障害児福祉計画は、児童福祉法という一つの法律の中に、市町村向けと都道府県向けの2種類が定められています。まず、いちばん基本になる条文を確かめます。
条文が使っている言葉は「提供体制の確保」です。すこし硬い言い方ですが、かみくだくと「児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援・居宅訪問型児童発達支援・障害児相談支援が、この地域でちゃんと使えるようにする」ための計画ということです。
第2号にある「必要な見込量」——これが、この計画のいちばんの中身です。「児童発達支援は、来年度は何人日ぶん必要になる見込みか」を、サービスの種類ごとに、年度ごとに数字で書く。それが市町村障害児福祉計画の役目です。
※「見込量」という言葉には送り仮名の「り」が付きません。条文どおりの表記です。
条文をよく見ると、同じ「定める」でも、語尾の強さが2段階に分かれていることに気づきます。ここを読み分けられると、計画書のどこが確実で、どこが自治体の裁量かが見えてきます。
| 条文の言葉 | 意味 |
|---|---|
| 「定めるものとする」(第2項) | 目標に関する事項と、必要な見込量。これは必ず書く項目です |
| 「定めるよう努めるものとする」(第3項) | 見込量を確保するための方策、医療機関・教育機関等との連携。こちらは努力義務——書いてある自治体と、薄い自治体があり得ます |
つまり「見込量の数字」は全国どの市町村の計画にも必ず載っていますが、「その数字をどう実現するか」「病院や学校とどう連携するか」まで具体的に書き込むかどうかは、自治体によって差があります。
※第5項は、市町村が「障害児の心身の状況、その置かれている環境その他の事情を正確に把握する」ことと、国が公表した分析結果(第33条の23の2第1項)を勘案して計画を作ることを、努力義務として定めています。
市町村の計画とは別に、都道府県も「都道府県障害児福祉計画」を作ります。同じ児童福祉法の中に、別の条文として置かれています。
都道府県の計画で必ず定める事項(第2項)は、市町村の計画に無いものが一つ増えます。
| 号 | 定める事項 |
|---|---|
| 第1号 | 障害児通所支援等の提供体制の確保に係る目標に関する事項 |
| 第2号 | 都道府県が定める区域ごとの、各年度の指定通所支援・指定障害児相談支援の種類ごとの必要な見込量 |
| 第3号 | 各年度の指定障害児入所施設等の必要入所定員総数(=入所施設は都道府県の管轄) |
第3号の「指定障害児入所施設等の必要入所定員総数」が、都道府県の計画にしか出てこない事項です。児童発達支援や放課後等デイサービスのような通所支援の指定は都道府県知事が行いますが、計画に必要見込量として数字を積むのは市町村(区域ごとに都道府県がまとめる)です。一方、入所施設は利用が広域にまたがりやすいため、必要な定員総数そのものを都道府県が計画に書きます。
※都道府県障害児福祉計画にも、市町村と同じ構造の努力義務(方策・質の向上・連携)が第3項に定められています。条文にはありませんが、実務上は都道府県が各市町村の見込量を積み上げて広域の計画にする、という関係になります。
市町村も都道府県も、計画は自由には作れません。「基本指針に即して」(第33条の20第1項・第33条の22第1項)作ることが条文で決められています。この基本指針を定めているのは、内閣総理大臣です。
実際には、こども家庭庁と厚生労働省の連名の告示という形で公表されます。現在効力を持つのは「令和5年こども家庭庁・厚生労働省告示第1号」で、令和6年度から令和8年度までの3年間(第7期障害福祉計画・第3期障害児福祉計画)を対象にしています。
この基本指針の中に「障害児支援の提供体制の整備等」という章があり、令和8年度末までの数値目標が示されています。東京都福祉局が公表している概要から、主なものを引きます。
| 国が示す目標(令和8年度末まで) | 内容 |
|---|---|
| 児童発達支援センターの設置 | 各市町村又は各圏域に少なくとも1カ所以上設置することを基本とする |
| インクルージョンの推進体制 | 全ての市町村で、障害児の地域社会への参加・包容を推進する体制を構築することを基本とする |
| 難聴児支援 | 各都道府県が難聴児支援を総合的に推進する計画を策定し、中核的機能を果たす体制を確保することを基本とする |
| 重症心身障害児への対応 | 主に重症心身障害児を支援する児発・放デイ事業所を、各市町村又は各圏域に少なくとも1カ所以上確保することを基本とする |
| 医療的ケア児支援センター | 各都道府県が設置し、コーディネーターを配置することを基本とする |
| 18歳以降の移行 | 各都道府県・指定都市が、入所児童の移行調整に係る協議の場を設置することを基本とする |
※これらは国が示す「基本とする」水準であり、達成を法律で義務づけた数値ではありません。実際にどこまで進んでいるかは、お住まいの市区町村・都道府県の計画(進捗の点検資料)で確認する事柄です。また、この告示は令和8年度末までを対象にしており、次期の基本指針は改めて示されます。(2026-09-08時点の情報です。)
「3年ごと」という周期は、法律の条文そのものに「3年」と書かれているわけではありません。国の基本指針が対象期間を3年で区切ってきた、これまでの運用の積み重ねです。厚生労働省の資料でも、平成18〜20年度を第1期として、3年ごとに期が進んできたことが確認できます。
つまり3年の計画期間の途中でも、見込量と実際の利用状況にずれが大きければ、計画を見直す仕組みが条文にあります。都道府県についても、同じ内容が第33条の23に定められています。
※「定期的に」の間隔(年1回か、それ以外か)は、この条文には書かれていません。実際の点検の頻度は、自治体の自立支援協議会などでの報告資料でご確認ください。
ここまでは条文の話でした。では、保護者にとって、この計画は実際に何の役に立つのでしょうか。
実例を見てみます。高知市が公表しているパブリックコメント資料には、次のような見込量の表が載っていました(令和6〜8年度・障害者計画・障害福祉計画・障害児福祉計画)。
| サービス | 令和8年度の見込量 |
|---|---|
| 児童発達支援 | 2,986 人日/月・利用者数 446人/月 |
| 放課後等デイサービス | 15,754 人日/月・利用者数 1,178人/月 |
| 保育所等訪問支援 | 772 人日/月・利用者数 535人/月 |
| 居宅訪問型児童発達支援 | 4 人日/月・利用者数 2人/月 |
この資料では、令和6年度は児童発達支援が2,380人日/月、令和7年度は2,666人日/月、令和8年度は2,986人日/月、というように年度ごとに増える見込みで書かれていました。見込量を年々増やして書くこと自体が、その自治体が「今後も利用が増える」と見ていることの表れです。
※「人日」とは、日中活動系サービスの供給量を表す単位です(1人が1日利用すると1人日)。この数字だけを見て、事業所が足りている・足りていないと断定することはできません。見込量はあくまで計画上の数字であり、実際の空き状況は個々の事業所に確認する必要があります。
つまり保護者がこの計画から読み取れるのは、「自分の住む市区町村に、児童発達支援がどれだけ計画されているか」「今後どのくらい増える見込みとされているか」という、地域全体の見通しです。「今日どこに空きがあるか」までは分かりません。個別の空き状況は事業所の選び方で扱っている、事業所ごとの確認が必要です。
この計画は、市区町村や都道府県が一方的に決めて終わり、というものではありません。条文に、住民や関係機関の意見を聴く手続きが置かれています。
| 誰の意見を | 条文上の扱い |
|---|---|
| 住民の意見(第33条の20第8項) | 「必要な措置を講ずるよう努めるものとする」——努力義務。多くの自治体は、この手続きをパブリックコメントとして実施しています |
| 協議会の意見(第33条の20第9項) | 総合支援法の協議会を設置している市町村は、意見を聴くよう努めなければならない |
| 合議制の機関の意見(第33条の20第10項) | 障害者基本法上の合議制の機関を設置する市町村は、あらかじめ意見を聴かなければならない(義務) |
| 都道府県の意見(第33条の20第11項) | 見込量など(第2項の事項)については、あらかじめ都道府県の意見を聴かなければならない(義務) |
つまり「住民の意見を聴くこと」は努力義務ですが、実際にはほとんどの自治体がパブリックコメントを実施しています。高知市の資料でも、計画の素案・原案を示したあとにパブリックコメントの期間を設け、あわせて自立支援協議会(相談支援検討会・就労検討会を含む)で意見を聴く、という段取りが取られていました。
※都道府県障害児福祉計画についても、協議会の意見聴取(努力義務、第33条の22第7項)と、障害者基本法上の合議制の機関の意見聴取(義務、第33条の22第8項)が、同じ構造で定められています。
ここまでの条文は全国共通ですが、実際に公表される計画の「呼び名」は、自治体によって違います。たとえば高知市の例では、「高知市障害者計画・障害福祉計画・障害児福祉計画」という、3つの計画を一冊にまとめた名前で公表されていました。
これは条文にも根拠があります。市町村障害児福祉計画は、総合支援法にもとづく市町村障害福祉計画(第33条の20第6項)や、障害者基本法にもとづく市町村障害者計画、社会福祉法にもとづく市町村地域福祉計画(同条第7項)と、一体のものとして作成することができる、あるいは調和が保たれたものでなければならないと定められているためです。一体にするか、別々の冊子にするかは、自治体の判断です。
「計画」という言葉が付く制度は、ほかにもあります。混同しやすいので、ここで分けておきます。
※確かめられなかったこと——「定期的に」(第33条の21・第33条の23)が具体的に何年・何回を指すかは、条文には書かれていません。また、パブリックコメントの実施方法・期間についての全国共通の基準も、この条文の中には見当たりませんでした。実施の詳細は自治体ごとの要綱によります。
計画の数字を見ても、目の前の「今すぐ通える事業所」が分かるわけではありません。個別の空き状況やサービスの選び方は、児童発達支援の事業所を、どう選ぶかをご覧ください。
※上記の出典は2026年9月8日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
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