体のことを決める本人の気持ちを聞く
文部科学省の2026年の指導の手引きは、幼児期に自分の体を大切にすること、相手の体も大切にすることを扱っています。嫌な気持ちになったときに、嫌だと言う、離れる、安心できる大人に相談するといった対応を知らせる説明もあります。家庭でこの内容を使うときは、子どもに一度で全部覚えさせるためではなく、日常の場面で本人の話を聞く出発点として考えます。
「恥ずかしがらなくていい」と先に励ますより、「誰かに見られるのが嫌だった?」「ここで手伝ってもいい?」と、今の気持ちを確かめる言葉を考えられます。ただし、質問に言葉で答えることが難しい子もいます。無言だから同意している、体を引くからわがままだと決めつけず、本人が普段どのように気持ちを表すかを、家庭と園で共有するための話題にします。この記事の言葉は家庭の相談例であり、全ての子に同じ反応を求める指示ではありません。
着替える場所と、手伝う方法を分けて相談する
心配なことが多いときは、「場所」「見える範囲」「手伝い」の三つに分けて紙へ書く方法があります。場所の欄には、どの場面で着替えにくそうだったかを記します。見える範囲の欄には、本人が嫌がった相手や状況を、見た事実として書きます。手伝いの欄には、どこまで本人で行い、どこで大人に手助けしてほしいかを相談する問いを置きます。原因の診断を紙の上で行うためではありません。
園では、家庭と同じ場所や時間をそのまま用意できるとは限りません。それでも「早く着替えられない」という結果だけでなく、本人がどこで困るのかを伝えると、相談する内容を具体的にできます。仕切りを使う、着替える位置を変える、手伝う前に声をかける、といった案を出す場合は、施設の環境と本人の希望に合わせて相談してください。これらが練馬区の全園で実施される決まりだという意味ではありません。
自分だけでなく、相手の体も大切にする言葉にする
手引きでは、自分の体だけでなく相手の体も大切にするという内容を扱います。着替えの場面であれば、本人が見られたくない気持ちを尊重するとともに、他の子の着替えをじっと見ないことなどを、日常の言葉で伝える方向です。本人の気持ちを聞くことと、周囲の子のプライバシーを守ることを、別々の価値として競わせる必要はありません。どちらも大切にする説明を大人がそろえていきます。
家庭での言葉の例として、「あなたの体は大切だよ」「ほかの人の体も大切だよ」「手伝う前に聞くね」などを考えられます。長い説明を何度も続けるより、実際の場面で必要な部分を伝える方法を園と相談できます。ただし、言えた回数を数えて合格とするための練習表ではありません。本人が嫌だと知らせたときに、大人がどう受け止めるかも、同じように確認することが大切です。
水着で隠れる部分だけが大切という説明にしない
文部科学省の手引きは、体の一部だけが大切だという伝え方にならないよう注意を示しています。家庭でも、「ここ以外は誰が触ってもよい」という意味にならないようにします。本人が嫌だと感じたことを、大人が小さなことだと片付けずに聞く姿勢につなげましょう。体の名前を説明するために、怖い事例や詳しい被害の描写をたくさん見せる必要はありません。
手引きには、いたずらに恐怖心をあおる指導にしない配慮も書かれています。嫌なことを話せなかった子を、言わなかったから悪いと責める説明にもならないようにします。家庭で資料を使うことに迷うときは、園や学校、支援先へ相談し、本人に合わせた伝え方を考えます。写真や動画を使って確認したいと思った場合も、着替え中の本人を撮影して共有する必要はありません。場面を言葉や簡単な配置のメモで伝える方法を先に検討できます。
言葉で返事が難しいときの相談メモ
「嫌だと言えるように」とだけ目標を書いてしまうと、声が出なかった日の困りごとが見えなくなることがあります。メモには、本人がした動き、大人がかけた言葉、その後の様子を分けて書く方法があります。「顔を横に向けた」「手を離した」「別の場所へ移動した」など、見たことを短く記せば構いません。「嫌だったに違いない」という解釈は、確定した事実とは別の質問欄に置きます。
園や支援先には、「この動きが出たときは、どう確かめていますか」「本人が選べる形にするには、何をそろえるとよいですか」と質問できます。家庭だけの合図を確実に全員に使わせるという話ではなく、本人に伝わる説明と、大人が受け取る方法を相談するためです。言葉の有無だけで、本人の意思がないと考えないことが出発点になります。使う資料や言葉が変わったときは、関係する大人にも現在の方法を共有しましょう。
手助けが必要な場面も、一つずつ確認する
自分で着替えることと、必要な介助を受けることは、二者択一ではありません。家庭で困っている動作があれば、「上着の袖だけ手伝ってほしい」「終わるまで待ってほしい」など、具体的な相談にできます。その際、本人が選べること、施設として確かめること、安全上必要な対応を、関係者と分けて話します。医療や身体のケアに関わる心配があれば、担当する医療者などにも確認してください。
大人が交代する場合は、本人への声のかけ方が毎回違っていないかを相談することもできます。「前の人にはできたのに」と比べるための情報ではありません。誰が手伝うかが変わる日の説明、本人が嫌だと示したときの受け止め方、確認する相手を、現在の支援としてそろえるためのものです。家庭が全ての場面を監視するのではなく、困った場面を選んで具体的に話す方法があります。
練馬区で相談先を探すとき
練馬区の「青少年の相談機関案内」は、学校生活の心配に関する教育相談室や、子育ての悩みに関する子ども家庭支援センターなどを案内しています。全ての窓口が同じ年齢や相談内容を担当するわけではないため、ページの見出しを確認して連絡してください。「着替えを見られることを嫌がっている」「園での手助けをどう相談するか迷う」と、困る場面を短く説明し、担当する相談先を尋ねる方法があります。
相談先に見せる記録は、本人の体の画像や詳しい個人情報を広く配るものにしなくても構いません。いつ、どの場面で、何に困っているかと、家庭が知りたいことを分けます。大人に話してくれた内容があるときは、まず話したことを受け止め、必要な支援へつなげることを考えてください。被害が疑われる場合の対応を、この日常の着替え相談だけで済ませるという意味ではありません。状況に応じて公的な相談機関へ相談しましょう。
園へ伝える文章は、本人の言葉を残す
連絡帳などで相談する場合の例は、「着替えの前に本人が『見ないで』と言いました。どの場所なら落ち着いて着替えられるか、手伝う前にどう確かめるかを相談したいです」という形です。実際に言っていない言葉を本人の発言として書かないようにします。言葉がなかった場合は、体を引いた、移動したなどの様子を記し、保護者の解釈は質問に分けてください。本人が悪いという評価を先に付けず、具体的な場面と希望を共有します。
回答を受けた後は、「次に同じ場面があったら、誰に相談するか」「本人へどんな説明をするか」を家庭と園で確かめる方法があります。相談のたびに新しい言葉や資料を増やすのではなく、今使う説明をそろえることも検討できます。子どもが大人の問いに応じなかったときは、それだけで気持ちがないと決めず、聞く場所やタイミングについても相談します。本人の意思を尊重することと、必要な介助を話し合うことを、同じ話し合いの中で進めていくための準備です。
本人が選べる問いを相談する
「大丈夫?」という広い問いに答えにくい場合、どのような聞き方なら意思を確かめられるかを支援先へ相談できます。家庭の例として、「ここで着替えることについて聞きたい」「手伝う場所を確かめたい」と、場面を分ける方法があります。選択肢を示すときも、どちらかへ無理に誘導するためではなく、本人に分かる説明を考えるために使います。
一度選んだ方法でも、成長や場所の変化によって本人の希望が変わることがあります。前に大丈夫だったから今回も同じはずとせず、現在の様子を聞く余地を残します。関係する大人が、本人が拒んだことを罰したり笑ったりする説明になっていないかも、家庭から相談する観点になります。体を大切にする話を、子どもが大人へ従うための約束だけにしないよう、聞いて受け止める側の対応も一緒に考えます。

