テレビやエアコンが止まるということは、家にいつも流れている音が消えるということでもあります。トイレが流せないということは、毎日繰り返してきた手順の途中が抜けるということでもあります。暗さや静けさがそのお子さんにどう響くかまでは、確認できた資料には書かれていません。そこは、ふだんの様子からご家庭で見当をつけておくところです。

備えとしてパンフレットが挙げているのは、次の項目です。

備えるものパンフレットに書かれている目安と補足
飲み水1人1日3リットル×家族の人数で、少なくとも5日分
食べ物缶詰、レトルト食品、お菓子など。少なくとも5日分
いつも飲んでいる薬少なくとも5日分。「いつも飲んでいる薬を多めにもらっておきましょう」とも書かれています
簡易トイレ断水でいちばん先に困るのがここです。ふだんのトイレの手順にどれだけ近い形で用意できるかを、一度試しておく価値があります
懐中電灯・LEDランタン・電池「準備して、置く場所を決めておきましょう」。暗くなってから探さないで済むように
家具の固定「家具がたおれないように、固定しておきましょう」
そのほかウェットティッシュ、タオル、救急セット、ラジオ、モバイルバッテリー、お金、ラップ・アルミホイル、紙皿やスプーン、カセットコンロとボンベ、トイレットペーパー、ビニール袋、水のいらないシャンプー、歯みがきセット、カイロ

どうしても避難所で過ごせないときのことも、書かれています

パンフレットには「車中泊にもそなえておこう」という節があり、その書き出しはこうです。「大きな災害が起きると、避難所にとても多くの人が集まります。発達障害の特性などで、どうしても避難所ですごせないことがあります」。そのうえで、毛布や寝袋・クッション、外から中を見えにくくするサンシェード、簡易トイレ、車用の充電器を挙げています。

注意点も2つ。車は必ず安全な場所にとめ、エンジンをかけっぱなしにしない。せまい場所で長時間同じ姿勢でいると血の流れが悪くなるため、30分〜1時間に1回は立ったり足を動かしたりする。

在宅避難・車中泊でも、支援の対象から外れません

災害対策基本法第86条の7(避難所以外の場所に滞在する被災者についての配慮)は、「やむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者に関する情報を把握するとともに、これらの者に対しても、必要な生活関連物資の配布、保健医療サービス及び福祉サービスの提供、情報の提供その他これらの者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。
家にいる/車にいるという理由で、物資や情報の対象から外れるという建て付けにはなっていません。パンフレットも、車中泊のときに集める情報として「避難所にとどく水や食べ物などを受け取る場所や方法」「避難している人へのお知らせを受け取れる場所や方法」「トイレやおふろを使える場所」「電気が使える場所」を挙げています。

今週、誰に何を伝えるか

ここまでの話を、連絡する順番に並べ直します。全部を一度にやる必要はありません。上から順に、できるところまでで十分です。

  1. 区の福祉の担当課に電話して、名簿の申出書をもらう。聞く言葉は「災害時に避難の支援が必要な人の名簿に登録したいのですが、申出書はどこでもらえますか」。要件表に当てはまるかどうかを自分で判断する前に、まず聞いてください
  2. 申出書の「避難支援等を必要とする事由」の欄に、その子の困りごとを具体的に書く。「大きな音のある場所に長くいられない」「急な予定の変更が伝わりにくい」「食べられるものが限られている」。手帳の等級だけを書いて出さないでください
  3. 同じ電話で、個別避難計画について聞く。「個別避難計画は作ってもらえますか」「様式は公開されていますか」「避難先の欄に福祉避難所を書いてもらうことはできますか」の3つです
  4. 通っている児童発達支援事業所に、災害のときのことを聞く。次の項で根拠を書きます
  5. もしもシート/おねがいカードを書いて、持ち出し袋に入れる。スマートフォンで写真も撮っておく
  6. 避難所まで、お子さんと歩いてみる。写真を撮って帰り、家で一緒に見る

通っている事業所には、聞いてよい根拠があります

児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所には、児童福祉法に基づく指定通所支援等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号)で、災害への備えが義務づけられています。条文はこうです。

条文事業所に義務づけられていること
第40条
(非常災害対策)
消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を設けること/非常災害に関する具体的計画を立てること/非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、定期的に従業者へ周知すること/定期的に、避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない/訓練の実施にあたり地域住民の参加が得られるよう連携に努めること
第38条の2
(業務継続計画の策定等)
感染症や非常災害の発生時に支援を継続的に実施し、早期の業務再開を図るための業務継続計画を策定し、それに従い必要な措置を講ずること/従業者への周知と、定期的な研修及び訓練/定期的な見直し
第37条第9号・第43条
(運営規程・掲示)
運営規程に「非常災害対策」を定めておくこと/事業所の見やすい場所に運営規程の概要その他の重要事項を掲示すること

つまり、計画も訓練も、法令で決まっている事業所の仕事です。「災害のとき、うちの子はどうなりますか」「避難訓練はどんなふうにやっていますか」「この建物は福祉避難所に指定されていますか」——これらは、遠慮して聞かずにおく質問ではありません。

動き出す合図は、警戒レベル4ではなく警戒レベル3です

内閣府の「避難情報に関するガイドライン」(令和8年3月改定)は、警戒レベル3「高齢者等避難」について、こう書いています。

警戒レベル3「高齢者等避難」の「等」に、誰が入っているか

「高齢者等※は危険な場所から避難(立退き避難又は屋内安全確保)する。
避難を完了させるのに時間を要する在宅又は施設利用者の高齢者及び障害のある人、妊産婦、乳幼児連れの人等、及びその人の避難を支援する者

本文でも「高齢者等の『等』には、障害のある人等の避難に時間を要する人や避難支援者等が含まれることに留意する」と念を押しています。
乳幼児を連れているご家庭は、警戒レベル3で動き始める側です。レベル4「避難指示」まで待つ必要はありません。ガイドラインは、この時点で避難することで「災害が発生する前までに指定緊急避難場所等への立退き避難を完了すること(高齢者等のリードタイムの確保)が期待できる」と説明しています。

3区の連絡先

この記事で引いた案内の担当課
新宿区災害時要援護者名簿・個別避難計画・要配慮者災害用セルフプラン・二次避難所(福祉避難所)=福祉部 地域福祉課/電話 03-5273-3517
豊島区個別避難計画「わが家のひなん計画」・災害時要援護者名簿=福祉総務課 災害対策グループ/電話 03-4566-2428
世田谷区避難行動要支援者名簿=危機管理部 災害対策課/電話 03-5432-2262

※ ほかの区にお住まいの場合は、区のホームページで「避難行動要支援者名簿」または「災害時要援護者名簿」を検索してください。呼び名が区によって違うため、両方で探すと見つかります。担当は福祉の部署のことも、防災・危機管理の部署のこともあります。

災害はいつ起きるか分かりません。けれど、名簿に申し出ること、計画の様式を取り寄せること、イヤーマフを袋に入れること、避難所まで一度歩いてみること——このどれもが、今週のうちに終えられることです。そして、そのひとつずつが、当日その子の前に置かれる選択肢を増やします。

出典

※上記の出典は2026年9月7日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。

よくあるご質問

診断や手帳がなくても、避難行動要支援者名簿に載せてもらえますか?
まず、災害対策基本法 第8条第2項第17号の要配慮者には「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」とあり、乳幼児であること自体が要配慮者です。名簿の対象になる避難行動要支援者は、第49条の10第1項で「自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの」と定義されており、条文に手帳や診断の要件はありません。ただし、実際に誰を名簿に載せるかの要件は各市町村が地域防災計画で定めており、手帳の等級や要介護度で線を引いている自治体が多いのが実情です。内閣府の取組指針は、その要件だけでは漏れる人がいることを前提に、「形式要件から漏れた者が自らの命を主体的に守るため、自ら避難行動要支援者名簿への掲載を求めることができる仕組み」を設けるよう市町村に求めています。要件表に当てはまらないと思っても、まず窓口に電話して聞いてみてください。
保護者が一緒にいるのだから対象外です、と言われないでしょうか?
内閣府の取組指針には、この点がはっきり書かれています。「同居家族がいることのみをもって避難行動要支援者から除外することは適切ではないこと。同様に、保護者と同居する障害児であっても、『保護者と同居していること』等の要件のみで避難行動要支援者名簿への掲載がされないことがないよう留意すること」。国が市町村に向けて書いている一文なので、窓口で相談するときに引いてかまいません。指針はまた、障害のあるお子さんには障害支援区分の判定がないため、障害児通所支援の基本報酬や加算の情報から把握する方法もある、と市町村に示しています。
福祉避難所に、家から直接行くことはできますか?
国が進めようとしている方向と、いまお住まいの区の案内は、同じとは限りません。令和3年5月の災害対策基本法施行規則改正で、市町村は指定福祉避難所を指定する際に受け入れる被災者等を特定して公示できるようになりました(第1条の7の2第2項)。内閣府のガイドラインはこれを受けて「事前に受入対象者を調整して……災害時の直接の避難等を促進する」ことを改定の趣旨とし、「個別避難計画により、指定福祉避難所へ避難することになっている場合は、最寄りの一般の避難所等ではなく、指定福祉避難所へ直接に避難することとなる」と書いています。一方、東京23区の案内を実際に開くと、豊島区は「自宅等から福祉救援センターへ直接避難することはできません」、新宿区は「原則として、ご自宅から直接向かう場所ではありません」としつつ「障害者通所施設については、福祉避難所として開設した際、施設利用者の直接避難が可能となる場合があります」と書いています。つまり、窓口で聞くべきは「直接行けますか」ではなく「個別避難計画の避難先の欄に、福祉避難所を書いてもらえますか」です。
福祉避難所に行く場合、きょうだいは一緒に行けますか?
内閣府の福祉避難所ガイドラインは、指定福祉避難所の受入対象について「高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者等、避難所生活において何らかの特別な配慮を必要とする者とし、その家族まで含めて差し支えない」と明記しています。受入対象者を特定して公示する場合の記載例にも、すべての表に「※家族等も受入対象とする」という注が付いています。実際にどう運用されるかは市町村が決めますので、個別避難計画をつくるときに家族構成を伝えて確認してください。
個別避難計画は、誰が書くのですか。家族が書いてもよいのでしょうか?
災害対策基本法 第49条の14第1項は、市町村長が作成するよう努めなければならない、と定めています。ただし本人(お子さんの場合は保護者)の同意が得られない場合はこの限りでないという、ただし書が付いています。そのうえで内閣府の取組指針は、市町村が支援して作る計画と並行して、本人や家族、自主防災組織等が記入する「本人・地域記入の個別避難計画」づくりを進めることが適当だとしています。豊島区のように様式(「わが家のひなん計画」)と記入見本をPDFで公開している区もあり、順番を待たずに下書きを作っておくことができます。なお指針は、計画は「計画に基づく避難支援等の結果について法的な責任や義務を負わせるものではない」とも書いています。
避難所の食事が食べられそうにありません。どう備えればよいですか?
東日本大震災の被災3県で行われた調査(回答276人)で、物資について困ったことの第1位が「偏食があり、配給や備蓄の食料が食べられなかった」(48人)でした。報告書には、同じ食品でもパッケージが変わっただけで受けつけなかったという記述もあります。そのため、非常食用の見慣れない商品をそろえるより、ふだん食べているものを箱で買っておき、古いものから使って買い足す(ローリングストック)ほうが確実です。国の防災パンフレットも、持ち出し袋に入れるものとして「食べられる食べ物(好きなお菓子やふりかけなど)」を挙げています。また、アレルギーと感覚の理由は別のことなので、「もしもシート」でも「アレルギーについて」と「食べられるもの、食べられないもの」が別々の欄になっています。両方を書いて持っておいてください。
避難所に行かず、家や車で過ごす場合、支援は受けられないのでしょうか?
災害対策基本法第86条の7は、「やむを得ない理由により避難所に滞在することができない被災者に関する情報を把握するとともに、これらの者に対しても、必要な生活関連物資の配布、保健医療サービス及び福祉サービスの提供、情報の提供その他これらの者の生活環境の整備に必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と定めています。在宅避難や車中泊を選んだことで、物資や情報の対象から外れるという建て付けにはなっていません。国の防災パンフレットも、車中泊のときに集める情報として「避難所にとどく水や食べ物などを受け取る場所や方法」「避難している人へのお知らせを受け取れる場所や方法」「トイレやおふろを使える場所」「電気が使える場所」の4つを挙げています。内閣府の取組指針も、在宅避難する要配慮者の安否確認・物資提供・医療や福祉の支援の方法を検討しておくよう市町村に求めています。
通っている事業所に、災害のときのことを聞いてもよいのでしょうか?
聞いてかまいません。児童発達支援や放課後等デイサービスの事業所には、児童福祉法に基づく指定通所支援等の基準(平成24年厚生労働省令第15号)第40条で、「非常災害に関する具体的計画を立て、非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、それらを定期的に従業者に周知」すること、そして「非常災害に備えるため、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない」ことが義務づけられています。同基準第38条の2は業務継続計画の策定と定期的な研修・訓練を、第37条第9号は運営規程に「非常災害対策」を定めることを、第43条は運営規程の概要等を事業所の見やすい場所に掲示することを、それぞれ求めています。計画も訓練も、法令で定められた事業所の仕事です。「避難訓練はどんなふうにやっていますか」「この建物は福祉避難所に指定されていますか」と尋ねてよい場面です。
この記事について:本記事は、子育て・発達に関する一般的な情報の提供を目的としています。内容は学会・職能団体・国の機関が公開している情報にもとづいてまとめていますが、お子さまの発達には個人差があり、すべてのお子さまに当てはまるものではありません。診断や治療に関する判断は、医師などの専門機関にご相談ください。

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