まず前提——基準を定めるのは都道府県の条例です
指定基準というと国の省令を思い浮かべますが、事業者が直接従うのは都道府県の条例です。
児童福祉法 第21条の5の19 第1項・第2項
第1項 指定障害児通所支援事業者は、
都道府県の条例で定める基準に従い、当該指定に係る障害児通所支援事業所ごとに、当該指定通所支援に従事する
従業者を有しなければならない。
第2項 指定障害児通所支援事業者は、
都道府県の条例で定める指定通所支援の事業の
設備及び運営に関する基準に従い、指定通所支援を提供しなければならない。
そのうえで、都道府県が条例を定めるときのルールを、法律が第3項で定めています。ここが構造の核心です。
🔴 3層構造——縛りの強さが項目ごとに違います
児童福祉法 第21条の5の19 第3項
都道府県が前二項の条例を定めるに当たつては、
第一号から第三号までに掲げる事項については内閣府令で定める基準に「従い」定めるものとし、
第四号に掲げる事項については内閣府令で定める基準を「標準として」定めるものとし、
その他の事項については内閣府令で定める基準を「参酌」するものとする。
「従い」「標準として」「参酌する」——この3つの言葉が、縛りの強さを表しています。
| 層 | 対象(同項各号) | 都道府県は変えられるか |
従うべき基準 「〜に従い定める」 | 第1号 指定通所支援に従事する従業者及びその員数 第2号 居室及び病室の床面積その他設備に関する事項であって、障害児の健全な発達に密接に関連するものとして内閣府令で定めるもの 第3号 運営に関する事項であって、保護者のサービスの適切な利用の確保/障害児の適切な処遇及び安全の確保/秘密の保持に密接に関連するものとして内閣府令で定めるもの | 変えられません。 全国共通です |
標準 「〜を標準として定める」 | 第4号 指定通所支援の事業に係る利用定員 | 合理的な理由があれば、異なる内容を定められます |
参酌すべき基準 「〜を参酌する」 | 上記以外のすべて | 判断の幅が大きい。十分参照したうえで、地域の実情に応じて定められます |
調べ方が決まります
従うべき基準の3項目は、省令を読めば全国どこでも同じです。——人員(従業者と員数)、設備のうち発達に密接に関連する部分、運営のうち利用の確保・処遇と安全・秘密保持に密接に関連する部分。
利用定員は「標準」。国の数字が出発点ですが、自治体が変えていることがあります。
それ以外は、必ず所管自治体の条例を見る必要があります。国の省令だけ読んでも足りません。
なぜこの3層になっているのか
この「従うべき基準/標準/参酌すべき基準」という分け方は、指定基準に限らず、国が自治体の条例に枠をはめるときに使われる共通の型です。
| 言葉 | 意味 |
| 従うべき基準 | 必ずその基準に従わなければならない。異なる内容は定められない |
| 標準 | 通常はよるべき基準。合理的な理由があれば、地域の実情に応じて異なる内容を定められる |
| 参酌すべき基準 | 十分参照したうえで判断する。地域の実情に応じて異なる内容を定められる |
つまり「安全と最低限の質に直結する部分は動かさない。それ以外は地域で決める」——という設計です。
第2号・第3号の条文をよく読むと、その意図が読み取れます。設備は「障害児の健全な発達に密接に関連するもの」、運営は「適切な利用の確保/適切な処遇及び安全の確保/秘密の保持に密接に関連するもの」に限って、従うべき基準としています。
※「密接に関連するものとして内閣府令で定めるもの」とあるとおり、どの規定が従うべき基準にあたるかは内閣府令(省令)で特定されます。個別の規定の区分は、省令および所管自治体の条例でご確認ください。
国の基準はどこにあるか
条文にいう「内閣府令で定める基準」の本体が、次の省令です。
指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準
平成24年厚生労働省令第15号
サービスごとに章が分かれ、それぞれ
基本方針/人員に関する基準/設備に関する基準/運営に関する基準の4節で構成されています。
| 章 | サービス |
| 第2章 | 児童発達支援 |
| 第3章 | 削除 |
| 第4章 | 放課後等デイサービス |
| 第5章 | 居宅訪問型児童発達支援 |
| 第6章 | 保育所等訪問支援 |
各章にはさらに共生型障害児通所支援に関する基準と基準該当通所支援に関する基準の節が置かれています(居宅訪問型・保育所等訪問支援を除く)。
省令の全文は e-Gov 法令検索で読めます(出典欄にリンクしています)。
実務での順番
- 省令で「従うべき基準」を押さえる——人員・設備・運営の骨格。ここは全国共通なので、先に固められます。
- 所管自治体を確認する——指定の権限は都道府県知事です(児童福祉法第21条の5の3第1項)。ただし指定都市・中核市では市が権限を持つ場合があります。まずどこが所管かを確かめてください。
- 所管自治体の条例を読む——「参酌すべき基準」の部分で、国と違う内容が定められていることがあります。ここは省令だけでは絶対にわかりません。
- 自治体の手引き・様式を取り寄せる——申請の様式、添付書類、事前協議の要否、受付時期は条例にも省令にも書かれていません。自治体の要綱・手引きの領域です。
- 事前相談に行く——多くの自治体が事前協議や事前相談を設けています。物件を決める前に行くのが安全です。
いちばん多い失敗
省令だけを読んで物件と人員を決めてしまうこと。参酌すべき基準の部分と、自治体の手引きの部分は、省令には書かれていません。
物件契約の前に、所管自治体の担当課に相談してください。
この構造を知っていると変わること
| 調べたいこと | どこを見るか |
| 職員は何人必要か | 省令(従うべき基準)。全国共通 |
| 部屋の広さの決まり | 省令のうち発達に密接に関連する部分は従うべき基準。それ以外は条例 |
| 利用定員の下限 | 省令が標準。自治体が異なる定めをしていることがある |
| 記録の保存年限、その他の運営の細目 | 条例(参酌すべき基準の部分がある) |
| 申請書の様式・添付書類・受付時期 | 自治体の要綱・手引き。法令には書かれていません |
「調べても出てこない」と感じるとき、それが法令に書かれていない層の情報である可能性があります。その場合は、探し方を変えるより所管自治体に聞くほうが速いです。
出典
※上記の出典は2026年9月4日に閲覧して内容を確認しました。各団体の記載は更新される場合があります。最新の情報は各サイトでご確認ください。
よくあるご質問
国の省令と都道府県の条例、どちらに従えばいいのですか?
事業者が直接従うのは都道府県の条例です(児童福祉法第21条の5の19第1項・第2項)。ただし条例の内容は法律で枠がはめられており、人員・設備の一部・運営の一部は「従うべき基準」として国の省令どおりに定めなければなりません。つまりその部分は全国共通です。
「従うべき基準」は具体的にどれですか?
児童福祉法第21条の5の19第3項の第1号〜第3号です。①従業者及びその員数 ②居室及び病室の床面積その他の設備のうち障害児の健全な発達に密接に関連するもの ③運営のうち、保護者のサービスの適切な利用の確保・障害児の適切な処遇及び安全の確保・秘密の保持に密接に関連するもの。どの規定が該当するかは内閣府令で特定されます。
利用定員は自治体で変わりますか?
変わる可能性があります。利用定員は同項第4号で「標準」とされており、都道府県は合理的な理由があれば異なる内容を定められます。国の数字を出発点にしつつ、所管自治体の条例をご確認ください。
省令を読めば申請の準備はできますか?
できません。「参酌すべき基準」の部分は自治体が独自に定めていることがあり、さらに申請書の様式・添付書類・事前協議の要否・受付時期は法令ではなく自治体の要綱や手引きで決まります。物件を決める前に、所管自治体の担当課にご相談ください。
所管はどこになりますか?
指定の権限は都道府県知事にあります(児童福祉法第21条の5の3第1項)。ただし指定都市・中核市では市が権限を持つ場合があります。まず、事業所の所在地を所管するのがどこかを確かめてください。
この記事について:本記事は、障害児通所支援の指定申請に関する全国共通の枠組みを、法律・政令・省令の条文にもとづいて整理したものです。指定の権限は都道府県知事等にあり、具体的な基準は都道府県・指定都市・中核市の条例で定められます。条例には国の基準を「参酌」して独自に定められる部分があり、申請の様式・添付書類・事前協議の要否・受付時期は自治体ごとに異なります。実際の手続きは、必ず所管の自治体の担当課にご確認ください。制度は改正されます。本記事の確認日をご確認のうえ、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
この記事について
指定申請の道しるべは、東京都新宿区で児童発達支援事業所を運営する株式会社士心が、法令の条文を出典として明記しながらまとめている情報です。自社が指定申請の実務に向き合う中で調べたことを、同じ立場の方に開いています。
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