同じ説明を重ねる負担を、記録で整理する
大田区の「サポートブックかけはし」は、発達障がいで困っている方のために区が作成したツールです。行政の相談窓口や病院で、そのたびに子どもの経過を説明する負担を減らし、生い立ち、医療、療育、教育の情報を整理して継続した支援につなげることを目的としています。診断や支援の利用を決める証明書としてではなく、相談で必要な情報を伝えるための記録として使います。
公式の全体版には、プロフィール編、成長の記録編、思い出編があります。現在の困りごとを一枚に書くだけでなく、これまでの経過と本人の希望、支えてきた方法、得意なことを分けて残せる構成です。初めからすべてを完成させる必要があると考えず、公式資料の案内に沿って記入しやすいところから作成します。今度の面談で何を伝えたいかを決めると、最初に開くシートを選びやすくなります。
手書きと入力から使いやすい方法を選ぶ
区の案内には、記入する方法とデータ入力する方法の二通りがあります。記入用の全体版PDFや様式のほか、入力用のExcel形式、記入例が公開されています。紙に書く方が続けやすい家庭も、データで修正しながら印刷する方が扱いやすい家庭も、使いやすい方法を選べます。特定のソフトを使えることが相談の前提だと受け取らず、公式に用意された選択肢から始めましょう。
作成したシートはA4判のクリアフォルダに整理して保管する案内です。ページを追加する場合も区のホームページからダウンロードできます。入力データを使うときには、相談に持っていく印刷物が古い版になっていないかを確かめてください。記録を変えるたびに全部を作り直すのではなく、更新した箇所がどこか分かる形で整理すると、面談時に今回確認したい内容を取り出しやすくなります。
プロフィールは現在の連絡先を確かめる場所
プロフィールのシートには、名前や愛称、生年月日、所属先、住所、電話番号、家族、医療機関、支援機関などの欄があります。医療機関は現在利用しているところを記す形で、受診科、担当医、所在地や電話番号などを整理できます。支援機関も名称だけでなく、担当者や連絡先をまとめる欄があります。似た名称の窓口を取り違えないためにも、所属や担当の情報を一緒に確認しておきましょう。
このシートには記入日と修正日を記す場所があります。進級・転校・転居などの節目には、所属や連絡先が現在のものかを見直すきっかけにできます。古い記録を現在の情報として渡すと、新しい支援者が確認し直す必要が生じます。経過を残す資料と、現在の窓口を伝える資料を分け、「今連絡できる担当は誰か」が読み取れるよう整理することが、プロフィールを使う際の大切な点です。
本人の希望と保護者の希望を分ける
プロフィール編の「伝えたいこと」には、本人の希望と保護者からの希望を別々に書く欄があります。さらに、個性、得意なこと、サポートブックの中で特に見てほしいところ、その他の欄があります。困っている行動だけを書き並べるよりも、本人が望むことと、家庭が支援者に相談したいことを区別すると、面談で確かめるべき違いが見えやすくなります。本人の言葉がある場合は、その表現を大事にして記録しましょう。
たとえば、本人は参加したい活動がある一方で、家庭は帰宅後の疲れを心配している、というように二つの視点が並ぶことがあります。これは記入を考えるための例で、区が特定の対応を決めているという意味ではありません。一つの結論にまとめてしまう前に、誰の希望なのか、何を一緒に考えてほしいのかを分けると、支援者に相談する内容が具体的になります。話せない内容を無理に代弁して確定するのではなく、確認できたことから記していきます。
今のライフステージのシートから始める
成長の記録編は、幼児期、学齢期、青年期などの時期に分かれています。区は成長段階のどの時点からでも作成できるよう、ライフステージごとにシートを用意しています。小学校に通い始めてから知った場合も、幼児期の全項目を埋め終わるまで使えないという仕組みではありません。現在の状況を伝えるシートから作り、必要に応じて経過の資料を添える使い方を考えられます。
学齢期の状況を記すシートには、生活や学習などの場面が並び、それぞれの状況を整理できる形になっています。チェックが多い設計は、作成する人の負担を軽減するための工夫です。ただし、家庭で付けたチェックだけで支援の要否を判定する資料ではありません。どの時点で、どの場面を見て記録したかを添えると、園や学校での様子との違いを面談で確かめる材料として使いやすくなります。
状況の記録と、支えている方法をつなぐ
成長の記録編には、家庭で支援していることや生活上の工夫を記入する欄があります。公式の利用方法は、支援者に知ってもらいたいこと、理解してほしいことを書くよう案内しています。できる・できないの状況だけで終わらせず、どのような助けがあると取り組みやすいかも残せる点が特徴です。現在の力と、それを支えている環境の両方を次の支援者へ伝えるために使いましょう。
記入するときには、場面、支えている方法、本人の様子を一組にすると話し合いやすくなります。「変更を前もって知らせると準備しやすい」など、実際に家庭で確認した工夫を記すことができます。これは書き方の例であり、すべての子に同じ方法が有効だという案内ではありません。いつもうまくいくわけではない場合は、その条件も書き添え、支援者と一緒に見直すための記録にしていきます。
既にある医療・学校の資料を一緒に保管する
区は、診断書、個別の教育支援計画、学校生活支援シートなどを一緒に綴じる使い方を案内しています。全体版には、母子健康手帳や学校・支援機関・病院などからの資料を一緒に保管すること、一年間のまとめや検査結果報告書なども例として挙げられています。既存の資料をすべて書き写す作業を増やすより、何の資料で、いつの情報なのかを確認できるようにまとめることが役立ちます。
家庭が書いた生活の記録と、医療機関や学校が作成した記録は、作成者も目的も異なります。一つの説明に混ぜず、元の資料が分かる形で保管すると、面談で確認しやすくなります。検査結果や診断書の意味を家庭だけで決め直すのではなく、必要な説明は作成した機関に確認してください。かけはしを持っていること自体が、診断、受給者証、特定の配慮の決定に代わるものではありません。
思い出編には、得意なことや成長も残す
思い出編は、困りごとの記録だけでは捉えにくい本人の歩みを残すためにも使えます。学齢期の思い出のシートには、通っていたところ、習い事や部活動、うれしかったこと、成長したこと、特技や趣味、放課後・休日の過ごし方などの欄があります。相談のために課題を整理するときにも、本人が楽しめることや関心が向いていることを一緒に伝えられる構成です。
公式資料は、好きなことや得意なことを記入し、ほめるきっかけとして活用することも案内しています。進級前の面談で困りごとが中心になりやすい場合は、本人の力が発揮された場面も選んでおくと、次の場で大切にしたい経験を話しやすくなります。成果だけを並べるのではなく、本人が喜んだことや関心を持ったことを残すと、後に本人が成長を振り返るための記録にもなります。
面談ごとに見せるシートを選ぶ
全体版の利用方法には、医療機関などで配慮を受けたいとき、必要なシートをその都度選んで利用できることが書かれています。相談のたびに全ページを渡すことだけが使い方ではありません。今回伝えたい希望、現在の様子、既に試している工夫、過去の経過のうち、面談の目的に合う資料を選びます。新しい担当者に特に見てほしい箇所は、「伝えたいこと」の欄と対応させることもできます。
かけはしには本人や家族の個人情報が記載されます。公式資料にも取り扱いへの注意があります。複写するのか、その場で見てもらうのか、どこで保管されるのかなど、気になる点は渡す相手に確認してください。資料を作ったことで関係機関に自動で共有されると考えず、誰に何を説明するために使うかを家庭と本人の状況に合わせて整理することが、継続して使ううえでの基本になります。
更新と相談を、次の節目につなぐ
進級や新しい支援機関の利用前には、現在の連絡先、本人・保護者の希望、生活の工夫、最近の記録を順に見直してみましょう。前回から変わった点と、今も続けてほしい支援を分けると、面談で話す内容がまとまります。過去の資料を残す場合も、それが現在の状態ではなく経過の記録だと分かるように、日付や作成機関を確認しておくと、情報の取り違えを減らせます。
かけはしの作成や使い方について、公式ページは障がい者総合サポートセンターさぽーとぴあの支援調整(児童発達)、電話03-6429-8549を案内しています。ここで紹介した記録の整理は、支援内容や利用の可否を確約するものではありません。本人の希望と経過を次の相談へつなぐ道具として、使いやすい部分から始め、実際の困りごとは担当する相談先と一緒に確かめていきましょう。

