「家では話せるので、園でも話せるはず」と考えると、保護者と先生の説明が食い違うように感じるかもしれません。まず、家庭で見た様子と園で見られる様子を、それぞれの場面の情報として並べる方法があります。声の出た回数を増やす約束をする前に、本人が園で意思を伝えられているか、何に困っているかを相談する準備です。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドライン24頁は、場面緘黙のあるこどもについて、ほかの場面では話せていても、心理的・環境的な要因などにより、場面によっては話せない状態を理解した上で支援することを示しています。家庭と園で見られる様子を、一方だけで判断せず相談するための視点です。ただし、この記載に似た様子があるというだけで、この記事からお子さんを診断することはできません。今困っている場面を伝え、どのような評価や医療の相談が必要かを、実際の相談先と確かめてください。
家庭の様子を伝えるときは、「とてもおしゃべりです」だけでなく、誰と、どこで、どんな活動をしているときに話すかを、覚えている範囲で具体的にします。園の先生にも同じように、登園時、遊び、食事などの場面を分けて尋ねる案です。全場面を細かく調べ切ることを相談の条件にするのではなく、すでに知っていることを短く持ち寄ります。
本人の言葉と、大人が見た様子も分けます。「先生が怖いのだと思う」は保護者の考えで、「先生が近づいたときに体が止まった」は観察した様子として書く例です。考えを伝えてはいけないという意味ではありません。観察と推測を分けておくと、先生や専門職と、ほかに考えることがあるかを相談しやすくなります。
下の図は、本記事が作成した連絡準備の例です。声を出す訓練の手順ではありません。「家庭の様子」と「園の様子」を並べ、今の伝え方と相談したいことにつなげます。
こども家庭庁の児童発達支援ガイドラインは、場面緘黙のあるこどもに、話すことを強制したり、話さないこどもとみなしたりしないことを示しています。また、緊張や不安の緩和を目標に、指さし、カード、身振りなど言葉以外の方法で意思を伝えられるよう工夫することを挙げています。声が出ることだけを相談の成果にする前に、今伝えられる方法を確認する視点です。
園に聞く文の例は、「声が出ないとき、本人はどんな方法で先生へ伝えていますか」「困ったときに使える合図を一緒に考えられますか」です。指さしやカードなら誰にでも同じように使えると決めるのではなく、本人の様子を見ながら相談します。大人が用意した合図を使うこと自体が負担になるかどうかも、本人や園と確かめたい点です。
次の表は相談用の記録案です。園の正式な書式や、場面緘黙を判定する検査ではありません。「話した・話さなかった」だけで終わらず、本人がどう活動し、どう伝えているかを聞くために使ってください。分からない欄を無理に埋めたり、本人を何度も試したりするためのものではありません。
| 確認する場面 | 聞きたいこと | 記録する分け方 |
|---|---|---|
| 家庭での遊び | 誰と、どんなときに話しているか | 見た様子と、本人が話した言葉 |
| 園での遊びや活動 | 相手や人数が違うと、様子はどうか | 参加の様子と、声以外の表現 |
| 困ったことを伝えるとき | 誰に、どう知らせられるか | 今使える方法と、まだ相談する方法 |
| 新しい予定や環境 | 本人に何をどう伝えているか | 決まった配慮と、確認中のこと |
記録の分量は、毎日の詳しい報告書を目指す必要はありません。「今週気になった一場面」と「安心して過ごしていた一場面」を持ち寄るなど、家族と園が続けられる量を相談する案です。何が助けになっていそうかは、保護者が結論を付けず、先生や相談先へ確かめる問いとして残せます。
架空の相談例です。保護者が「家では家族と遊びながら話しますが、園ではどんな場面でどんな伝え方をしているか知りたいです」と伝え、先生から園の様子を聞くところから始めます。家庭での話し方を園ですぐ再現するよう求めるのではなく、相手や活動が違うことも含めて共有する例です。
続けて、「本人は声を出すことを心配しているように見えます。大人が見てそう感じたことと、本人が実際に言ったことを分けてメモしてきました。相談先へつなぐとき、園から伝えていただける様子はありますか」と尋ねる形があります。相談先へどの情報を渡すかは、目的と相手を確かめてください。支援記録の全てを、どこへでも共有するという話にはしません。
相談した結果は、「園で様子を聞く」「今使える合図を確認する」「別の相談先を尋ねる」のように、次の行動を分けて残す案です。相談したことと、評価や支援が決まったことは別です。いつ、誰と、どこまで話せたかを確認しておくと、後で別の先生や相談先へ説明するときにも、まだ分かっていないことを伝えられます。
家庭で話しているところを見せた方がよいか、と考える保護者もいるかもしれません。この記事は動画や録音の提出を一律に勧めていません。必要かどうか、何を確かめる目的か、誰が見るかを、園や相談先に先に聞くための話題として扱います。本人の気持ちや、家族の情報が映り込むことも含めて、共有の方法を相談してください。
たとえば架空の例で、本人が家での会話を先生に見られたくないと言うなら、その気持ちも相談事項です。「資料を渡すこと」と「本人の話し方を大勢に見せること」を同じ手続きにせず、どのような情報なら共有できるかを確かめる案があります。映像がなくても、保護者の説明と園での観察を持ち寄るためのメモは準備できます。
相談後の共有では、声が出たかに加え、本人が必要なことを伝えられたか、活動の選び方が分かったか、困ったときに先生へ知らせる方法があったかを話題にする案があります。これは、このページが示す診断尺度や治療効果の判定ではありません。園生活で何に困り、どこを次に相談したいかを具体的にするための問いです。
園の行事、担任の交代、教室の変更などで状況が変わるときには、すでに相談した配慮をどう引き継ぐかも確認できます。新しい先生へ伝える資料に何を入れるか、本人へ変更をどう知らせるかを話し合ってください。一度の面談で話が終わったことにせず、家庭と園の様子を別々に聞ける窓口や次の相談機会を確認しておく案です。
面談の記録を引き継ぐときは、本人がどんな子かを長い説明で固定するより、「家庭で見ていること」「園で確認したこと」「今使っている伝え方」「まだ分からないこと」を分けて残す案があります。新しい先生が読む目的を確かめ、必要な情報を選びます。「話せない子」という一つの言葉だけを渡すのではなく、本人がしている表現や、困る活動を具体的に伝えるためのメモです。
架空の記録例では、「家では保護者と遊びながら話す」「園の集まりでは声が出ていないと先生から聞いた」「欲しい物は指さしで伝えることがある」「困ったときに誰へどう知らせるかは、まだ相談中」と並べます。本人の状態を診断する記録ではありません。誰が見た様子かを残し、まだ確認していないことを、できていることとして次の相手へ伝えないための例です。
次の相談では、そのメモのどの部分が変わったかから話を始められます。声が出たという新しい様子があっても、すぐに人前で話す機会を増やす約束へ結び付けず、本人がどう感じていたか、場や相手の条件は何だったかを聞く案です。反対に、話さなかった場面があっても、今までの配慮を全部やめるという結論を急ぎません。支援の変更は、先生や相談先と本人の様子を確かめながら相談してください。
家族の中で園からの連絡を受ける人が複数いる場合には、先生へ伝える連絡役も相談しておくと、同じ質問を何度も本人に尋ねることを避ける準備になります。これは必ず一人が連絡を担当する規則ではありません。本人が誰に伝えたかを家族が知らないまま、別の大人が繰り返し説明を求めていないかを話題にする案です。
国のガイドラインは、場面緘黙のあるこどもに話すことを強制しない考え方を示しています。この記事で個別の練習方法は決められません。家庭と園の場面差、今の伝え方、本人の困りごとを共有し、必要な支援を相談してください。
この記事から診断はできません。場面や相手による違いと困りごとを先生や相談先へ伝え、どのような評価や医療の相談が必要かを確認するために使ってください。
国のガイドラインは、指さし、カード、身振りなど言葉以外の方法を工夫することを挙げています。本人が今使える方法や、園の活動で必要な合図を先生と相談してください。
どちらかを間違いと決めず、場所、相手、活動を分けて聞く記録案があります。本人の言葉、保護者が見たこと、園が見たことを区別して持ち寄り、相談したい点を整理します。
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